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長期間海上を自律航行して海洋データを収集するロボット「Saildrone Explorer」

 最近宇宙ビジネスが活発になってきていますが、地球上でも様々な開発が進んでいます。例えば地球の 7割を占める海洋ですが、人が日常的に住めないこともありまだ知られていないことが数多く存在します。そんな海洋ビジネスに取り組んでいるのがシリコンバレー北東部のオークランド市に 2012年に設立されたスタートアップ Saildrone社。Saildrone社は自律航行するドローン船「Saildrone Explorer」の開発・運用を行っており、昨年はアメリカ海洋大気庁(NOAA) とのプロジェクトで初めてハリケーンの中心近くの様子の映像取得に成功しています。風速54メートル、波高15m という激しい嵐のハリケーン内部を海上から捉えた映像は SF映画の映像をもしのぐ迫力です。Saildrone Explorer は何か月も海上を自律航行し、様々な海洋データを収集、マッピングし、さらに船下にもセンサーを搭載することで海底の情報も収集することが可能です。

陸揚げされた Saildrone Explorer. Credit: The New York Times.

 Saildrone社が開発する「Saildrone Explorer」はご覧の通り全長 23フィート(7m) の小型ヨットのような形をしていて、Saildrone Explorer の原理はヨットと共通しています。カーボンファイバー製のセイル(帆状のもの) は飛行機の翼のような役割を果たし、常に風に対して効率よく角度を保つよう自動的にセイルの角度を補正して推進力を生み出します。船体下のラダーによって進む方向を自動制御し、船体が安定して推進できるよう船下にはヨットのようにキールも持っています。またセイルや船体には太陽電池パネルを搭載し、エネルギーを蓄えることで何カ月も海上を自律運航することが可能です。Saildrone Explorer は陸地のオペレーションセンターと通信衛星を通じて情報を送受信し、海洋データの収集や魚類資源及び環境のモニタリングなどを行います。すでに 80万kmを超える航行実績を持つ Saildrone Explorer は現在海洋情報収集サービスを $2,500/日で提供しており、主に海洋調査に活用されています。
 ファウンダーのリチャード ジェンキンス氏 (Richard Jenkins) はインペリアル ・カレッジ・ロンドンでメカニカル エンジニアリングを学び、大学在学中から「WindJet」Project を立ち上げるなど、ヨットのように風を活用したプロジェクトに携わってきています。2010年台初頭にシリコンバレーに移り Saildrone プロジェクトを立ち上げています。ジェンキンス氏は、地球温暖化の影響を理解するためには科学的なデータが不可欠と考えており、数千、数万もの Saildrone Explorer のような自律航行船によるセンサー網を海洋に張り巡らせる必要があると考えているようです。

 海洋調査だけでなく、今後は気象情報や船舶向けの情報インフラとしても今後の展開が魅力的な Saildrone社。機会があればぜひ訪問してみたいと思っています。

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