はじめての記憶

 部屋には眩しい日差しが差し込み、白いカーテンが風になびいている。カーペットの上にペタンと座り、丸テーブルに置かれた赤いテレビを見あげていた。ブラウン管の中では赤と緑の二体の着ぐるみがユーモラスに動きながら何やらこちらに語りかけている。その意味は理解できないが、とても楽しげで目を離せない。母は後ろでソファに腰掛けて、なにか手作業をしている。編み物だろうか。暖かな視線を背中に感じる。

 番組が終わるとテレビの電源はプツリと切られた。カーペットの上にゴロリと仰向けになり天井を見つめていると、母は笑顔で薄手のタオルケットを掛けてくれた。その笑顔に応えるように少し笑みを浮かべながら目を瞑る。

 母はまたソファに腰掛けて編み物を始め、私は眠りに落ちた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?