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物語執筆初心者には実直な編集者やアドバイザーが必要だと思ったこと。

先日、アドバイスの依頼を娘から受けた。
娘の書いた掌編について批評が欲しいと言われた。

掌編を書いてSNS上にあるサークルにアップしたけれど、そこでもらった感想が面白くなかったとのこと。
感想欄には「良かった」とか「怖かった」とかと短く書かれていただけで、何の参考にもならなくてフラストレーションがたまったとのこと。

厳しい批評を欲していたのに、それがなくて「何となく褒めあってお仕舞い」になってしまったと、娘は不満たらたらで、それで私にお鉢が回ってきたわけだ。

娘の作品はいっちゃ悪いけれど突っ込みどころ満載で、素人の私からでさえいくつもの改善箇所を指摘できる代物だった。
なので、淡々と問題点を伝えて、私なりの改善点も伝えた。

その時、娘に尋ねて知ったのが、SNS上では実直な批評者はなかなか存在しないし、求められてもいないらしいということだった。

時代が変わったのだろうか。
それともSNS上には居ないだけなのだろうか。
それはわからないが、やはり、初心者をある程度のレベルにまで引き上げる環境は、どこかにあって欲しいと思った。

きっと、一定数の執筆初心者達は自分の未熟さを自覚していて、それを実直に指摘して、指導してくれる存在を探していると思うのだ。
そう我が娘のように。

幸いにも娘には父親である私や生真面目な友人がいて、稚拙ながらもアドバイスを受ける機会が得られた。

でも、そうでない若者はたくさんいるのだろうなと考えてしまう。

昔は学校に文芸部とかあったし、小説系の同人活動とかもあって、その中にはアドバイスをくれる先達がいたし、同輩達からもちゃんとした批評がもらえる環境があったけれど。
今はどうなんだろうか。

私の所属していた同人グループには、ちゃんとした批評をくれる編集担当者がいたので、とてもありがたかった。
彼女たちからの批評は、私の執筆力の向上に役立った。同時に、誰かに対して批評をする際にも、それを雛形にできて役に立っている。

また、柴野拓美氏や梶尾真治氏に直接に意見を伺う機会を得られたり、新田次郎氏の修行時代の逸話を耳にする機会を得られたり、という幸運も私にあった。

そういう経験から、やはり、執筆初心者にとって必要なのは、実直な先達や編集者を見つけて、縋りついて、図々しくかつ謙虚に批評を求める行為だと考える。

ただ、その行為には対価も必要になることを忘れないで欲しい。
相手の時間と労力を頂くのだから。

どうもインターネットが世の中を席巻して、発表の場が広がって、多くの者が様々な創作活動の結果を表に出せるようになった。
でも、表に出てきた初心者を上手く育てるシステムが構築できていないなぁと思った。

ということを娘と会話していたら、
娘から「ほとんどの発表者はそういう向上心はないから」と突っ込みを受けた。

そうなのだ。
その通りなのだ。
そこはわかっている。

だがな、娘よ。
お前の様に、誰かにちゃんとした批評をもらいたいと願っている者もそれなりいるのだよ。

娘よ。
その願いを持っているのは、貴女オンリーではないのだよ。
ネットの底に、サイレント・マイノリティとして幾人もが揺蕩って、困っているのだよ。

そういう者たちが、実直な批評者と容易につながって、無理のない料金体系で、単発的にアドバイスをもらえる。
そんなシステムができたらいいなあ。
父はそう思っているのだよ。


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