【エフェクター編】コンプレッサー
ミックスダウンからマスタリング、ギターやベースまで、よく使われるコンプレッサーについて理解を深めることで、デジタルレコーディングにおける正しい使い方も見えてきます。
なぜ必要なのか
レコーディング編やミックスダウン編でも度々書いているとおり、アナログ時代のレコーディングでは、予測できない音量の変化への対応や、記録できないフェーダーコントロールの再現性の担保にコンプレッサーは大いに役立ちました。予測できない音量の変化を安定させるという点では、現在でもライブPAでコンプレッサーは活躍しています。
デジタルレコーディングが大半を占める現代では、コンプレッサーの存在意義は「効率化」以外は存在しません。ドラムのミックスダウン編で解説したとおり、毎回同じ音がする場合において、同じようなフェーダーオートメーションを書くよりコンプレッサーの使用のほうが効率が良いから使うだけです。
各パラメータの役割
効率化のためにコンプレッサーを使う場合においても、各パラメータの役割は理解しておく必要があります。代表的なパラメータを見てみましょう。
スレッショルド(dB)
この値を超えた時にコンプレッサーが動作します。超えなければ原音のまま出力されます。
アタック(ms)
スレッショルドで設定された値を超えても、アタックで設定された時間はコンプレッサーが動作しません。音量を安定させる目的で使う場合は、最短に設定すべきであり、より短い値が設定できるものが高性能なコンプレッサーと言えます。
リリース(ms)
メーカーによって動作が違う場合もありますが、基本的には、スレッショルド以下になったら、リリースで設定された時間をかけてコンプレッサーの動作を停止します。最大1000msもあれば充分です。
レシオ(X:1)
コンプレッサー動作時に、入力された信号を何分の一にするかという設定です。1:1は当然ながら原音が出力されます。インフィニティに設定できるものもあり、それはコンプレッサーではなくリミッターとして動作します。
通すだけで音が良くなる?
という触れ込みで販売されているコンプレッサーもたまに見かけます。破壊する道具なのに音が良くなるはずがありません。もしそのように感じたとしてもそれは幻聴です。内部で訳の分からないイコライジングなどを行い、出力を派手に演出することによって、そのような錯覚を起こさせているだけです。もし通すだけで音が良くなるコンプレッサーが存在するのであれば、そのコンプレッサーをCPUが許す限り何十、何百と通せばもっと良くなるはずです。そんなことが起こらないことは考えなくても理解できますね。
コンプレッサーは必要悪
少なくとも、コンプレッサーは音を良くする道具ではありません。音量を安定させたり、アタック音を弱めるために原音を破壊する道具です。必要もないのにコンプレッサーを乱用することは音質の劣化を容易に招きます。目的に応じて必要最低限の使用を心掛けましょう。
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