月の夜

わいわいと、二人の男が入ってきた。平日の夜、焼き鳥でもつまみながら上司の悪口を肴に一杯飲もうというクチだろう。

小さなカウンターに囲まれた中での炭火焼。目の前で焼かれたメザシにビールがうまい。
ほろ酔い加減になったころ、2人は「大将のオススメ」なるものを注文してみた。

「なんだろうねえ。見たとこ鶏だけど」
サッと焼きあがってきた串をほおばって、
「オッ、なかなかさっぱりしていて美味いねえ。やっぱり鶏かな?」
「いやア、なんか微妙に違うなァ・・・もしかして蛙とか。食感似てるって言うじゃない」
「『寝しょんべん物語』って本があってさあ、色んな人の寝しょんべんの思い出話なんだけど、その1つにばあちゃんが
『特効薬だ』て毎日何かの肉を食べさせる。お陰で寝しょんべん治ったけど、あとできくと蛙の肉だった、
ばあちゃん毎日池に行ってつかまえてたんだと・・・」
「げええ~・・・俺ら寝しょんべん卒業してるし、いらんよなあ」

ひげもじゃ大将、そんな2人の会話をニコニコ聞いてる。

「そういや友達で、蛙の刺身食べて、寄生虫いたもんで腹ん中で大きくなって動き回るから、入院して腹切られた奴もいたぞ」
「これは焼いてあるから大丈夫だろ・・・」
「なあ大将、この肉大丈夫だろ?」
すると大将、相変わらずニコニコと

「大丈夫ですよ、人間の肉ですから」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?