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空想【詩】

空をぼんやり眺めていると
空想の世界に すっかり舞い上がって
鳥になることがある

鳥になった僕はあの木のてっぺんから
向こうの工場の屋上の
アンテナめがけて飛び立った

下には人間だった時の
僕の抜け殻が案山子のように
ただ突っ立っている

前方を見れば
行く手にはコンクリートの高い壁が
垂直に切り立つ崖のごとく伸びている

僕は衝突寸前で右斜め上に急上昇し
一気に上の端の方まで行って
目的の場所に舞い降りた

そこから遠く街を見下ろせば
線路を列車が走るのが見える
大きなバスも走ってる

だけど魔法は続かない
ふと気がつけばもといた場所で
人間の僕に戻っている

工場の屋上のアンテナには
さっきまで僕だった鳥が
何事もなかったかのように止まっている

そうして ただ僕の空想の影が
残像として空白の空に
ずっと広がっていくばかりだ


(20210801/私之若夜=しのわかや)
※これは以前投稿した記事の再掲です。
 一部修正加筆してあります。
 画像はCanvaからいただいています。