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YOSSY劇場 ~スゴい列伝~ 「アラル海」

知らなかったことを知ることは楽しい。

「こいつはスゴい!」と思うようなことは、人にも伝えたくなる。

人でも、生き物でも、モノでも、なんでも。

このコンテンツは、そういうスゴい奴らの魅力を紹介していくシリーズである。

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アラル海
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◼️カスピ海、アラル海は湖


日本一大きな湖は…琵琶湖。

世界一大きな湖は…カスピ海。


海なのに湖?


カスピ海はめちゃくちゃ大きくて、その総面積は日本の国土面積とほぼ同一。昔は地中海や黒海ともつながってたようだ。その頃は海だったんだろうけど、内陸に切り離されて湖になったということらしい。


でも海なのか湖なのかによって適用される法律が違う。で、ややこしいんだが2018年には海として扱う協定が結ばれたと。なので湖でも海でもあるということになる。だからまあ、カスピ海っていう名前は合ってるんだろう。


さて、アラル海。

子供の頃に教わった記憶では、世界4位の面積を誇るという話だったので、これもまあ海って名前がついてていいのだろうけど…



◼️アラル海、劇的に縮んでいた



あれ…?


なんじゃ、こりゃ!細っ!


丸かったはずのアラル海が!



Wikipediaより

アラル海は1960年代までは日本の東北地方とほぼ同じ大きさの湖沼面積を誇る世界第4位の湖(約66000〜68000平方キロメートル)だったが、半世紀で約5分の1に縮小した。


いや、今はもう5分の1もなさそうだ。


この細い部分(皮肉にも大アラル海と呼ばれてた)は、現在は3つに分かれてるが、2020年中にも干上がってしまうという説もあり、「20世紀最大の環境破壊」という異名も取っていたのだ。


スゴい、というよりひどい話なのであるが、人間の行動の影響によって、地形レベルでこれほどまで大きな変化が発生する、というのが衝撃的だった。



◼️深刻な被害


大アラル海の水の量は2011年時点で1960年のわずか6%。今はもっと減ってるだろう。


当然ながら塩分濃度は急上昇。海水より濃くなったのが1993年で、2000年には海水の2倍となり、塩分に強いはずのカレイですら死滅して漁業が不可能になった。魚の方もたまったものではない。


干上がって島はつながり、生態系は破壊され、多くの生物が死滅し、漁業・魚肉加工業・毛皮産業が衰退。


9割の漁民が他地域に移住・転廃業して、いくつもの村が廃村に。


さらに追い討ちをかけるように、干上がった湖底から砂嵐が舞い上がり、塩害により住民の健康被害や植生の破壊を引き起こすに至る。これはひどい。地図で見ても、干上がってる部分は明らかに白く、大量の塩にまみれていることが容易に想像できる。



◼️なぜこんなことに?


この急激な変化の大きな原因は旧ソ連による無謀な計画によるものといえるようだ。

その結果、1960年代には年平均20cm、1970年代には年平均60cmと猛烈なペースで水面が低下し、急激に縮小をはじめた。一晩で数十メートルも湖岸線が遠のいていくため、退避しそこなってその場に打ち捨てられた船の群れが後に「船の墓場」として有名になってしまった。


アラル海がまだ豊かな水をたたえていた頃、ここは中央アジアの中のオアシス的存在であったようだ。湖があることで気温・湿度が一定の環境に保たれ、動植物が多様に存在していた。しかし湖が干上がることにより雨は降らなくなり、気温の上下も激しくなる。それにより周辺の緑が枯れ、風食作用により表層土も失われ、湖ともども砂漠化の進行を加速化するという悪循環になってしまった。


小アラル海においては様々な対策が実を結び、改善もみられているようだが、大アラル海については各国の利害が一致しないなどもあり、効果的な復旧への目処は立っていない。



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