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旅立ちの季節に   新見正則

まさかこんな激動の時代になるなんて

1995年、
オウム真理教のサリン事件が起きました。
5年間のオックスフォード留学の2年目でした。
まさか、毒ガスを使うテロが日本国内で起こることなど想像していませんでした。

2011年3月11日、
大学病院で外来診療をしているとき、今まで経験したことのない大きな揺れで
診察室の机が端から端まで移動しました。
その後は、津波が襲い、多くの人が想定していない大波に
福島原発が襲われ大惨事になりました。

そして2022年2月24日、僕の63歳の誕生日。
なんと誰も想像していなかったロシアのウクライナ侵略が始まりました。
防衛大臣も経験した政治家でさえまったく想定していなかったと語っています。

想定外のことが起こる世の中です。30年先はまったく読めません。
そして10年先も不透明です。
ましてや5年先も何が起こっているか想像できません。

そんな激動を感じる時代に僕たちは生きています。
桜のつぼみも膨らんできました。
卒業式の季節です。
そして新たな門出のときですね。

所詮僕らはいつかは散る桜だけど

「散る桜、残る桜も散る桜」
よく亡くなった母が語っていました。
良寬和尚の時世の句と言われていますが、その真偽は不明です。
誰が語ったものでもいいのですが、僕はこの句がとっても気に入っています。

人生は有限です。
先に散ろうと、後に残ろうと、所詮みんな散ってしまうということです。

懸命に生き抜くこと

僕の友人だった女性は40歳で乳がんを患い、あっと言う間に亡くなりました。
賢い人で、本当に短命だったのが残念です。
でも彼女は精一杯生き抜いて、そして亡くなりました。
最期までしっかりと自分の思いを語っていました。

母は95歳で他界しました。
90歳までは元気で100歳は軽く超すだろうと思っていましたが
90歳を過ぎてからは認知症が進み、最期は心が壊れて天国に逝きました。
「凛として死にたい」と常々語っていた母の希望は残念ながら叶いませんでした。

どう死ぬかではなく、どう生きるかを大切に

2人を見ていて、最期まで凛として生きることができるがんと、
長生きをしても心が壊れながら亡くなっていく老衰、
もしも自分が2つを選べるなら
がんも悪くないと当時は思いました。

でも結局、だれも自分で最期を選ぶことはできません。
授かった命を精一杯生き抜くしかないのだと思います。

大切なあなたへ

日本を飛び出して、大きく世界に羽ばたいてほしい。
結婚相手の国籍も問わない。
いっそ日本国籍を捨てて世界のどこかで生きてもらっても構わない。
何だっていいから、ともかくどこかで自分らしく精一杯生き抜いてもらいたい。
僕は愛国心が薄い父親です。

僕は家族を愛する父親です

じつは僕もオックスフォード留学時代は愛国心の塊でした。
日本のためならば命は惜しまないと思ったこともあります。
帰国後、愛国心は少しずつ消えてゆきました。
愛読書も司馬遼太郎の坂上の雲から、藤沢周平の蝉しぐれなどに変わりました。
国よりも家族を愛するメッセージが行間から溢れる藤沢周平が好きになりました。

新しい世界でがんばれ

旅立ちの季節ですね。親から巣立つ人もいるでしょう。
冒険の旅が始まる人もいるでしょう。
新しい世界に挑戦する人もいるでしょう。
何が起こるか不透明な世界です。
何を志しても構いませんが、変化に対応できる能力は
是非とも鍛えてもらいと願っています。

先の見えない激動のいま、旅立つ君にこそ幸あれ

「散る桜、残る桜も散る桜」
しかし、一方的な侵略行為で多くの命が失われるのは不条理に思えます。
それぞれの事情があるのが世界の真実でしょう。
そして、力の空白やアンバランスがあると
そこを埋めるように力が働くのでしょう。

そんな地政学的荒浪が現実となりかねない時代です。
各人が、自分の価値観や、国との距離感、そして自分の生き方を見つめなおして、
そして旅立ちの季節を迎えようではありませんか。


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