見出し画像

ホンネを引き出す  新見正則


診察室で患者さんにこっそり本心を聞いてみる

患者さんはいろいろです。
「なんでも話して良いですよ。ここは診察室ですから。
ここで話したことは、どんなことでも他には漏れません」と促しても
通常患者さんは本心を話しません。

たとえば、過敏性腸症候群などで下痢の相談をしているときです。
「なんでも話して良いですよ」と促しても「下痢で困るんです」とだけ答えます。

僕は「下着が汚れますか?」と敢えて聞きます。
「実は我慢できなくて、ときどき下着が汚れます」

そこに僕が「まず、下着が汚れないように、いろいろと内服や、生活習慣の改善を一緒に頑張りましょうね」と励ませばと治療に繋がりますし、
また、下着が汚れなくなることが最初のゴールとなります。

家庭の話までつっこんで聞いてみる

家庭内の不和で心の病気になっている女性の場合です。
「原因はご主人なんですね。
ご主人の何が問題なのか自由に話して下さい」と促しても
通常は「ご主人がいるとイライラするのです」といった会話で終わります。
表面を撫でるような会話です。

僕は「いっそご主人を殺してしまえばどうですか?」と敢えて聞きます。
「実はそうしてしまいたいと思うこともあります」と続きます。

「なぜ、殺してしまわないのですか?」と尋ねると、
「主人がいないと生活できないし、存在はときどき不満になりますが、
本当に死んでしまうとやっぱり困ります」となります。

そして「ご主人との関係を大切にしながら、
上手に譲り合ってみてはいかがですか」となります。

本心を引き出す、危険球の会話だよ

僕は敢えて危険球を投げています。
でもそんな単語まで口に出していいのだと思えることが
次の次元が違う会話の世界への誘いになるのです。
「下着汚れますか?」とか「いっそ殺してしまえばどうですか?」
といったフレーズです。

怒りや本音を伝えられる?

怒りや本音を伝えたいのは、先方との関係をより良いものにしたい
という思惑があるときです。

ただ怒るだけならば、いっそ存在を消してしまえばいいですよ。
僕にも存在を消してしまいたいと思うような人はいますよ。
そんな相手は、強烈な理不尽な仕打ちをされて、
もはや関係を修復できると思えないような人です。

しかし、そんなやからを殺したとしても、当方の利益にはなりません。
そんなことに時間をとられるくらいなら、ほかの楽しいことに時間を割いて
より幸せになった方が得策です。

本当に不愉快なときは黙りましょう

怒りを伝えることは難しいですね。
ぼくは不愉快なことがあると、まず10秒間黙ることにしています。
そんな怒りを抑えているオーラは自然と伝わります。

そこで、即座に言葉で応戦したり、
また暴力で対応すると、その後の対処がますます面倒になります。
そして、その瞬間に先方にもそれなりの事情があるのだろうと
思うように心がけています。

挑発にのってはだめですよ

言葉で挑発されて、即反射的に暴力で応じるのは「アホ」だと思っています。
世の中ではいろいろな挑発が試みられます。

そんな挑発に乗って「手を出すこと」を実行すれば先方が有利になります。
それが先方の罠ということも有り得ます。

罠にはまってはだめです

ウクライナへのロシアの侵略は常識では考えられない行動です。
先方には先方の理由があるのでしょうが、
世界に対して原稿を見ずに言葉で語りかけるゼレンスキー大統領と、
国内のメディアを粛正して国内向けにのみ演説するロシアの指導者を比べると、
自然と答えが出ていると思っています。

理不尽に対する怒り

あれだけの非人道的なことが実際に起こっています。
怒りを伝える方法をそれぞれの国が考える時です。
人の命が地球より重いということは嘘だとわかりますね。
化学兵器や生物兵器、そして戦術核の使用など、
いろいろとエスカレートする可能性があります。

怒りを表出するには力がいるよ

怒りを伝えるためには、実はこちらにも力が必要です。
その力は経済力でも武力でもいいでしょう。
まったく力がないものが怒りを伝えても、ごくまれな例外を除いて
その怒りは抹殺されてしまいます。

どれほどの力を持つかは、人それぞれ、国それぞれが考えることです。
怒りの伝え方、怒りの共感の方法を間違えると
80年前の不幸な時代に突入すると思います。

ほんのちょっとの偶発的な出来事で、不幸な時代に突入するのかもしれません。
そんなことがないようにお祈りするだけです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?