HBAセプテンバーセール2019 - 雑感 -
今年から新設されたHBAセプテンバーセール。
その開催目的は「サマーセールにおける過密頭数軽減と、長期日程(5日間開催)の緩和」「消費増税対策」であり、「主催者と購買者双方にメリットのあるセールを目指す」との事なのですが、今回はこの新設セールに参加しての雑感と「いかに日高におけるサラブレッドのセールが都会で仕事をしている人達の目に非常識なものであると映るか」についても少し述べたいと思います。
まず、単純なところで主催者の職員、またコンサイナーや牧場の人たちは、9時-17時で仕事が終わっている、もしくは数人でシフト制を組んでいるようには見えないのですが、彼らは残業代をちゃんともらえているのかという疑問。
朝の8時から展示が始まって、セールが終わるのが19時半前後。馬を馬運車に積んで持ってくる、持って帰る時間を考えると、おそらくは朝5時から夜21時ぐらいまでは働いていると思われます。家族経営で従業員が全員家族であっても給与体系は別、ましてやサラリーを貰っているだけの従業員にとっては、「そんな当たり前のようにこき使われても」という話なのではないかと想像します。
こんな状態で「サマーセールの5日間はしんどい」って、しんどいのは長時間働いているからであって、別に日程のせいではありません。世の中にいる勤労者のほとんどは週休2日で、週に5日ぐらいは働いているものです。
一方、購買者側から見ると、今回のセプテンバーセールのように一日あたりの上場頭数が減っても、展示の時間を8時半からと30分遅らせたせいで、1回あたりの展示時間も展示頭数もサマーセールと大して変わりません。別にゆっくり馬を見る事ができるわけではないし、見直しの時間を多く取れるわけでもない。つまり、サマーセールと何も変わりません。
結論としては「一日あたりの上場頭数を減らして、売る側の労働時間を減らし、展示時間を長くする」しか、主催者と購買者の双方にメリットは発生しないと思われます。
次に、選抜されていない選抜セールについて。
私は普段神戸に住んでいる人間で、馬産地事情に通じているわけではないのですが、ぶっちゃけ、あれって全く選抜されてないですよね? 普通海外の選抜セールだと、セリ会社の人が何度も牧場に通って、上場馬の評価付けを行い、キーンランドだと「その馬はブック3ね」とか、基本的なランクの決定を行うのですが、農協がそんな事をやっているなんて聞いた事ありませんし。
多分、新冠地区とか静内地区などの地区ごとか、牧場ごとに上場枠が決まっていて、その枠の中で出来レースが行われているだけじゃないのかと想像します。そうなると、上場手数料とか主取り手数料なんてよく取ってるなという話にもなるのではないでしょうか。全然手間がかかってないのに、手数料だけは海外の競り会社のように頂戴しますなんて、ボロ儲けじゃないですか(笑)。
また、そんな事をしていると、小さな牧場から良駒が産まれても、ろくに評価されずにサマーセールに出さざるを得なくなってしまうという切実なマイナス面も当然発生してしまいます。
更に言うと、セプテンバーセールを見ればわかりますが、2000万円の馬もいれば100万円の馬もいるなんてセールは、購買者側からすると迷惑な話です。中央の大手馬主さんにとっては100万円の馬なんてどうでもいいでしょうし、地方の調教師さんにとっては2000万円の馬なんて見せられても、そんなのを買ってもらえるわけないのですから。
つまり、「ある程度は馬の質に関する評価を事前に行って、良い馬から順番に出すという世界中のどこの競走馬セール会社でも行っている当たり前の事をちゃんとやれ」という話にしかなりえません。
そうすれば、セレクションセールを二日開催にも出来るでしょうし、サマーセールを3日、セプテンバーセールを3日にしても、購買者側がどのセールに参加するかを自分の都合で決定できますので、購買者にもメリットが発生するでしょう。
今のままだと、結局全部のセールに参加しないといけないので、地元のプロ連中にはいいのでしょうけど、道営以外の地方の調教師や道外に住んでいる個人の馬主にとっては、何度も静内に来いと言われても「それは無理ですわ」というのが正直なところだと思います。
実は、私は今回久しぶりに1日に1本だけある道南バスで新千歳空港から静内まで移動したのですが(帰りは送迎バス)、「電車が通ってないなんて、そんなとこに人が住んでいるのか」というのが都会に住んでいる一般人の感覚だと思いますよ。電車って、通勤時間帯だと3分おきにくるものですから。
数百万円、数千万円の買い物をするお客さんに「7月、8月、9月、10月と静内まで来いってのは無理筋だ」という事を少しは考慮にいれて欲しいものです。
あと最後の手段としては、このセプテンバーセールとオータムセールに関しては、展示がない日を設けるという手。これなら一日あたりに300頭の上場頭数がいてもいいでしょう。
あのチンチクリンの牝馬達ね。あれは展示している側にとっても、針の筵なのではないかと・・・。私たちも自家生産で似たようなちっさい牝馬を多く生産してきてますので、その絶望感はよく分かるつもりです。
展示で一目見てスルーされるよりも、馬房まで見にきてくれた客に「この馬はまだ小さいけど、兄弟はここからでも大きくなったのもいる」とか、いくらかのセールストークが出来る機会を設けた方がまだ幾分有意義ではないかと思います。
「御代は低くしてますので、興味がある方は見にきてください」で、もういいと思いますよ。生産者の方々も馬を見れないわけではないですし、客側もそんなに甘くはないので、そこはもう粛々と互いに空気を読めばいいのではないですかね。
オプションとしては、100馬房ぐらいは翌日に上場される馬達をいれる馬房を確保すること。これがあると、競りがはじまって自分の狙い馬が出てくるまでの時間を翌日の下見に充てる事が可能になります。
一日あたりの上場頭数を150頭にして展示もするし、翌日の下見分が150頭セール会場にいるでもいいかもしれません。これは良質馬がそろっている選抜市場向けのシステムになりますけどね。
というわけで、だらだらと長文になりましたが、セプテンバーセールに関していうと、今のままでは少なくとも購買者側には何のメリットもありません。強いていうなら、サマーセールよりも涼しくて過ごしやすいという事ぐらいです。
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