片思いの瞬間【ショートショート】
「ねえ、ガラス越しで手を合わせるのってどんな気分なんだろう」彼女はそう言った。脈略がなく始まったその話は、メジャー初登板で緊張して自分のフォームを忘れて投球に入り、ボーク判定された投手のようなぎこちなさを感じた。
「ねえ、聞いてる?」彼女はそう催促した。
「うん、聞いてる。聞いてる」僕は彼女にそう答えた。そして、彼女がガラス越しにいるのを想像しようとした。
誰も居ない帰り道だ。高校は山の上にあり、学校に登校する時は登山みたいに息を切らしながら何百段もの階段を登る。下校の