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国連グラス

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トモダチにもらったイイグラスで水を飲んだら、国連の会議に出席している気分になったので、小説を書くことにしました。国連理事のフジオと、その妻キャシーのラブロマンスです。
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#小説

2/X

 低質なバーでジントニックを注文すると、若いね、ID見せて、とバーカウンターの向こう側にいるコーカソイド系の金髪のおねえちゃんに言われた。モンゴロイドの中でも一際幼く見えるフジオは、海外、特に欧米では、大抵実年齢より10歳くらい若いと言われる。フジオは黒の麻で出来た小さなショルダーバッグの中からパスポートを取り出して、金髪のおねえちゃんに渡した。金髪のおねえちゃんはパスポートの表紙を捲り、パスポー

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1/X

 国際連合特別会の会期中、キャシーはずっとホテルにいる。
 外交官上がりの彼女は3年前にフジオと婚姻関係を結んだ。キャシーは世界中のあらゆる会議に出席するフジオに帯同して、あらゆるホテルで一日の全てを過ごす。
 朝、フジオが起床すると、リヒテンシュタインの硬水が入れらているフィンランドのデザイナーがつくった水差しから、国連グラスに水を注ぐ。フジオはキャシーがリヒテンシュタインの硬水を国連グラスに注

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