運命を変えた2冊の本 モヤモヤに悩むあなたへ

2004年の時に、大学生を1年休学してバックパッカーの旅に出ました。僕はそこでモッツァレラと出会うことができたのです。

モヤモヤとしていた自分が変わるきっかけになった旅だったのですが、実はこのバックパッカーのくだり、取材で何度も話をさせてもらっています(笑)。

店をオープンした頃は30歳だったので、遡ってもまだ8年ほど前の話。当時なら許される気がするのですが、今となっては15年以上も前のこと。その時の話をするのは過去に縋っている感があって、格好悪い気さえしています。

けれども、当時の僕のように今現在モヤモヤしている人が多いのではないかと思い、何かのきっかけになればと思い、当時のことを掘り下げて書いてみます。

好きな小説や自分自身の血肉になっている本はたくさんあるのですが、明らかに私の運命を変えたであろう2冊の本にバックパーカーの最中に出合い、自分自身を見つめることが出来たことについてです。

フランスにて : 『 イタリアに行ってコックになる 』

3月後半に出発する際も、当て所なく、いや、あるとしたら「外国に留学している友人と会う」「インドとトルコに行く」ぐらいを心の隅に置き、世界をこの目で直接見て体験したい、ぐらいの軽い気持ちでバックパッカーの旅に出ました。

今考えると、就職活動から逃げていたのかもしれません。しかし、旅をする中で多くの方と出会い、交流をすることができました。

最初の中国では、日本語学校を立ち上げる中国人、ともに立ち上げる日本人。日本に留学して帰国する中国人。
モンゴルではダイビングのビジネスを立ち上げるウクライナ人。
フランスでは星付きのレストランで働く日本人。

どの国にも、留学生の日本人、現地で働く日本人がいて、世界の狭さを感じるとともに、旅の僅かながらの時間を共に過ごさせていただきました。

フランスでは、リヨンの少し北西の小さな田舎町 Vichy(ビシー)に留学していた友人を訪ねました。栃木の有名な OTOWA RESTAURANT  音羽和紀シェフのご長男・音羽元さんも留学しており、元さんのアパートに何日か泊まらせてもらいました。そこで元さんの本棚にあった井川直子さんの『イタリアに行ってコックになる』に出合いました。(運命の本なので、その後ずっと井川さんのファンで、33歳、お店が3周年の節目の時に妻に誕生祝いをしてもらったイタリアンのバーで偶然お会いできたのはなんだか運命を感じました。)

24人ぐらいの料理人やサービスマンのインタビュー集。イタリアの現地でのことや、その修業を経て思ったことなど、テレビで活躍するスターシェフではない等身大のシェフがそこには紹介されていました。(今では星を取られている方も!)

身軽さと引き換えに、苦労や努力をしながら、仕事に楽しそうに向き合っている姿がそこにはありました。それと同時に高校時代に思っていた料理人になるという夢をふと思い出したのです。「あれ、僕は料理人になりたいんじゃなかったっけ?」と。「毎日ビールを飲んで、写真を撮っているだけで、いったい何をしているんだ」と。思いました。

そしてモヤモヤした思いのまま、フランスを去り、イギリスや北欧、モロッコやスペイン、などを経て最終的にはイタリアを目指しました。モロッコに行った頃に、初イスラム圏で文化の違いに驚き、フレンドリーな人たちに絨毯を売られながら、無性にイタリアに行きたくなっていました。

国をまたぐ度に、目まぐるしく変わっていく言語に疲れて、大学でイタリア語を習っていたから、イタリアに安心を求めていたのだと思います。そして大学2年生のときにいったことのあるイタリアでピッツァが無性に食べたくなりました。井川さんの『イタリアに行ってコックになる』の本も頭の片隅から離れませんでした。

イタリアにて : 『 リトルターン 』

留学をしている友人を訪ね、ナポリに着いたときに、ナポリピッツァの修業に来ていた2人の日本人と出会います。そこで泊めてもらった部屋に『リトルターン』という本が置いてあったのです。

ある飛べなくなった鳥(アジサシ)の話。悩みながら、いろいろな動物と話ながら、自分と向き合って飛ぶことにチャレンジしてくという話です。

絵本ではありますが、とてもきれいな水彩画とともに物語がすすんでいくため、大人が見ても楽しめるものでした。

当時モヤモヤして、旅の途中から再び思い出して芽生えてきた料理人に道に進んでもいいのかという夢に悩み、もがいている自分が重なって、この絵本を2度も3度も読み返したのを覚えています。

この本を読み、飛ぶ勇気をもらえたことでナポリピッツァのお店に飛び込みで修業できたし、チーズの世界にも飛び込んでいくことができました。日本に戻っても結局悩んで1〜2ヶ月過ごすのですが、将来的には自分の力で立っていきたいと考え、飲食業に飛び込むことができたと思っています。

行動することで未来が見えてくる

今、自分と向き合う時間が多くなってきているかと思います。

今後のことを考えると、モヤモヤしてしまいますよね。(わかります。)

僕もバックパッカーの旅に出る前、部活の先輩のように銀行や商社に就職するのも違うような気がしてモヤモヤしていました。当時を振り返ると高校時代に描いていた料理人になるという選択肢を忘れていた節さえあります。音楽雑誌や新聞社で書くことを仕事にしようとおもい、暇つぶしに勉強しようと漢字検定の本を旅に持っていったりもしました。結局モヤモヤの正体は将来について不安だったのだったと思います。

でも、旅に出て、この2冊に偶然出合ったことがきっかけで、「行動すること」、「自分と向き合うこと」「全力でやること」を学びました。

その時点ではまだ将来が不安でしたが、悩んでいても仕方なく、料理で生きていくことは本当に自分の将来やりたいことかとも何度も自分に問い、まずは行動する、と決めナポリの地でピッツェリアにダメ元で飛び込んで修業しに行きました。泊まってい部屋でも、夜中にほうきや鍋の蓋を使ってピッツァを回す練習をしたりと、全力で取り組みました。

いま現在も将来の不安があると思いますが、モヤモヤしている時間は、行動に移すことでしか終わらないんじゃないか、と思います。

僕も今、何が正解かわからなくて、またモヤモヤしているのです。モジャモジャもしています。CHEESE STANDの未来のために向き合って、全力で行動していきます。

ともに頑張りましょう。


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