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40代はじめての起業。 創業2年間の3つの学び。

こんにちは。長谷川 晋です。

2021年8月でMOON-Xを創業してから2年が経ちました。振り返って見ると、本当にいろんな経験をした、めちゃくちゃ密度の濃い2年間でした。

そもそも私が起業しようと心に決めた理由の1つは、「おっさんでも挑戦できる!」というのを証明したいという想いです。起業 = 若い世代という固定概念があるように思いますが(もちろん、若い世代が起業するのは素晴らしいことです!)、経験を積んだおっさんでもチャレンジ出来ることを自らの人生を通じて証明してみたいと思いました。

私自身、起業する前にサラリーマンとして約20年間様々な経験をしてきました。営業・マーケティング / 外資系企業・日系企業 / メーカー・IT。業種や役職なども幅広く経験してきた自負があったので、起業してからも苦労はしつつ、それなりに戦える部分もあるのではないかと思っていました。その通りだったのが半分、でも残りの半分は甘くありませんでした

2021年9月。多くの方のサポートのおかげでMOON-Xも3年目に突入することが出来ました。起業して2年間で数えきれないほどの学びがありますが、その中でも特に大きかった3つの学びを紹介します。この学びが、いつか自分のビジネスを始めたいと考えている方々、仕事で日々奮闘されている方々、または(仕事以外も含めて)自分で決めたチャレンジに取り組んでいる皆様にとって少しでもお役に立てば嬉しい限りです。

学び#1|「ストレートファイト」(直球勝負)よりも「ストリートファイト」

スタートアップは資金や人のリソースが限られているので、大企業のような戦い方をしても勝てません。スタートアップと大企業で直球勝負の力比べをしたら負けるに決まってます。リソースがないからこその勝ち方があると学びました。

とくかくリソースが限られています。大企業に勤めていたサラリーマン時代にリソースが足りないと嘆いていた自分を叱ってやりたいくらい、スタートアップはリソースがないだからこそ、手元にある使えるもの、武器になり得るものを、その時々で柔軟に使う、ストリートファイト的な戦い方以外にないと思います

例えば、組織が小さい(=人的なリソースが限定的)のは一見不利なように思えます。一方で見方を変えると、組織が小さい = 軽いということは、実行のスピードや変化への柔軟な対応という点では有利だという面もあります。であれば、どこよりもデジタルネイティブな世界への対応や、コロナによる消費者の生活やニーズの変化を素早く捉えて実行に移すことで、勝機があると言うことです。特にスピードは常に活用すべき数少ない武器なので、うちの会社ではコーポレート文化の1つ目に「スピード狂」を掲げて、自分たちに言い聞かせ続けています。私とオンラインで打ち合わせをした方はご存知ですが、ZOOMの背景も「スピード狂」です。

また、ブランドや製品のポジショニングを考える時はニッチでも自社が勝てる可能性のあるエリアを選んだり、販売チャネルを絞り込み、そこで勝つための分析や検証を重ねようなアプローチも実施しています。領域を絞ることで規模が限定的になると心配する方もいると思いますが、それはまさに大企業の心配事です。まずは局所戦で勝つこと、これがストリートファイトでは重要だと思います。

ストリートファイトにおける個人的重要ポイント

- 組織の小さいことは、実行スピードにこだわれば武器になる。
- まずは局所戦で勝つことが重要。

学び#2|「Cash is King」は金言、「Cashflow is Queen」も名言

もちろん経理の仕組みも全くないところからスタートでした。支払いも自分で銀行のATMに行って振り込み、月末に通帳残高を確認するような形で行っていました。

実際に自分の会社をやってみて、ビジネスをやるには予想外にお金がかかるというのが正直な感想です。製造コストや人件費、広告費だけでなく、各種税金や保険料、家賃など。1つ1つの出費はちゃんと見てチェックしていても、それらを合計するとそれなりのコストになり、毎月残高が減っていく。。。これは、今まで感じてことのない恐怖でした。サラリーマン時代もPL責任を負っていたのでコスト感覚は大事にしていたつもりでしたが、自分でビジネスとは緊張感の次元が異なりました

こういった経験から、改めて「Cash is King」は金言、「Cash Flow is Queen」は名言だな、と実感しています。Cashがあれば会社が潰れることはない。逆にCashが回らなければ、いくら健全に見えても会社は潰れてしまう。この当たり前のことを、初めて手触り感のある形で理解しました。だからこそ、支払いと入金のサイクルにもこだわるようになりました。売上があっても、Cashが入ってくる前に費用の支払いが来るとCashがどんどん減ります。逆に売上の入金よりも支払いが後だと、余裕が生まれ、成長に再投資することもできます。基本中の基本だと思いますが、支払いサイクルの最適化は粘り強くできることを模索し続けています

また、MOON-Xで挑戦しているクラウドファンディングはCashの観点からも大きな魅力があります。通常のプロセスだと、商品・サービスを作り、かつお客様を見つけるためのマーケティング費用でお金が先に出ていき、売れて初めてお金が入るという流れです。つまり、Cashが先に出ていってしまいます。クラウドファンディングの場合、これが逆です。応援してくれる方いればCashが先に入る、しかも応援してくれた方がブランドの最初のお客さんになってくれるので初期のマーケティング費用も抑えられます。まさにCashが生命線のスタートアップにとって、クラウドファンディングは素晴らしい仕組みなのです。

Cashにおける個人的重要ポイント

- 支払いサイクルの最適化に粘り強く取り組む。
- クラウドファンディングはスタートアップとの相性抜群。

学び#3|資本政策は「後戻りできない」だけでなく「正解もない」

そもそも会社を起こすということが初体験だったので、何をすれば良いか手探りの状態からスタートしました。定款に何を書くべきなの?資本金っていくらにするべき?発行株数ってどれくらいが妥当?などなど。恥ずかしながら正直わからないことだらけでした。

そこで起業家・専門家・投資家の方々に色々お会いしてお話を聞いたのですが、領域によっては人によってアドバイスが千差万別なんですね。どのアドバイスも一理あるため、どうしたらいいか迷いましたが、やっぱり最終的には自分がどうしたいのかという想いが重要だなと感じました。

例えば、資金調達に関して。少しずつ着実に資金を調達していった方がお勧めだというアドバイスが多かったと記憶しています。小さい成功を積み重ね実績を作って、大きな資金調達をするという王道の方法です。ただ、私はある程度最初から「こういう勝負をしたい。そのために、これくらいの金額をこう使いたい。」という意思があったので、ある程度まとまった資金を投資してくれる可能性のあるVCに相談し、そのVCの「応援してやろう!」という気概にも助けていただいて最初のラウンドとしては大きめの調達をしました。

また、株についても、目先のことだけでなく将来を見据えた上で、誰にどれくらい株を持ってもらうべきか?株価はいくらにするべきか?ということを初めて考えるようになりました。よく「資本政策は後戻りできない」と言われる通り、株は一度持っていただくと、会社のオーナーとしてその関係はずっと続きます。その時にベストだと思った資本政策も、会社のフェーズが変わると後悔することもよくあるそうです。幸いなことに今株主になっていただいている方々は本当に力強くサポートしていただいているので後悔は全くないのですが、色々と分からない、正解もない、でも後戻りできないというヒリヒリするような状況で今も向き合っています。

正直、サラリーマン時代は自社の株価が上がれば嬉しいという感じだけでしたが、経営者になることで会社の株の捉え方が大きく変わりました。恥ずかしながら、40歳を超えて、はじめて自分自身がずっと所属していたはずの「株式会社」というものの根本的な仕組みを理解できた気がします。

資本政策における個人的重要ポイント

- 正解はない。最終的には「どうしたいのか?」という意志が重要。
- 後戻りできない。しっかり考えることが何よりも重要。

おまけ|サラリーマン時代に身に付けて良かったスキル

ここまで起業してからの学びをお伝えしてきましたが、サラリーマン時代に身に付けたスキルが起業後も役立ったことも沢山あります。ですので、最後にサラリーマン時代に身に付けておいて良かったスキルも合わせて紹介します。ご紹介するスキルは特定の会社だから得られたものではなく、どんな職業・環境に属していても本人次第で身に付けられます。

■ 営業職で身に付けた「対話力」
私のファーストキャリアは東京海上の営業職に新卒で入社しました。お客様は全員自分より年上で、経験も豊富な方々ばかりでした。そんな中で、20代前半の若造が信頼できるパートナーだと思ってもらうために失敗しながらもチャレンジした結果、ビジネスマンとしての「対話力」の基礎を習得することができたと今振り返ると感じます。

- クライアントのビジネスに関して事前にできる限り調べ、ビジネス課題の仮説を持つ。
- 一方的に売り込むのだけでなく、相手にしゃべってもらうことを意識する。
- ビジネスの話だけでなく、場を和ませるためのアイスブレイクのネタも用意する。
- 会社の看板ではなく、人として信頼を得ることで本音で相談をしてもらえるようにする、などなど。

上記のような試行錯誤をすることで、その後のキャリアに活きる対話力を培うことができたと思います。

■ 「マーケティング」的フレームワーク
これはP&Gでマーケティングをやっていた時に学びました。色々なフレームワークが存在するのですが、起業後でも大いに役立っているの「WHO - WHAT - HOW」です。

P&Gではマーケティング戦略・プランを作り出すときに、「WHO - WHAT - HOW」のフレームワークを使います。これは物凄くシンプルな考え方なのですが、だからこそ真理をついているし、汎用性が高いのだと思います。要は、誰に、何を、どうやって伝える / 売るかということです。このシンプルなフレームワークは、どんな職業でも役に立ちます。いかなる仕事でも、お客様(WHO)がいて、購入いただきたい商品・サービス(WHAT)があり、それを魅力的に伝える(HOW)必要があるからです。

ポイントはWHO --> WHAT --> HOWの順番で考えること。まずはターゲット消費者の理解を徹底的にし、現状何が満たされていないのか?不満に思っているのかを炙り出します。その上で、それを解決するWHAT(= 商品・サービス、それに付随するコミュニケーション)を考え、最終的にHOW(どうやって伝えるの?売り込むの?)に落とし込みます。

また、WHOとWHATの内容を研ぎ澄ますために、期待するPerception changeを明確にすることも大切です。具体的には、「商品・サービスを知る前の消費者はどういう考え・感情を持っているのか = Pre-perception」「知った結果、どういう考え・感情を持って欲しいのか = Post-perception」を定義する。そしてこのPreとPostのperceptionの架け橋になるのが、まさにWHAT(=商品・サービス、それに付随するコミュニケーション)というわけです。

このPerception changeの考え方は、いわゆるマーケティングプランを作る時だけでなく、プレゼンをする時や組織を動かす時など、人を巻き込む時に役立つ汎用的スキルで、転職 / 起業後も重宝しています。

■ 「正しいKPI」に絞り、「数字で進捗確認」し、前に進める
最後のスキルはサラリーマン生活全般を通じて身に付けましたが、特に楽天時代の経験が大きいです。楽天の時はグループ全体のマーケティングを管掌する役割でした。今までとは責任や組織の大きさが圧倒的に大きくなり、細かいところまで自分が全て把握するのは物理的に不可能な状態でした。

そんな中で、組織を前に進め結果を出していくために、リーダーが出来ることは、正しいKPIを設定し、チームがフォーカスすべきエリアを絞ること。無闇矢鱈に多くのKPIを作るのはやめるべきです。ビジネスを伸ばす上で本当に重要な指標は何かを考え抜き、できる限りフォーカスした上でKPIを決めます。KPIを設定した後は、やりっぱなしにならないように日々数字で進捗を確認し、ゴールに対してギャップがある時は、どう埋めるのかをディスカッションすることで、最終的にビジネスゴールを達成するようにオペレーションしていました。

このスキルも起業後かなり役立っています。特にスタートアップではリソースが限られているので、KPIを研ぎ澄ます(=戦うべきエリアを絞る)ことをしない限りは、決して勝つことが出来ません。その意味でもサラリーマン時代にその練習が出来たと感じています。

楽天時代のエピソードをメインで紹介しましたが、このスキルもどんな職業や役職でも必須です。使えるリソースは限られているので、どこで勝負すべきか、そして勝負すると決めたところで具体的な数的目標を設定し、それを越えるべくプランする。会社員の方も、ぜひ意識的に取り組んで見てください。将来、転職や起業をしても必ず役に立ちます。

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以上が創業2年間の3つの学び(+おまけ)でした。

創業3年目に突入しましたが、MOON-Xのチームのみんな、パートナー企業、顧客・株主の皆様などなど、本当に多くの方に支援のおかげに他なりません。会社のミッションである「共創を通じて次世代のBrandと人材を発射する」を実現し、お世話になった方々に少しでも恩返しができるよう、さらにチャレンジをし続ける所存です。

冒頭にも書きましたが、私が起業した理由の1つが「おっさんでも起業し、挑戦できる!」の証明です。もちろん起業が唯一の正解ではありませんが、このnoteが、多くの方にとって、年齢関係なく自分の夢に向かってチャレンジするためのヒントや勇気を与えられたら心から嬉しいです。

一緒にチャレンジしていきましょう。

Twitterにて、私の幅広い経験を元に、ビジネススキルを上げるための普遍の真理を日々投稿しています。もし宜しければフォローしてください。よろしくお願いします!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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