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アメリカ:近親相姦を容認した新興宗教


 アメリカに近親相姦を容認し、大きな社会問題を引き起こした有名なカルト教団があります。「チルドレン・オブ・ゴッド」です。この教団の教祖であり予言者の故デビッド・バーグは、近親相姦などを禁じる「人間の法律」(主にアメリカの州の法律など)に異論を唱え、近親相姦や自由なセックスを推奨しました。彼はそのことで後に世間からの強い反発に遭います。

 ちなみにこの教団の初期の信者にはリヴァー・フェニックスとホアキン・フェニックスの両親も含まれていたそうです。3人はカルト教団の共同生活に資金を提供するための寄付を求め路上で歌っていたといい、また、ロック・バンド「フリートウッド・マック」の初期メンバーであるジェレミー・スペンサーなども教団のメンバーだったと言われています。

 教祖バーグは1960年代後半、南カリフォルニアで教団を立ち上げます。教団を大きくする上でバーグは2つの大きな主張を掲げ、それを広めることで、当時、ヒッピー文化の台頭で性開放に強い興味や関心を抱いていた若者を惹きつけることができると考えました。

 二つの主張の内一つは「神の子ら以外のあらゆる組織で構成される社会の『システム』は誤った方向に導かれ腐敗している』というもので、2つ目は『イエスは信者がいつでも好きな相手とできるだけ多くのセックスをすることを望んでいる』というものでした。

 この二つの主張はバーグが予見した通り、教団への関心を呼ぶ強い磁石となります。その後、教団は急激に成長して世界中に信者を増やしていきます。

 バーグは教えを広めるにあたって、独特な手法をとります。それが後に大きな話題となったニュースレター「Mo Letters(モー書簡)」です。

 バーグは絵入りの手紙を通じて、彼自身の知恵と教えを信者や教団に関心を持つ若者を相手に広めていきます。レターの名称の「Mo」はバーグの筆名「モーセ・デイビッド」に由来しているそうです。レターを使った理由については、遠隔で説法をすることで、バーグ自身が身を隠し、比較的贅沢な生活を送り、不審な外部の家族、友人、当局の接近を避けることができたからだと推測されています(教団に否定的な感情を持つ海外サイトからの引用です)。

 モー書簡を通じて、バーグは信奉者たちに、どこに住むべきか、どのコミューンが自分たちに最も適しているか、家族のどのメンバーと一緒に住めるかといった指示も与えるようになります。その中には誰と一緒に寝るべきかの教えもありました。女性は誰とでも寝ることが期待され、さもなければ利己的だと決めつけられました。これは教団の「セックスは神の愛の一部であり、愛を分かち合うことは良いことであり純粋であり、愛を差し控えることは利己的で高慢で、しばしば罰せられるものである」という教えに沿って決められたそうです。

 この会報誌には近親相姦に関する記載も多数掲載されました。英語で検索をかけると、「Mo Letters」の実物の写真や、内容をまとめたサイトなどが見つかります。そこから何件か内容を引用します。

  一人目は信者だった母親と性的関係を持った息子の投稿です。とても生々しい最初の近親相姦時の心境が綴られています。 

 息子:「心臓が高鳴っていたのを覚えていますが、本当に恥ずかしくて言葉を発したことを覚えていません。私はほとんど唖然として言葉を失い、もしかしたら母は以前から私について性的な考えを抱いていたのではないかと恐怖さえ感じました。私は母を責めるつもりはありません。彼女の夫は長い間彼女と一緒に住んでいなかったのです。そして彼女は今も非常にセクシーです。そして彼女はすぐ隣にいる強く若い男(この息子さん自身のことです)と一緒にベッドで寝ていたある寒い夜にその彼に包まれることになるのです。私が感じていたのと同じくらい、彼女もきっと感じたこともない刺激を感じたに違いありません」

 2件目も母と関係を持った信者の投稿です。 

「そのとき、私は母に対して強い愛を抱いていました。私たちがその気になれば、性的にさらに緊密な関係へ確実に花開く可能性があると想像できました。ご存知のように、天国にはセックスがあります。そして天使の私たちは遂にセックスをしました。今でも母は私とセックスをします!女性の天使たち、神に感謝します!」

 「Mo Letters」にはQ&A形式で、信者の質問に教団が回答する記述もありました。ここに「聖書には近親相姦を禁止するような表現はありますか」という質問が紹介されました。

 これに対する教団の回答が下記です。

「聖書の記述ははっきりとしませんが、人間の作った法律に目をやると、いとこ同士の結婚も含めて、それを禁じる法律がたくさんあります。近親相姦は実行すると、家族の長所か短所を引き出すことが知られており、他の近親交配と同様に、天才か愚か者のどちらかを生み出すことになります。たとえば、家畜の場合、系統や系統を改善するような方法で近親交配を行うこともできますし、間違った方法で近親交配を行って悪化させることもできます。しかし、神が支配している以上、人間の反神の法則以外に問題はありません。(アダムの子供の)カインとセトは自分たちの姉妹と結婚し、(アブラハムの甥の)ロトは自分の2人の娘と何の問題もなく結婚しました」

 信者の母親が息子の性教育について相談した質問もありました。

 Q:「質問です。 私の子は男性で、とてもセクシーです。でも、母親が男の彼に性教育を教えるのはよくないと思います。家族の他の誰かが彼に彼の世話をしてくれると信じていますが、今のところ、家族は誰もその責任を負っていません」 
 A:「何が問題なのでしょうか?それはまったく自然なことです。セックスについて学ぶのに、自分の愛する母親以上に適した人はいないでしょう」

 これは父との性関係を相談する信者の投稿です。

「私は家族に戻って4か月になりますが、父と娘の性行為についてアドバイスが欲しいです。私がしばらく家族から離れて暮らしていたとき、父は私を欲しがるようになりました。私を欲情した目で見るのです。ある夜、彼は私の部屋にやって来て、私が彼に心を開いてくれることを期待して私の足をさすりました。私は彼の強い性欲にはとても同情しますが、自分の父親と愛し合うことを考えるとゾッとします。私は本当に主の御心を求めて、これについて何か書いてほしいと願います。妹に父親を「FFing」(教団の女性派遣システム)するように頼んだところ、彼女は試してみると言いました。父と母の関係はあまり良好ではありません」 

 これは会報誌の中にあった教団の近親相姦に対する考えを示した文章からの引用です。1980年代に書かれたようです。 

 「あなたは近親相姦についてあえて話す必要はありません。それはプライベートではほとんど発音する勇気すら持てない言葉です。近親相姦、未成年者への汚職、青少年非行の助長、未成年者の非行への加担で告発される可能性もあります。つまり、セックスに関するあらゆる種類のクレイジーな法律が無数に世の中には存在しているのです。セックスが愛の中で行われている限り、セックスが何であれ、相手が何であれ、誰、年齢、親族、マナーに関係なく、この世でそれを行うことに何の問題もありません。もしこのことが知られたら、彼ら(一般社会)は私を縛り上げようとするでしょう!おそらく私が刑務所に入る前に彼らは私をリンチするでしょう!神の愛の法則には、恋愛関係の制限や年齢制限はありません。しかし、それはすべて法律に違反することになります。このシステムは本当に間違っています!それは、神の法、神の愛、神の性に対する嘘と欺瞞と悪魔のようなプロパガンダです。全く自然の原理に反しています!」

 「チルドレン・オブ・ゴッド」の「愛の法則」では、愛の自由な表現、つまりセックスは神聖なものであると定められています。同意年齢に対する寛大な態度を公然と説くこの教えは、小児性愛者や虐待者を惹きつけるようになります。さらにバーグは男性信者を勧誘したり、教団の資金を稼ぐために女性を派遣することも思いつきます。これはモー書簡では何気なく「FFing」と呼ばれています。女性たちはバーや路上で男性を「釣る」ための道具として送り出され、可能であればコミューンへの資金集めのために見返りの代金を相手から受け取ったそうです。

 インターポールとFBIは教団の捜査を始めます。1980年代後半から、信者の家庭内で児童虐待が行われているとの報告が多く寄せられるようになったのです。これらに関する裁判記録などは海外のサイトで読むことができます。

 デビッド・バーグは1994年に亡くなります。彼が亡くなった時、彼の内縁の妻は「再起動」を発表し、教団を存続させます。教団はその後、世論の反発からその規模を縮小させましたが、今も細々と活動を継続させているそうです。 

(了)

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