企業の科学 4.PMF(Product Market Fit)

4-1 ユーザー実験の準備をする

リーン・スタートアップをより実践的にする
MVP(Minimum Viable Product, 必要最小限の機能を持ったプロダクト)を市場に投入(ローンチ)して、実際のカスタマーの反応を見る。
余計な造り込みを避け、リソースを最大限有効活用することは重要だが、MVPであってもユーザーに対して競合にはない桁違いな価値提案を一つすることを忘れてはいけない。

MVP作成におけるNG
①カスタマーニーズの情婦を全て集めようとする。
②人力でできる機能を自動化してしまう。
③カスタマーが欲しがる全ての機能を盛り込む。
④製品開発の担当者に詳細な仕様書を渡す。
MVPの種類
①ランディングページMVP
②オーディエンス開発型MVP
カスタマー基盤の掘り起こしやコミュニティー育成にフォーカスしたMVP。
③コンシェルジュMVP
創業メンバー自らホテルのコンシェルジュのようになんでもこなすMVP。
④動画MVP
動画を活用してユーザーがプロダクトに興味を示すかを検証するMVP。
⑤ピースミールMVP
ピースミール:断片。アプリなどのプロダクトを一から作るのではなく、既存の複数のプラットフォームを組み合わせ、あたかも一つのプロダクトのように動作させる手法。
⑥ツールMVP
MVPを作るときは同時にそのプロダクトに対してカスタマーがお金を払いたいと思うだけの魅力があるMSP(Minimum Sellable Product:販売可能な最小限の製品)であるべき。

4-2 MVPを構築する

スプリントキャンバスを使う
MVpを作り、チーム内で学びを最大化するために「スプリントキャンバス」と「スプリントカンバンボード」を使う。
スプリントとは、あらかじめ定めた短い期間の事で、その短期間の間に開発を繰り返して、改善を続けるソフト。開発の手法。
MVPの目的はユーザーの反応を知る実験であり、その実験の成果を測る指標はチーム内でどれくらい学びを蓄積できたかである。
スプリントキャンバスに記録する項目
1段目:実験したい事
2段目:検証するためのストーリー
3段目:機能実現・実装にかかるコスト・時間
4段目:実際にMVPを投入した時の定性的・定量的な結果
5段目:1回目のスプリントを通じて得た学び
6段目:それらを踏まえて次回以降のスプリントで学習したい事

スプリントカンバンボードを使う
使うメリット①
学びやプロセスが明確になり、メンバー同士のコミュニケーションが活性化する。
使うメリット②
定性的な検証と定量的な検証を行うことをプロセスに組み込むことで、学習する機会を担保できる。
使うメリット③
ボトルネック・非ボトルネックがどこか一目でわかるので、人や時間なでのリソースを適切に配分できる。
ユーザーストーリーを考える時は次のフォーマットを活用すると良い。
<ユーザー>は<ゴール・課題>を実現したい・解決したい。なぜなら<理由>だからだ。そのために<フィーチャー>を実装する。

4-3 MVPの評価を計測する

スプリントの繰り返しで評価を測定
PMF達成前のスタートアップにとって売上高や利益率のような指標は重要ではない。「プロダクトがカスタマーに愛されているかどうか?」がPMF達成前の重要な指標。カスタマーと直接話して、どんな状態ならば「プロダクトに熱狂している状態」なのか定性的に理解し、それを定量的に分析して具体的な指標がどんな値になっていることがPMF達成に当たるのかを把握することが、MVPの効果計測にとって重要。
定量分析の定番であるAARRR指標を活用する。
Acquisition(獲得)
ユーザープロダクトのランディングページなどを訪れる、アプリをダウンロードするなど
Activation(使用開始)
アプリを立ち上げる、アカウントを作成するなど
Retention(継続利用)
再訪問、再利用
Referral(他のカスタマーの紹介)
SNSでシェアするなど
Revenue(売り上げ、コンバージョン)
課金、有料会員の契約をするなど
MVPを検証するステージでスタートアップがフォーカスすべきは5つの指標の内、Activtion・Retention・Revenueの三つ。最初の体験でいかにユーザーを活性化させ、満足してもらい、継続利用に繋げ、有料プロダクトを購入してもらう。上記の三つの指標は、「使ってみたい」「もっと使いたい」「お金を払ってでも使いたい」と考えるユーザーの数を知ることができるため、プロダクトへの愛着度・熱狂度を測る指標として認識できる。
AARRR指標は穴の空いたバケツなどにも例えられる。MVPの検証によりPMFに近づく活動は、カスタマーの行動を確かめ、直接その理由を聞いたりすることで、バケツ穴を探り当て、それを一つずつ塞いでいくことに当たる。PMFとはバケツの穴がほとんど塞がり、最初に獲得したユーザーを熱狂させ続けて定着させ続けられる状態のこと。

PMFは達成できたか?
達成できたかどうかを判断するための材料は大きく三つの条件がある。
①ユーザーの高いリテンション(定着率)を保てているか?
②カスタマー獲得から売り上げを獲得するまでの流れは確立できているのか?(レベニューを得るまでの流れを言語化・仕組み化できているか?)
③リーンキャンバスの項目全体をみて成立しているか?

4-4 UXを磨きこむ

UX定着モデルを理解する
UXは時間軸に沿って、利用前UX(プロダクトへの期待を盛り上げる)・利用中UX(実際にプロダクトを使用している最中)・利用後UX(再び使ってもらえるように盛り上げる)の三つから成り立っている。忘れてはいけないのが、利用全体をとして感じる「累積的UX」。
利用前UX
①プロダクトを最初に見たときに使いたいと思わせることが重要。
利用中UX
②利用前の印象通りにわかりやすいプロダクトだと感じさせる
③プロダクトを使うためのストレスを軽減してもっと使いたいと感じさせる。
④ユーザーを目標達成へと導く。
利用後UX
⑤ユーザーをフォロー。
⑥再利用するきっかけを作る。
累積的UX
⑦プロダクトの熟達を促す。
⑧リソースを凍死させること。(例えば、SNSのアプリでフォロワーや友達を増やすために投資した時間がもったいないと感じさせること。)
⑨ユーザーへの報酬。(例えば、オークションサイトなどで出品者としての評価が段階的に上がるといった仕組み。)
⑩「安心・安全」は言葉通りプロダクトを吐き続けたときに安心・安全が確保されているかと感じさせること。
使用時のユーザー負担を軽減する(③)
使い続けてもらうためにはユーザーストレスを減らすことが欠かせない。
・時間的ストレス
・身体的ストレス:AmazonEchoやGoogleHomeはキーボード操作や画面タップのストレスを軽減した。
・脳のストレス:レコメンデーション機能。
・お金のストレス:利用コスト。
・社会的承認のストレス:周囲からの評価。いくら便利なアプリでもデザインが堅苦しければティーンは「これを使っているとクールじゃないと思われてしまう!」と不安を抱く。

4-7 ピボットを検討する

ピボットするか辛抱するか
ピボットを実施するか否かの判断をするための主な指標。
①プロダクトスプリントを回してUXを改善しても、ユーザー定着率が伸びない。
②ユーザー定着率は伸びているが、今の成長ペースでは市場で支配的なポジションにつけない。
③受けている投資額の5〜10倍のリターンを生み出せる見通しが立たない。

ピボットの種類とインパクト
PSF(Customer Problem Fit)の段階に戻るピボット
・カスタマーセグメントピボット(想定顧客の変更)
・カスタマーニーズピボット(想定課題の変更)
・事業構造ピボット(BtoBからBtoCなど)
PSF(Problem Solution Fit)の段階に戻るピボット
・ズームインピボット(プロダクトの一部を抜き出して集中する)
・ズームアウトピボット(限定的だったプロダクトのスコープを広げる)
・プラットフォームピボット(アプリケーションからプラットフォーム運営への変更)
PMFステージにとどまるピボット
・チャネルピボット(販売・流通チャネルの変更)

残り何回ピボットできるのか
Burn Out:資金が子かうしてしまうこと。
Runway:BurnOut するまでの期間
PMFを達成する前にスタートアップの創業者が注目すべき財政指標
①Burn Rate:現金がなくなる早さ)
②いつBurnOutするのか?
③BurnOutするまでに何回ピボットできるのか?

よくありがちなダメなピボット
・エンジニア不足で行うピボット
・カスタマーの声とは無関係にピボット
・検証結果に寄らない主観的なピボット
・やりきっていないピボット

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