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ナチュラルにそしてしなやかに体と心をうごかすには:田先生とのダイアローグ

11月も終わりついに師走。いよいよ第四回。

 11月は祝日が2回。実質上日曜日しか休みのない私にとっては祝日はとってもありがたい。コロナ禍が始まって得られた生活へのポジティブな影響として、出席しなければいけない学会や各種委員会、単位取得のための研修会・講習会などが軒並みオンラインになったり、そもそもなくなったりしたことで、休みが本当に休みになることが増えたことだ。どこにも出かけられない、ステイホームを口実にすっかり家にいることは明らかに増えた。

 以前はほぼ毎週土日にはなんらかのタスクが入り、休診日には大小を問わないミーティングが続き、次の休みはいったいいつのことだろう、と指折り数えながら待ったものである。1か月休みなし、なんてことはざらだったし、ちょっと長期の休みになると原稿やらなんやらたまった仕事を一気に片づけなければいけなくなる。だんだんそうなると休みの感覚がおかしくなって、朝5時に起きて3~4時間仕事をして9時からは予定がない、なんてのは「休み」と認識してしまったりしたものだ。

 感染者数が収まり始めたら、なんだかまた研修会や講演会などもじわりじわりと増えてきたので、スケジュール管理はしっかりしないといけないとあらためて思う。気が付くと隙間時間がすべて予定で埋め尽くされてしまうことが以前は多々あった。最近は反省をいかしてあらかじめ絶対予定をいれない部分を黒くぬっていたりするのでだいぶ減ったのだが… 
 勤労感謝の日が終わると、町は急に冷え込んできて、周囲の紅葉も深まり、ぐっと晩秋の気配が強まってくる。年賀状やお歳暮、そして忘れちゃいけないふるさと納税などの案内が始まると、ああもう今年も終わりだという気持ちがふつふつと湧き上がってくる。あわただしい日々の中、ようやく時間が取れ、残っていた動画編集をする。たいしたことをやっているわけじゃないのに、やっぱりこういうことに無駄に時間をとられてしまうことが、僕の仕事のできなさ加減を表しているのだろう。まあ、人には向き不向きというか、得意分野があるのでそういうことはあまり気にしないのだけど、こういうのが必須スキルになるとつらいなあ、と感じてしまう。動画編集とかは、もう小学校で教えてもいいのかもしれないなあ、なんて思ったりして。かつて自分が子供の時に学んで、結局大人になって使うことのなかったはんだ付けや、お裁縫の技術と同様、未来の子供たちは動画編集スキルは必要なくなるのかもしれない、なんて思ったりして。

王子生協病院とわたしのちょっと長めの昔話

 さて第4弾、最後のインタビューのお相手は、王子生協病院の田直子先生でした。その前に王子生協病院と僕とのかかわりを少しだけお話します。

 ちょっとだけ長めの昔話…

 王子生協病院。もちろん東京都王子にある。

 そして僕と王子とをつないだ、生協浮間診療所。

 なんか久しぶりにホームページみたらどっちも立派になっていてびっくり。

 実は、僕は10年近く、1か月に1回、王子生協病院所属の研修医のプロジェクトワークという研究指導のお手伝いをしていました。細かいいきさつはもうだいぶ昔のことなので忘れたけれど、かつて自分が東大で働いていたときに、当時東大に研究生として勉強をしにきていた現・唐津市民病院院長の大野毎子先生を介して生協浮間診療所の藤沼康樹先生とつながりができたのでした。なんだかそんなこんなでいつのまにやら設立当初の北部東京家庭医療学センターでリサーチをという話が盛り上がって、最初はボランティアで講義をしたり、大野先生や何人かの先生たちと共同で臨床研究をしたりしていたんだけれど、松村医院を継承したころからすごく忙しくなってきたので、なんかやっぱりきちんとお給料もらって業務っていう形にしたほうがお互いモチベーションも保てるので、っていうことになり、月1回、正式に研究コンサルタントとして王子にいくことになったのでした。胃カメラのパートを雇う分の給料を回したって藤沼先生は当時言ってました(笑)。うちから王子までは1時間以上かかるし、それはそれなりに大変だったんだけれど、開業当初一人でいろいろ臨床をもがいているよりもなんか文化も立ち位置も違う人たちとミックスされると刺激を受けるし、それにやっぱり夢と希望に満ち溢れている若い研修過程の先生たちが多くいたのでとっても楽しくやっていました。まあ、リサーチ指導は僕自身の研究がはかどらないことや、たぶん自分に才能がなかったこともあってなかなかうまくいかなかったんだけれども、そのときかかわっていた人たちはその後どんどん立派になっていったし、藤沼先生はいろんな方向に活動を拡大していって、今や日本のプライマリ・ケア・リサーチや家庭医療を、どんな大学や教育機関にも負けないくらいに発展させていき、人材育成の面でもアカデミックプロダクトの面でも日本でも有数の組織へとその後発展させていったのでした。

 しばらくぶりにみてみたら、いつのまにかこちらもなんかすごい組織に…口あんぐり

 まあ、それはそれとして。そんなわけで王子生協病院の皆さんと自分とはなんかいろいろ関わりがあったのですが、田さんはその中で出会った人たちの中のおひとりでした。昔話が長くなってきたので、この辺でやめます。

動画の最後。王子生協病院の田直子先生とのダイアローグ

 さて、コロナ・パンデミックが始まる前に、王子生協病院の旧知の先生から専攻医の卒業イベントで話をしてほしい、という依頼があって、そのころずっとそういうお仕事はお断りしていた時期だったのでいったん自分はお断りしたんだけれど、なんかゆかりのある王子生協病院からのせっかくの依頼だし、しばらくぶりに王子に行ってみたいな、という気持ちにもなったのでその時は引き受けたのでした。結局卒業イベントはコロナ禍が始まってしまい、かなり縮小して実施したのですが、久しぶりに自分を振り返るいい機会にもなりました。
 そんなこんなのいきさつで再び王子生協病院に親しみを感じはじめたこともあり、それから今回の企画の影のシナリオライターから推薦を受けたこともあって、そこでずっと働いている田さんに白羽の矢をたてました。特に、個人的に田さんのスタンスに、レジリエンスという表現とはちょっとは違うナチュラルでしなやかな強さを当時から感じていたので、もうなんだかいつも肩に力が入りすぎてしまう自分を顧みて、その秘訣を探るべくインタビューに登場してもらうことにいたしました。そして依頼したところふたつ返事でオッケーをもらいました。

 いくら地域医療の先端を走っているとはいえ、やっぱり王子生協病院は地域の忙しい病院なので当時はたから見て臨床はすごく大変そうで、そこで働いている先生たちもそれなりに大変そうでした。そんな中長年ずっと働いてきて、臨床もやって、多くの研修医たちを育ててきた先生。それにこれまでお話しを伺った3人は地方で働いているということもあって、都市部で働くドクター、という視点からのお話しもしてみたい、とおもって、そのあたりをインタビューの主体にしようと思って臨みました。といっても準備あんまりしなかったけど。

動画はこちら↓

 https://youtu.be/oBzFlv0mBaY

 お話ししたのは8月14日の土曜日。今から考えるとこの時が東京の第五波のピークでした。翌日の輪番当番は、次々と来るコロナ患者の対応に追われたのでした。そしてその1週間後あたりから保健所から連絡が途絶えた自宅療養患者からSOSの嵐が吹き荒れたのですが、、その時にはそんなことは知る由もありませんでした。

 田先生から、子供が落ち着いてから、ということで夜遅くからのスタート。スマホをつないでインタビュー開始。スマホとは思えない画質と音質。まあ、ここまでの3本でだいたいの道筋はついているので僕のほうはリラックスしてスタート。

まずは恒例の定型質問。

田さんの、好きな言葉は「大丈夫」

ちなみにこの時点ではことしのスワローズ「絶対大丈夫」という言葉は生まれてませんでした…

 やはりお話しの中では、はじめっから家庭医療をやろうと目指し、迷いもなくすすみ現在に至るまでのゆらぎのない道筋をたんたんとお話ししてくださいます。

 そうはいっても、いろいろ揺らいだり、つらいこともあったのでは?と思って、いろいろな方面から質問を繰りだしますが、ナチュラルでしなやかな田さんはまったくぶれるところがありません。目指す自分の姿みたいなものを追っかけすぎたり、理想の像と現実の立ち位置とのギャップでいつもゆらゆらする自分とは対極の位置にいます。「なりたい自分ってあるのかなあ」とにこやかに語る田さん。これ、本人のナチュラルなキャラなのか、それともそういうふうに意識してなっているのか。どう考えても前者… でも、田さんの医師であるおばあちゃんは実はすごいひとだったようで、どうもそういう姿を目にして何かが影響しているのかな・・・とも思いました。すっかり途中からは負け戦の雰囲気。コテンパン感が出てきたところで最後に僕への質問へと移りました。

 田さんから来た質問は「好きな女性のタイプ」と「いいところで仕事をすること」について。予想外のところからの質問がきたのでかなり戸惑いましたが、まあ、僕が出した答えは、つまるところ自分に欠落しているものを意識すること、そして自分は気が付いていない自分の特徴というか特質を理解すること、でした。まあ、そういうことって大切なんだな。

 もちろん、自分という人間が生きていく以上は、他人の目を通じた自分自身を保たないといけないのだと思います。他者からの評価にとらわれてしまうと、本当に苦しくなってしまうので、なるべくそうしないようにするのですが、まったく人の目を気にしない人もやっぱりどうかと思うし。正解はその中間にあるのでしょう。

 人からどう見られるか、よりも自分にとって自分はどういう人なのかを考える。自分が好きでも嫌いでも、どっちでもいいのですが、とにかく自分にとらわれすぎるといろいろうまくいかない。マインドフルネスじゃないけれど、今、ここを大切に過ごすこと。「仕事が終わって、保育園に子供を迎えに行く時が充実している時」、っていう田さんの言葉はそんなことを表している。まあ、あとから考えないと、わからないことも多いので、その場でできることに集中せざるを得ないんですが。未来のことを考えると不安になります。過去にとらわれすぎると息苦しくなります。なので、力を入れすぎず、呼吸を深くして。

改めて、時間というものにはけして逆らえない、ってことですね。

そして、重力にも決して勝てない。自然の力には逆らえません。

 11月いっぱいで秋季セミナーのオンデマンド配信も終わり、長くつづいた秋季セミナーの仕事は全部終わり。コロナ禍の中でいろいろ振り回されながらも、結局僕は何が言いたかったのでしょう。
 それは、いろいろ大変だけれど、まあ振り返ってみると、今、ここの自分をちゃんとやっていればみんな大丈夫だよ、っていうこと。なんだかんだいってもあとから振り返らないとわからないことも多いし。心配してたって始まらない。今のことしか僕らには見えないのだから。とにかく少しずつでも前に進んでいきましょう。そのうちなんとかなる、と思う、っていうこと。

 さて動画シリーズはこれで終わり。

 そんなこんなしているうちに、基本研修ハンドブックの改訂第三版ができあがりました。発売は2021年12月15日。

序文から。

 「しかし,私たちは時間を制御することはできない.時間を止めることも,時間を進めることも,そして時間を追い抜くこともできない.唯一できることは,明日を見据え,自らの思考を変え,これからの行動を変えることである。」

これで僕のちょっと大きめな仕事も、ひと段落。

スワローズも日本一に。

さて次のステップに。絶対大丈夫。ふふ。

(と言いながらいよいよ年末モードへ突入…まだまだこのノートは続きます)










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