イノベーションを起こすためのチームの集め方


abstract
 私たちのようなテクノロジースタートアップはイノベーションを起こして社会を変革することを目的に事業を行っている。自分たちの望むような結果を得るためには、常に最高の結果を求める必要がある。最高の結果を求めるには、最高のチームが必要になる。
 最高のチームとは最高のメンバーから構成される必要がある。最高のメンバーとは一般的に優秀な人のことではなく、ベストの結果すなわちその時点で最高だと思われる結果を出す人のことである。そこで、自分たちが最高の結果を出すためにどのようにしてチームを結成していくのかを考えるために数冊の本を読んだので感想とともにまとめていく。
 
NO RULES 世界一自由な会社、NET FLIX
 この本はネットフリックスの企業カルチャーについて書かれています。ネットフリックスのカルチャーには、「社員一人ひとりの自立した意思決定を促し、尊重する」「情報は広く、オープンかつ積極的に共有する」「とことん積極的に意見を言い合う」「優れた人材でチームを構成し続ける」「ルールを作らない」というものがある。さらにネットフリックスは「プロセスよりも社員を重視する」という考え方を持っており、優秀な個人の集団が一つのゴールに向かうドリームチームとして働くことで、爆発的な結果を出している。
 この理想をネットフリックスでは「自由と責任」のカルチャーと表現している。自由と責任のカルチャーとは能力密度を高めること、率直さを高めること、コントロールを減らすことで構築していく。このカルチャーが根付くことにより、迅速にイノベーティブな意思決定プロセスを実現することができるようになる。このカルチャーをどのように実現してきたのか、具体的なことがケースメソッドの様に書かれている本である。
 
 スピード感がありイノベーションの生まれる職場には「最高の同僚」が集まっている。リーダーの最優先目標は、最高の同僚だけで構成される職場環境を整えることだ。最高の同僚とは普通に優秀な人のことではなく特別に優秀な人のことである。特別に優秀な人を雇用するために、普通に優秀な人は十分な退職金を保証することによってチームから去ってもらう。というところが印象に残った。
 普通に優秀な人に職場から去ってもらうことによって、職場の能力密度が高まり、最高レベルの人材しかいなくなれば、率直なカルチャーを育む準備ができたといえる。このように特別に優秀な人を集めてお互いにフィードバックし合うことにより、チームや会社全体のスピード感と有効性は飛躍的に高まることになる。そこまでして高めた人材はコントロールするよりも、会社としての考え方というコンテキストを与えることにより同じ方向に進むことができる。この方法ではコントロールするよりも社員は自由を感じ、それに伴う責任感も感じるようになる。このことにより、組織全体のイノベーション、スピード、社員の満足度を向上させることができ爆発的な結果を出すことができる。
 失敗についてもユニークな対応をとっており、失敗を責められることはない。失敗に終わったプロジェクトは成功への重要なステップであることが多いため、そのプロジェクトから何を学んだのかを尋ねる。この質問により、失敗に対する心理的な安全性を得ることができ、大胆なアイデアを実行することができるようになる。大胆なアイデアを実行するという賭けは、個人的な成功、失敗というよりは、全体として会社を勢いよく成長させる学習するという学習プロセスであると考えている。
  上記のことは言い換えると失敗を容認する文化ということもできます。日本にも失敗を容認する文化を抱えているPFNという企業があります。PFNについても本を読んだのでこちらについてもあらすじをまとめます。
 
Lean or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークの挑戦
 この本はメンバーの出会いからPFNの立ち上げ、どのようにして味方を増やしていったかがメインに書かれている。自由を確保する重要性と、常にラーニングゾーンに身を置くことの重要性についも書かれている。常にラーニングゾーンに身を置くためにPFNには、
Motivation-Driven(熱意を元に)
Learn or Die(死ぬ気で学べ)
Proud, but Humble(誇りを持って、しかし謙虚に)
Boldy do what no one has done before(誰もしたことがないことを大胆になせ)
という4つの規範がある。特に最後の一つについては、誰もやっていないことを自分たちがやる。いろいろな分野においてインパクトが大きいことをやる。少しの改善ではなくて、世の中をガラリと変えてしまうべきだという意思を明確に持っている。さらにPFNがどのようにビジネスを進めてきたか、これからどのようなところで差別化していくか等、企業の未来への目標なども書かれている。PFNはビジネスを研究開発の手段としてとらえている。だが研究開発をメインの仕事とすると外からは何をしているのかが見えにくく「何を作っているかわからない」「イメージしづらい」とよく言われおり、現在の弊社のおかれている状況と非常に似通っている。そこでPFNがどのようにして乗り越えてきたかを知ることで 、これから事業を進めていくうえでヒントを得ることができるかもしれない。
 PFNは他社にはできない、自分たちにしか作れない技術を作ること、新しい価値を生み出していくことに活路を見出していくという決断をした。少なくともどこかの分野でトップをとる必要があると考えている。そのためには研究開発がコアになり、会社全体として技術力を高めていく必要があると考えている。
 会社全体の技術力を高めるというのはどういうことなのか深掘りして考えてみた。個人の技術力をあげることは、個々で行えば良いことなので、特に難しいことではないと考えられる。だが会社全体の技術力を上げることは個人の努力だけだは難しいと考えられる。そこで、マネジメントや勉強し続けられる環境、本気で挑戦した失敗を容認できる環境を構築することが重要になる。
 これはネットフリックスの失敗を許容する文化にも通じるところであるが、こういった環境を作るためには資金や周囲の理解が必要になる。そのためには我々の技術を見て、将来性を理解してもらう必要がある。そのためには「技術ありき」で資本政策を考えていき、技術を持った会社に「出資したい」と思わせるだけのずば抜けた技術を持つことが重要になる。そのためには時間だけがとられて、会社に技術資産が残らないビジネスは行わないことが必要になる。これはどういうことかというと、自分たちの創意工夫を生かす余地がなく、開発した結果を我々が横展開をしていく可能性が全く感じられない仕事はしないということである。そうすることで自分たちの技術の蓄積を最大化する。
 ずば抜けた技術力とともに失敗を推奨できる資金集めというものも必要になる。失敗を容認できないものにしないためには、パートナーの信頼を獲得することに全力を尽くすことが必要になる。一方絶対に譲れないところは、例えパートナーから言われたとしても絶対に譲らないという意思を持って両面で交渉していく必要がある。さらに「絶対にできる」とわかっていることは、我々でなくてもできるので極力やらないようにする。できない可能性が高くても我々でなくては実現できないこと、できるかどうかわからないことをやっていく必要がある。
 つまり目標を達成するための速度を上げていくことが重要であり、その速度を上げていくためには何をしたらいいのかを常に考え、学習しながら走り続けることが重要である。
 
まとめ
 最高のチームを作成するために自分ができることは、まずは自分が超優秀になるか、極端に尖った人材になった後に仲間探しを始めることである。特別に優秀な仲間には十分な報酬で報いる必要がある。そのためには仲間を集める前に資金調達を行うか、ストックオプション等の仕組みを構築しておく必要がある。資金調達を行うにしても、ストックオプションの制度を構築するにしても、会社や投資の仕組みを十分に理解しておく必要がある。つまり最初に自分の評価を客観的に知ること、会社の仕組みを勉強するところから始める必要がある。
 そこから先は個々の能力によって会社としての能力を広げながらも、勢いを失わないようなマネジメントをする必要があると考えている。そのためには、個々の能力が高いこと、その高い能力を目標(ゴール)に向かってみんなで走れる状態にしておくことが重要だと考えている。そのためには十分な報酬を支払う準備、失敗よりも挑戦を重要視する文化、お互いにフィードバックしあえる文化、全体のパフォーマンスに悪影響を与える人の排除が必要だと考えるネットフリックスの文化には大いに学ぶべきところがあると考える。

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