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木下龍也さん第三歌集『オールアラウンドユー』の優しさを。
こんにちは。桜小路いをりです。
昨日、歌人の木下龍也さんの第三歌集『オールアラウンドユー』を我が家にお迎えしました。
サイン本、買えました。嬉しい。
5色展開で、私は紺色(?)のものをチョイスしました。
布の装丁がほっこり柔らかくて、温かみがあってとても素敵です。
ページの角も丸くカットされているので、全方位どこから見ても優しい歌集、という感じ。
とがったところが、ひとつもない。
ついつい、ひらがな多めの文章にしてしまうくらい。
もちろん中身の短歌も、優しさの中に切なさがあったり、どこかくすっと笑えたり、はっとするような鮮烈なメッセージがあったり。
ひとつひとつ、これからいっぱい時間をかけて味わっていきたい、と思うものばかりでした。
本に挟まっていたナナロク社さん宛の読書カードに、「今の気分で本書から5首選ぶならどの歌でしょうか。」という質問があったので、ちょっと5首挙げてみます。
まず1首目。
詩はすべて「さみしい」という4文字のバリエーションに過ぎない、けれど
私が買ったサイン本に、木下龍也さんの直筆で書いてある短歌。
私が行った本屋さんにはサイン本のバリエーションが2首あって、迷ってこれにしました。
「さみしい」と言えない代わりに、詩を紡ぐ。でも、その詩は、もしかしたら……。
「けれど」に全てが託されていて、「書くこと」に迷ったら読み返したい、と思った1首です。
波を織りなおして海の配色を決めかねている画家の名は風
生と死が地続きである月の夜に川は優しい目隠しをする
みずうみに落とした櫛が底へゆきながらひかりの毛先をとかす
2、3、4首目は、「この歌、好き」という言葉に理由を書き足すことすら野暮に思えるくらい、本当に素敵な短歌です。
やっぱり、私は青色が好きなのかな。この3首、どれも彩度や明度は違えど「青」のイメージです。
あまり意識したことはなかったけれど、心の奥に、「青」という色の懐の深さへの憧れがあるのかもしれません。そういえば、女優の上白石萌音さんも、エッセイ『いろいろ』の中で「青ほど一生、馴染む色はない」というようなことをおっしゃっていたような……。
話が逸れました、5首目はこちらです。
花を嗅ぐひとときだけは許されたような気持ちでマスクを外す
「分かる……!」という感じ。
マスクを外すときの、なんだかほっとするような、ちょっと気恥ずかしいような気持ちまで伝わってくるような1首だなと思います。
他にも素敵な短歌がたくさんたくさん詰まっているので、「今の気分で」と言われているのに、つい一生懸命考えてしまいました。
木下龍也さんの「情熱大陸」も視聴してから読んだこともあり、短歌の奥に「人」が見えるような温かみや優しさを感じることができました。
装丁も、収録されている短歌も、言葉のひとつひとつも。
どれを切り取っても優しくて、枕元に大切に置いておきたいです。
そして、装丁が色褪せるくらい読み返したい。
そんなふうに思える一冊でした。
木下龍也さん、そしてナナロク社さん、素敵な歌集をありがとうございます。
今回お借りした見出し画像は、紅葉とその影の写真です。短歌系の記事、紅葉率高いぞ……というのは置いておいて。シルエットと一緒に切り取られた紅葉が何ともドラマチックで、即決でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。