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未来の自分から請け負う仕事


牛骨ナットのストックが底をついたので少しまとめて製作。
この終わってしまったストックは、以前スタッフに作ってもらっておいたもの。(※牛骨ナットというのは、ギターやウクレレの上駒。指板の上の端で弦を支える役割をしている大事な部品。素材はプラスチックだったり骨だったりカーボンだったりいろいろ。昔は象牙とか使っていたわけよね。)

今までずっと、こういった部材のストックを作ることは若手スタッフの仕事にしていた。目的のものを作り出すのに、治具作りを教わったり、時には自分で治具を考えたりして作り、それを使って加工をするのはとても勉強になることだからだ。
治具の作り方によって製品の精度も変わってくるし、加工時間も大幅に変わってきたりする。自分の工夫によって製作に必要な時間や仕上がりの美しさが変わるのを体験することは、そのままものづくりの面白さにもつながっていく。
仕事のやりがいや楽しさ、達成感も感じられるはずだ。

ただ、僕が望む仕上がりが100%得られるわけではないところが共同制作の難しいところ。どうしても人に頼んで作っていると80%くらいの完成度で我慢しなくてはならない。(いや、時には僕がやるよりも良い仕上がりな場合もあるんだけどね…。)

自分自身が作業していれば、作業途中で微妙な不具合に気がつき、すぐに修正していくことが出来る。人に作業をしてもらっていると、「問題無いかな?」という問いかけに、ほとんどの場合「大丈夫です!」という答えが返ってきてしまう。スタッフにとって、「ちょっと問題があるんですが」という報告をすることは少し勇気が要る。

というわけで今回、スタッフ君の作ってくれた牛骨ナットのストックが終わる時点で、「また作らなくちゃな」というめんどくささがある。と同時に、「これで自分が思う通りのものが作れる」という楽しさと充実感、期待感がある。

こういった仕事は、ある程度の数量(200個とか)をまとめて作るから時間のかかる作業で大変なんだけど、作業をしている間にもどんどんと治具や作業方法をブラッシュアップしていく楽しみもある。そうやって作業の効率を上げたり仕上がりをより理想に近づけたりしていくのだ。

そして実はこういった部材のストックを作る作業は、未来の自分に向けての仕事でもあるのだ。
今苦労をしておくことで、未来の自分は安心してその部材を使い、作業時間を短縮することが出来る。自分自身が作ったという事実は、やはりそれを使う時に大きな安心感をもたらす。自分が過去に作ったものが信用できなかったら、ものづくりとしてはちょっとまずい。
未来の自分を裏切らないためにも、今この時間に、自分が持つすべての力で細かな部材加工をしておくのだ。

ただ、時にはストックを使い終わるまでの間に自分が進化して、仕様を変えたくなったり、思っている仕上がりレベルが上がってしまう事もある。

その場合は仕方なく、過去の自分を呪いながらしぶしぶと修正作業に追われたり作り直したりすることになるのだが、まぁそれはそれとして自分がステップアップできたことを 喜ぶべきかな。ね。

というわけで、治具作りも含めほぼまるまる1日かけて360個のナット加工完了。こrで2年位は作らなくて済むなぁ。良かったー。

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