見出し画像

P&Gで活躍していた人の4つの考え方

こんにちは。長谷川 晋です。

先日、Twitterで「いいね」を多くいただいた直近の4投稿に関して、より詳細を知りたいものを皆さんに投票をしてもらいました。その結果、60%以上の方がP&Gに関することに興味を持っているようなので、今回は「P&Gで活躍していた人が共通して実践していた4つの考え方」について、私なりの見解をnoteを書いていきます。

あくまでも個人的な意見ですが「P&Gで活躍していた人」はどんな状況に置かれても、以下の「4つの質問」を自分自身に、そしてチームにも投げかけ、思考プロセスとして習慣化していたように思います。

質問 #1: What needs to be true?(何があれば成功するのか?)
質問 #2: What is the key issue?(最重要課題は?)
質問 #3: What are the next steps?(今後の段取りは?)
質問 #4: What are key risks & mitigation plans?(リスクと対策は?)

質問 #1: What needs to be true?(何があれば成功するのか?)

文字にすると当たり前に見えますが、この思考が出来るか出来ないかでビジネスの結果は大きく変わってきます。

特にこの思考を持った人と、持ってない人の差が顕著に現れるのは、ビジネスが不調に陥った時です。例えば、今まで好調に推移していたのに、競合の新商品発売されて、自社ブランドのシェアがどんどん下がってきた。こんな時、皆さんはどうしますか?

まずはシェアが下がった原因を深掘りすると思います。競合の商品、コンセプト、マーケティングプラン、配荷率、店頭展開、価格などを包括的に分析するはずで、これは必要なプロセスです。

ポイントは原因分析の後に何を思考するかです。多くの人は、シェアが下がった原因を報告書にまとめ、自社のブランドが勝てない理由を説明し続けます。「競合のテレビ出稿量は自社の1.5倍です」「競合は自社の2倍近く店頭販促スペースを取っています」などなど。そして最悪の場合、マーケティング部は営業部のせいにして、営業部はマーケティング部のせいにするといった社内部署間での責任のなすり付け合いが始ります。

では、活躍している人は何をするかというと、原因を分析した上で「何があればシェアを奪い返せるか」を提案するのです。「競合のテレビ出稿量は自社の1.5倍です。競合と同レベルのリーチを最速で達成するためには予算はXXX円必要で、メディアプランとしてはテレビとソーシャルメディアをメインで考えています。かつ競合の新コンセプトに対抗するために今のクリエイティブを調整する必要があるので、そのためのリソースとしてXXXが必要です。」

このように「成功するためには何が必要なのか」という思考で提案をしています。より上のレベルを目指すのであれば、成功するための選択肢・オプションを、それぞれのメリット & デメリットと共に整理し、自分・チームのレコを伝えた上で、決裁者に意思決定させるという流れに出来るのがベストです。

これも個人的な見解ですが、この思考が出来ている日本人は正直少ないかもしれないという印象です。どうしても出来ない理由、つまり言い訳ばかりを並べて、その先を考えていない。誰かが「こんなことしたらどう?」と言うものなら、「無理だよ、だって競合の店頭あんなに凄いんだよ。何をやってもダメだって」のように決めつけています。同時に、実践している人が少ないのであれば、これを意識するだけで大きな差をつけることができるということでもあると思います。

この思考を身につけるコツは、実現可能性を一旦無視して、何があれば成功できるか、関係部署を集めてチームで話し合うことです。ビジネスが落ちている時は、どうしても弱気になりがちでアイディアが出づらいので、意図的に最初は実現可能性のフィルターを外して意見が言えるような環境を作ります。また、これを同じ部署だけでやると、他の部署への文句・要求ばかりになりがちです。そもそもビジネスが上手くいかない理由が特定の部署のせいであることは滅多にありません。その意味では、ビジネスの失敗は関わった全ての部署に責任があるので、関係部署が集まってディスカッションすることが重要になります。

活躍できる人は、特にビジネスが辛い状況にある時こそ、前を向いて「何があったら成功できるのか?」を問い続け、失敗した過去ではなく、成功する未来に対して考え、行動が取れるのです。

質問 #2: What is the key issue?(最重要課題は?)

世の中の変化が激しい中で、多くの企業で「スピード」が重要視されている現状において、"What is the key issue?"(最重要課題は?)という思考は、今まで以上に意味を持ちはじめています。

スピード感を持ってアクションを取ることが正しいとされる余り、「何のためにするのか?」が置き去りにされているケースが多いと実感します。もちろん「スピード」は文句なしで最重要行動指針ですが、「そもそもどんな課題を解決するためにやるのか?」を考えずに、ただ行動したとしても何も起きません。

特にこの傾向が顕著に起きるのが組織改革プロジェクト。「組織を良くするんだ!」と聞こえの良い号令の元、プロジェクトはスタートしますが、「今までの組織で解決されていない課題は何なのか?」「組織を変えた先に、何を求めるているのか?」といった議論を十分にしないまま進めるので、最初は勢いがあるものの数ヶ月後には形骸化しています。

では、P&Gで活躍していた人はどうしていたのか。
プロジェクトをキックオフする際は、「このプロジェクトは、そもそもどんな課題を解決するために必要なのか?」という問いにチームメンバー全員が共通解を持てるまでディスカッションをすることに、きちんと時間とエネルギーを割いていたことが多かったと思います。私自身も、プロジェクトの途中で迷いが生じたり、上手く行かなくなってきた時は、慌てず立ち止まって「今やってることはどんな課題を解決するためにやってるんだっけ?」と自分自身、チームに確認するようルール化していました。

また、日頃からビジネス・組織の最重要課題が浮き彫りになりやすい仕組み作りをしておくのもオスススです。私の会社では、プロジェクトのレビューをする際に、必ずハイライト(上手くいっていること)とローライト(上手くいってないこと)を合わせてディスカッションしています。なぜならば、ビジネスの最重要課題は、上手くいっていることをそのまま加速させるか、もしくは上手くいってないことを改善するか、このどちらかに帰着することが多いからです。

私がP&Gにいた頃は、翌年度のビジネスプランニングをするプロセスの中で、"Key Issue Meeting"というものがステップとしてありました。これは文字通り、ビジネスの最重要課題を合意・討議するためのミーティングです。組織のトップ(General Manager)も参加して、まず"Key Issue"についてディスカッションします。晴れて最重要課題が合意出来た後に、その課題を解決するためのプランを作り始めるという流れです。この進め方は一見遠回りしているようにも思えますが、着実にビジネスを伸ばすやり方だと私は信じています。

質問 #3:  What are the next steps?(今後の段取りは?)

色々とディスカションしているのに、なかなか結果が出ない。そんな時に疑うべきは、合意したアクションを実行しきれているのか、ということいくら素晴らしい戦略・プランを描けたとしても、実行がついて来なければ、いわゆる絵に描いた餅で終わります。

そんなこと理解しているよ!という方が大勢かと思いますが、P&Gで活躍していた人の段取りへのこだわりはちょっと異常かもしれません。いかなるミーティンでも最後はNext stepの確認で終わります。そして、「誰が」、「何を」、「いつまでにやるのか」、を会議出席者全員がいる場で確認します。特に重要なのは「誰が」です。必ず「1人」を指名します。部署名や複数人を入れることは滅多にありません。「1人」を名指しで任命することで、期日までにアクションを取るコミットメントを上げています。日本企業だと、誰かを名指しするのはちょっと気が引けるかもしれませんが、その遠慮は不必要かもしれません。チームの限られたリソースを使って結果を出すために集まっているのですから、気を遣っている場合ではありません。目上の人であろうが、フォローアップをしてもらう場合には、名指しで指名するべきです。

そして、ミーティング後は、Next stepが予定通りで行われているか定期的に確認しています。Next stepごとに1人指名しているので、その人に対して進捗状況のチェックと、期日のリマインドが出来るのです。これが複数人を任命していると、誰がOwnershipを持つかが不明瞭で、Next stepが進んでいないという事態を生むわけです。

せっかく作った良い戦略・プランを無事に世に送り出すために、ミーティングの最後5分はNext Stepの確認に充てるようにルール化し、「誰が(1人名指しで任命)」「何を」「いつまでに」を徹底してください。

物凄くシンプルですが、以下の画像が私がP&G時代に使っていたNext stepのフォーマットです。ご参考までに。

スクリーンショット 2021-07-19 22.16.33

質問 #4: What are key risks & mitigation plans?(リスクと対策は?)

既に紹介した3つの思考と比べて、一般的ではないですが、この考え方こそ、P&Gが180年以上も存在し続けている理由の1つかもしれない、と私は勝手に思っています。

P&Gでは規模の大きなプロジェクトの提案を書く場合に、Key Risks(リスク)とMitigation plans(対策)を記載するのフォーマットが使われることが多かったと記憶しています。これを事前に思考して、チームで合意しておくことで得られるメリットは3つあります。

1つ目は考え得るリスクレベルを事前に把握することで、プロジェクトを進めるべきか判断ができること。リスクが大したことなければ対策とセットでG Oという判断が出来るし、逆に避けようのないリスクであれば勇気を持ってSTOPという判断が可能になります。

2つ目は不測の事態に対する準備が出来ること。 事前にリスクを洗い出し、対策を練っておくことで、実際に起きた時に慌てずに対応が出来ます。また、想定してたものとは違う事態が起きたとしても、メンタル的にリスクが起きる前提で動いているので、比較的落ち着いて対応が出来ます。

3つ目は各部署巻き込みが出来ること。リスクと対策を考える中で、特定のエリア(例:法務リスク)がありそうだとわかると、意思決定の前に関係部署に相談することになります。こうすることで、事前に起こり得るリスクと対策を他部署も含め把握することで、一部の人だけでなく、会社として対策を講じることが出来ます。

Facebook CEOのMark Zuckerbergが話した有名なリスクに関する言葉があります。

“The biggest risk is not taking any risk... In a world that changing really quickly, the only strategy that is guaranteed to fail is not taking risks.”

変化の激しい現代で、リスクtakeをしないとビジネスが成功しないのは非常に正しい考え方です。ただ、どんなリスクでも取れば良いのではなく、informedリスクを取るのが正しい判断です。リスクの大きさ、角度、対策を理解した上で意思決定をする(させる)人こそが、P&Gでは活躍していました。

この「リスクと対策」の思考を身に付けるためには、提案書にフォーマット化して無理矢理にでも考える癖をつけること。また、自分が意思決定する立場であれば、部下やチームに対して「このまま進めた場合に考えられるリスクと対策は?」という問いを繰り返し聞くと、徐々に組織に根付いていくと思います。

--------------------------

以上がP&Gで活躍していた人が実践している共通の思考でした。正直、4つとも目新しいものではなかったと思いますが、実際に出来ている人は全然いないものです。だからこそ、この4つの思考を実践するだけで活躍できるのだと思います。一朝一夕には身に付くものではありませんが、日々の業務で繰り返し続けることで、習慣化されるはずです。ぜひ実践してみて下さい!

Twitterにて、私の幅広い経験を元に、ビジネススキルを上げるための普遍の真理を日々投稿しています。もし宜しければフォローしてください。よろしくお願いします!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?