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teto『結んで開いて』 10月13日@熊本Django

今日は熊本Djangoで”泣けるコミックバンド”四星球との対バンだった。

トップバッターの四星球は登場から手が込んでいた。まさやんがステージに現れて「今日のために色々と用意してきました!……ただ、そのせいで『ドラえもん』を観逃してしまって」そういうと、どこからともなく「僕、ドラえもんだよ〜」と声が聞こえてきて、ドラえもんの顔が描かれた看板をかぶり、全身青タイツ姿のU太が袖から登場。まさやんが「うわぁ!ドラえもんや!」と喜ぶと、「僕もドラえもんだよ〜!」と同じドラえもん仕様のモリス。さらに「僕だって、ドラえもんだよ〜」と正面入り口から北島康雄が登場。ステージに3体のドラえもんとメガネ(まさやん)が揃った。

北島が観客に「タケコプターを持ってこようと思ったんやけど、大変だったから」と竹の棒を渡し、「どこでもドアを持ってこようと思ったやけど、大変だったから」とドアノブのみを渡し、「のび太くんを連れてこようと思ったんだけど、連れてこれなかったから」とダンボールで作ったスネ夫の頭を渡した。四星球が一言話すごとにドッカンドッカン会場が盛り上がる。後方でステージを見ていたtetoメンバーも笑っている。

「今年の『YON FES』に出た時、打ち上げの席で小池くんから『もし対バンに誘ったら来てくれますか?』と言われて軽い気持ちでOKしたら、本当に声がかかって(笑)。昨日、ギックリ腰になったんですけど、せっかくのtetoのライブに穴を空けるわけいかないのでやってきました」と話し、誠意を見せた。
「妖怪泣き笑い」「クラーク博士と僕」「言うてますけども」を披露した後、再び北島が口を開く。「みんなtetoみたいなバンドになりたかったの。ワーって音を出して、ヒリヒリするようなライブをするバンド。だけど俺も含めて、みんな出来なかったのよね。2002年に四星球を結成して今年で16年目。今、あの時になりたかったヒリヒリするようなバンドに呼ばれたということは、そういうことだと思います」

ーーパッとスポットライトが4人を照らしたと同時に、フロアから大きな拍手が送られた。Dragon AshのKJに「四星球は『対バンして負けたくないバンド』の上位に入る」と言わしめたことがある。圧倒的なパフォーマンス、バラエティに富んだ演出、マキシマムザホルモンが彼らのステージを見て泣いたというのも頷ける。そんな最高の演奏を届けて、前半戦は終了した。

そして、tetoが登場。台風に見舞われた千葉LOOKを含めると、この日でツアー6本目になるが、いつものtetoと違うステージだった。こんなに楽しそうに演奏する4人は初めてだ。MCになり小池が口を開く「僕、高校生の時から四星球を知ってて。『YON FES』で一緒になった時、2曲目に『クラーク博士と僕』という曲をやってたんです。あれだけ明るくて、面白くて、カッコイイのに……なんか切ないなと思って。曲を聴きながら涙を流してしまって、すぐにトイレへ駆け込みました。あの時、フェスの裏で声をかけさせてもらって、俺らのツアーに出てくれて本当に嬉しいです」そして「ルサンチマン」で小池が笑みを浮かべながら、フロアに向けて「熊本最高だわ!俺、もうここで死んでもいいわ」と口にした。

「やっぱり楽しかったり、面白かったり、感動できたり、いろんなことがあって人間じゃないですか。俺らもいつも怒ってるわけじゃないし、悲しんでるわけでもない。俺は自分の好きなようにやるし、みんなも好きなように楽しんでもらって、その点と点がごっちんこしたら最高……じゃあ『散々 愛燦燦』を」山崎陸、佐藤健一郎も時折笑顔を見せながら、ライブが楽しくてたまらないような感じで演奏する。こういうtetoも滅茶苦茶良いなと思った。

「故郷に置いてきたとはずの思い出とか、星とか、街とか……東京に来ても熊本に来ても、ずっと残っていたりするんだ」小池がふと物憂げな表情で天井を見つめた後、「溶けた銃口」へ。<置いてきたあの季節や光景や、あの星は時代を超えて遊泳し続けるんだろう>どんなに離れていようと、時間が経とうとも、記憶の中で色褪せない“あの街”と“あの頃の自分”を歌った曲。会場で回り続けるミラーボールの明かり1つ1つが、まるで思い出の走馬灯のようで幻想的な雰囲気に感じられた。

本編のラストは「手」を披露。小池は何度も「最高だぁ!」と口にして、観客はできるだけ高くジャンプして、僕の目の前ではステージが見えなくなるほど無数の腕が上がっていた。

そして、休む間も無くアンコールへ。この日、tetoが最後に選んだ曲は「36.4」。制御という糸が切れたように山崎は暴れまわり、小池もフロアに降りて縦横無尽に駆け回り、ステージに戻ってきたかと思えばメンバー全員に水をぶっかける。さらにマイクコードを首に巻きつける。もう何をしてるのか分からない、ビッグバンのような爆発的な演奏だった。

終演後、小池と北島を除いてtetoと四星球のメンバーで打ち上げをすることに。モリスが山崎に尋ねる。「アンコールの時、ギターどうした?なんか変やったけど」「あぁ、初っ端からギターの弦が切れちゃって」そういうと佐藤が「なんか口で言ってましたよね?」「うん、しょうがないから口でギターの音を言ってた『テンテンテンテン』って」

弦が切れたから、口でギターのフレーズを歌う……この人、イかれてるわ。

TEXT&PHOTO 真貝聡

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