0. はじめに

「私家版 TOEFLの英文法25」は、これを読んで、英文法を一から勉強するという性質のものではない。むしろ、おおよそ英文法を学んでいる方が(でなければ、TOEFLに挑戦しようと思うこともないだろう)、TOEFLで英文法の知識が要求される諸々の場面において、的確に、かつ有効に、知識を適用できることを主たる目的として、わたしのこれまでのTOEFL指導の文法面における総まとめも兼ねて作成した小冊子である。

TOEFLにはもはや英文法のセクションはないが、それにもかかわらず、Reading / Listening / Speaking / Writingの各セクションの理解・解答、およびその準備段階で英文法の知識が要求されているのは明らかであって、これなしには、受験生に要求されるスコアを叩き出すことはできない。ただ、試されている英文法の知識が、ある一定の項目に限られているのは、TOEFL PBT(paper and pencilバージョン)のころの文法セクションで問われる項目がやはり一定の項目しかなかったことからも想像に難くないだろう。

この「私家版 TOEFLの英文法25」では、そうした25の文法項目を抽出し、わたしの個人的解釈を講じてみた。わたしは、英文法というのは(英語全般にも当てはまるだろうが)、文法書を右手に、実際の本や動画などを左手に、交互に見返しながら、あるいは、会話の相手の反応を見ながら、自分の理解する体系を作っていくのが一番であると考えてきた。そうして自分の体系を作り、それをTOEFLなどのテストでさらに試す。これに耐えられるようであれば、まずまず及第点の体系化に成功したのではないか、と考えるのである。この文法本は、あくまで、そうして理解した、わたし個人の文法体系のうち、TOEFLで最も試される、かつ有効な25の項目について講釈を施したもので、その意味で「私家版」と銘打っている次第である。

受験生は、ここにある記述を全て記憶する必要はないだろうし、「他人」の文法体系に自らを押し込んで、窮屈な思いをすることもないだろう。むしろ、気に入った部分をハイライトして、自らの文法の体系に組み込んでみる程度が望ましいともいえる。特に太字などのハイライトを施していないのは、そういうわけである。重要な部分は、各受験生の感性で自らハイライトして欲しいと思っている。わたしと同じ経験をしていれば、おそらくこの本のまま理解できるだろう。しかし、受験生にとっての英語体験は十人十色であるから、自分の体験を大いに活用し、それを抽象化・体系化するときの一助として、あるいは文法を使いこなす上でのコツとして、本冊子を利用いただければ、著者としては、この上ない喜びである。

本冊子には、問題編を用意していない。これは、①TOEFLにはもはや文法問題は存在しないこと、②問題を機械的に解くことを文法の目的と誤解してはならないこと、③文法そのものを抽象的なレベルで議論するのも有効な言語活動であること、そして、④文法がマスターできたかどうかは、日常の(英語による)言語活動がどれだけスムーズに行えるようになったかでのみ、(つまり自分の感覚の中でのみ)判断できるだろうから、である。

全体の構成は、しかし、最初に問題の形で例文を提示した。これは次の論点を明確にするための便法である。この論点では問題を提示して、この文法事項はどのようにTOEFLに適用できるのかを考えることとした。「発展」では、上の論点で述べられなかった補足事項や、まさに発展的内容を追加した。これが25の項目全てにわたって踏襲されている。再度確認しておくが、わたしは英文法の専門家ではなく、偶然TOEFLを教えるのが比較的上手なおじさんであるにすぎない。そのおじさんの頭の中の英文法の引き出しを受験生に垣間見てもらい、勉強に供してもらおうというのが本冊子の趣旨である。

本冊子で、自らの現在の知識を確認し、さらに勉強を深めて知識を補い、能力を向上させ、TOEFLという世界レベルの英語試験で、はじめて世界と戦う経験をし、そこで勝利をおさめて欲しい。TOEFLを受験するような若者たちは、これからの人生、世界で戦っていくことを望んでいるだろうから、まずはこのTOEFLという「世界戦」の初戦に勝利してはずみをつけて欲しい。この小冊子は、見た目は薄っぺらいが、その根底には、これほどに大きな願望が秘められていることを、受験生にはお伝えしておきたい。

著者
留学のためのしけんや英語塾主宰
しけんやしのぶ

追伸。
この小冊子はnoteのマガジンの体裁をとっています。したがって、項目については、今後増える(増やす)ことも考えられます。マガジンをお求めいただいた場合はそれらも全て追加料金なく読んでいただけます。

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