自民4勝1敗の衝撃 衆院解散の風 吹き荒れる会期末へ ポイントは総理にある二つの「任期」の交錯

 まあ、解散するか聞かれて、「はい、会期末にやったろうかどうか、いま迷っています」なんてバカ正直に答えるはずもない笑。

 とはいえ、衆参5選挙区で4勝したわけだから、本人がどう言っても、6月の国会会期末に向けて解散総選挙の風はマスコミが勝手にふかせてくれます。今後、ポイントとなるのは内閣支持率ですね。私に取材によれば、岸田総理とその側近たちは、内閣支持率の中でも自民党支持層の岸田内閣への支持率を重視していると聞いたことがある。確かに歴代最長政権を打ち立てた安倍政権は、岩盤支持層と言われる「保守派」の支持を基盤に、この自民党支持層の支持が7割以上あることが多く、とても安定していた。

 一方で、リベラル保守とも言われる宏池会政権である岸田政権への自民党支持層の支持は安倍政権ほどではない。とくに安倍総理のように岩盤支持層を持っているわけでもないので、自民支持層の支持が7割を切ることも少なくなかった。ところが、ここにきて支持率が回復基調になり、この自民支持層の支持も、各社の調査でばらつきはあるものの7割台に迫ってきている。今回の結果をみれば、大分のように薄氷のような勝利もあるが、逆に言えば、野党が一本化した選挙区でも勝てたわけで、自信を深めたことは間違いない。

Qそもそも、なぜマスコミは衆院解散を騒ぎ立てているのか?

Aこの、そもそも論が謎って人も決して少なくないですよね。前回衆院選は一昨年となる2021年10月。まだ折り返し地点にも達していない。任期が2年半も残っている今年6月に解散するかもしれない理由って何なんだ?っていう素朴な疑問がまず前提にあると思う。
 これについては、日本の総理には任期が2種類ある、としか答えようがない。

どういうことか?

そもそも論だけど、まず総理大臣にはそれ自体への任期はない。だから法理論上は何十年でもできる。アメリカの大統領が2期8年まで、韓国は1期5年と決まっているのに対して、国会で認められる限り半永久的に続けてもOK。
ただ、総理大臣は衆院議員でもあるから、当然、衆院議員の任期が一つの任期と言える。解散総選挙に勝てば、内閣の続投が可能だし、野党に負ければ下野しなければならない。ちなみに岸田総理の親戚関係になる宮澤喜一総理は衆院解散の総選挙に負けて下野した。そのとき誕生したのが細川連立政権で、そのときの選挙で初当選したのが岸田文雄であり安倍晋三、そう岸田さんも安倍さんも初当選のときは野党だったんだよね。

話がそれました。
そして、衆院任期に加えて、もう一つの任期が「自民党総裁」の任期なんです。日本の総理は、いまの政権与党が自民党だから、自民党のトップ、総裁でもある。「総裁」っていまどきすごい偉そうな肩書きですよね。自民党内では、総理総裁なんて言われていますね。さっき、日本の総理大臣には任期がないっていったけど、この自民党総裁には任期があるんですね。これが1期3年で、一人の人が連続でやれるのは3期まで。そう、だから、総理に任期はないけど、自民党総裁には最長9年っていう任期があるんですね。

ちなみに、
安倍さんが2012年に2度目の総裁になるまでは2期6年まででした。だから小泉総理は5年半で、人気絶頂だったけどあっさり辞めた。逆に中曽根総理は直前の選挙に勝つことで、任期延長をしています。

え、そんなこともできるの?

出来ますよ。簡単です。しょせんは一政党のなかのルールだから、直前に衆院解散して国政選挙に勝てば、民意は我にあり、って言って、自民党内で両院協議会や役員会でも開いてd、延長すればいいだけの話です。

安倍さんが2012年の2度目の総理になったときは、まだ自民党の党則では2期6年でした。これを在任中に3期9年に延長させる党則の改正をやって、7年半の記録を打ち立てました。コロナ禍での持病の再発がなければ、もう1年以上の任期がありました。

さて、だいぶ話が脱線したけど、戻しますね。つまり、なぜ衆院任期がまだ2年半もあるのに、補欠選挙に勝ったぐらいでマスコミがこんなに6月には衆院解散があるかもしれない、って煽るのかってことだけど、

それは来年9月に、岸田総理にとってもう一つの任期である自民党総裁任期が迫っているからです。

整理すると、
衆院議員の任期 →2025年10月
自民党総裁の任期→2024年9月

そう、二つある任期のうち、この自民党総裁任期については、来年秋に迫っているんですよね。今回の補選で分かったことは、野党がとにかく弱いってことと、維新と国民民主が頑張れば頑張るほど、野投票が分断されて、与党が弱くても勝てるってことが千葉5区で改めて立証された。となると、岸田総理にとってこの二つの任期ってどっちの方が怖いかな?

野党が多弱なこと、維新が躍進したといっても、立憲vs維新でつぶしあってくれれば千葉5区現象が全国の選挙区で再現されるだけだと考えれば、岸田総理が恐れているのは自民党総裁選の方なんですよね。仮に、総裁選までに衆院を解散していなかったら、衆院議員の任期があと1年に迫ったなかで総裁選を迎えることになる。もしその時にいろいろあって、内閣支持率が昨年末みたいに低迷していたら?

自民党の衆院議員は自分たちの選挙が1年以内に迫っているという状態なら、少しでも国民人気が高い、つまり支持率が高くなりそうな人を総理総裁に選びたくなりますよね?

その典型が菅前総理でした。2021年9月と10月に自民党総裁の任期と衆院任期がほぼ重なってしまった。なのにコロナ感染者が減らず、東京五輪も無観客、内閣支持率は8月に遂に危険水域と言われる30%を割り、「菅では衆院選戦えない。誰でもいいから選挙の顔を変えよう」ということで、「ぼくちゃんチャンス!」とばかりに8月26日に岸田さんが総裁選への立候補に名乗りを上げ、菅氏を辞任表明に追い込んだんです。

つまり、総裁任期ぎりぎりまで衆院解散に踏み切らなかったことで、菅総理は退陣せざる負えなかった。菅氏が辞任表明した数日後からワクチン効果が出てきてコロナ感染者も減っていったけど、後の祭りでしたね。

つまり、岸田総理は、総裁選が近づくまで衆院解散に踏み切らなかった菅前総理の判断ミスによっていまの総理の地位につけたわけです。となれば、同じ轍を踏むはずはない、「岸田は必ず来年秋の総裁選までに衆院解散に踏み切るはずだ」って党内でも見られているんですね。

衆院解散をするのいは、当たり前だけど国会が開会していないと聞けない。通常国会は毎年1月にスタートして、延長がなければ6月に閉会します。

ということで、今回の補選4勝をうけて、6月の会期末までに岸田総理が衆院解散に踏み切るのではないか?という報道があふれ、結果として解散風が吹き荒れることになります。

ただ、6月に解散しても、来年の総裁選までは1年以上ある、野党も立憲はともかくとして、関西を中心とした維新の躍進が不気味だ、など不安材料だってなくはない。まずは5月に開催の地元広島でのサミットを成功に導き、5月末の内閣支持率を眺めながら6月の会期末に向けて最終的な判断を下す、というのが今後の流れになっていきます。

ちなみに、「何がしたいのかわからん」という声が多い岸田総理。私はバンキシャなど10年以上岸田ウオッチを政治記者としてやってきましたが、彼が目指しているのはただ一つ、尊敬する宏池会で最長政権を築いている池田勇人越えです、彼の宏池会への偏愛ぶりのその理由はまた次回にでも。


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