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  ことよみにあたうる自然

 彼方から来る光。夢から見た現実。不動の岩の摩擦音。こすれてゆく。削れていく。宝石を磨くように?磨き上げるように?さて、腕の中から生えてきた美しい薔薇 アームローズ が、この頃元気がないという。ひとしきり、あたりを見回して、そそくさとツボミへと帰っていくらしい。隣のロウデ氏は毎日顔を出して、挨拶を交わす。
「ああ、みんな元気さ。すべてのものは、くるくると良く回っている。同時になだらかに運ばれていくさ。運河の舟のように。静かに大きくゆっくりとね」
アームローズは、密かな憧れとともにロウデ氏を見つめる。このひとは、いったい・・・・・・。
 20年後。アームローズは顔を輝かせて言う。
「あの頃の、あの頃は、、、、、六十の時代を同時に生きてきたような燃え盛る水のようだったとしか、、、いいようのない、なにか、、、というか」
 花が咲いていた。あっというまに影が灰色に変わる。縄たちが踊りだす。足の先から100首読まれて、あっというまにFUJIWARAが、座っていた。
「うむ。決して、おさまらぬ夜であれば、おさめるのもやむなし」
 名前のない鳥が、鳴き声をあげる。ズズズオレロゴゴロオゴホ。アームローズは、楽しみを覚えた。気分が上がっている。なだらかに坂であるとわからないくらいの速度で、未知の道をさかのぼるように。ただならぬように。
 銃度の高い武器が、木にぶらさがっている。くるんだ。マシュマロがくるみきって、甘く溶かして砂糖にしてしまったようだ。
 甘い甘いチョコレートが、アームローズの熱をうけて、うなされる。
「ムームムームームー」六度目の世界記録更新者KIKIKIが手をあげる。今度は30年前に、30年前にと情熱的な目で、足踏みをする。地震と勘違いした魔狼ゲツダオが、優しく鼻先をローズの花びらにあてる。
「もうすぐ、来ますね」ロウデ氏の曽祖父が笑顔で言う。
「もうすぐ、来ますね」ロウデ氏の玄孫が顔を輝かせて言う。
アームローズは、ふと気になった。
「私は誰の腕から生えているのだろう?」
 見えない。誰からも見る可能性を閉ざした人間がいた。
声だけがした。
「大丈夫。そっとしているさ」
アームローズはおもった。「そっとしすぎじゃないかな?」
香りが湖をおおい、歌声が聞こえてくる。
大きな大地のふたで震えるような料理をつくりあげているのが、見える。
花がいちりん、戻ってきた。
風が走り出す。
あげられた気持ちが降り注ぐ力。
小さな芽は嬉しそうに微笑む。
「ここはどこですか?」
アームローズは「腕さ」と答えて、眠りこける。
朝はしばらく来ないのだから。

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