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Amazonプライム「坂の上の雲」  新見正則

司馬遼太郎「坂の上の雲」、知っていますか?

イギリスの大学院博士課程で過ごした5年間(1993年から1998年)、僕は一度も帰国せずに勉学に励みました。帰国するとゼロから学んでいた免疫学の高い、高い壁に挑戦する意欲が萎えそうだったからです。オックスフォード大学内には差別はまったくありませんでした。ところが、街に出るといろいろな差別を肌で感じました。そんな時に読みふけった本が司馬遼太郎の「坂の上の雲」でした。「まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている」で始まるものです。明治維新を経て、国民となり、国家を意識し、そして30年を経てロシアとの戦争に向かう時代を描いています。当時、異国にいて愛国心が沸々と沸き上がっていた僕は心底感動し「坂の上の雲」をむさぼり読んだのです。


NHKのドラマ化、秀逸です

その後、帰国し、僕の愛国心は萎え、藤沢周平の家族愛を描く小説がお気に入りになりました。そんなある日、「坂の上の雲」がNHKでドラマ化されました。2009年から2011年の年末まで、90分ドラマを足かけ3年間にわたって、計13回、放映したのです。もちろん僕も見ました。今回、そのドラマがAmazonプライムでも見られることを知り、初回を見始めると止まらなくなり、全13回を見てしまいました。そして、昔は涙ぐむことはなかったのですが、今回は何回も感極まることがありました。年を取ったのでしょう。


僕があらすじ紹介するよ!

娘が小学生の頃に作られたドラマです。娘が成人した今、改めて見直すと、また感慨深くなるのだと思います。ドラマの中では、旅順攻撃の指揮官であった乃木希典とその参謀を能なしのように描いています。一方で東郷平八郎率いる大日本帝国艦隊は参謀の力量を最大限に引き出し、無敵と言われていたバルチック艦隊に完勝するというストーリーが描かれています。

司馬遼太郎の描く世界観に惹かれて

司馬遼太郎は史実に基づいて物語を書き下ろしていますが、史実以外の部分は如何様にも書くことができます。つまり事実をつなぎ合わせて描いていますが、すべてが真実とは限らないと僕は思っています。司馬遼太郎が描く「坂の上の雲」で僕は主人公の秋山真之(ドラマでは本木雅弘)や秋山好古(阿部寛)兄弟は大好きです。「坂の上の雲」に登場する彼らが大好きなのであって、実際の彼らは違うのかもしれません。乃木希典とその参謀もいろいろな事情があって、あのような愚行に至ったのかもしれません。後から顧みればいろいろなことを言えます。

運で人生が決まります

そして、運が何より大切だと思うのです。バルチック艦隊と戦う場面でも、全艦が無防備な東郷ターンをしている時に、旗艦三笠にバルチック艦隊の大砲が命中していれば、戦況は変わっていたでしょう。運もまた人生だと、そう思うのです。がん治療でも生存率が良いといわれることを積み重ねて、それがエビデンスとなって、がんは不治の病から治療可能な病になりました。でも、いくらいろいろな努力を積み重ねても、運が悪ければ不幸な結果が訪れ、ガイドラインとは異なったことを選択しても、運が良ければ長生きします。また、運が悪ければガイドライン通りに治療しても医療行為の副作用であっと言う間に亡くなることもあります。本当に運が大切なのです。

新たな犠牲を強いられるかもしれない

日本を守るために多くの国民の命が日露戦争で失われました。そして、日露戦争の勝利(実は引き分け)の呪縛を引きずって、太平洋戦争では大艦隊主義と精神論で大敗しました。日露戦争は日本の軍国主義の終わりの始まりでした。

可能なら司馬遼太郎に尋ねたいのです。ロシアのウクライナ侵攻への思い、そして「次の」日露戦争で日本が勝利する方法です。秋山兄弟の軍服姿は大好きです。ドラマの主人公への思いと今の自衛隊の立ち位置を改めて考えさせる内容でした。平和は犠牲の上になりたっているのでしょう。そして、国民には権利もあれば義務も発生します。実は僕は徴兵制には賛成なのです。



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