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ラブ式会社のおと~そばにいるよ~【毎週ショートショートnote】裏お題

とある世界の、とある人間たちの、とある島での話。

悲しげな夕焼けの中それは聞こえてきた。

ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン

その島では夕方の決まった時間に鐘を鳴らす。

島の頂上に4つの鐘が並んでいる。

喜の鐘、怒の鐘、哀の鐘、楽の鐘

それぞれの鐘には名前がついていて、それぞれの音を奏でる。

島全体隅々までその鐘の音は響き渡る。

その島ではお寺、神社、教会がない。

死者の埋葬はギルド「ラブ式会社」が執り行う。

かつてはその埋葬時に小さな鐘を鳴らしながら埋葬していた。

いつの頃からか山の頂上に鐘を作って鳴らすようになっていた。

死者の弔いと同時に死者を思い出させる。

人は身近な人を失うと断崖絶壁に立たされたような絶望感に陥る。

ラブ式会社のおとは不思議とそれを和らげる効果があった。

「お母さん、ラブ式会社のおと、鳴ってるね。お父さん、元気かな」

「お父さんは元気よ」

「この音聞くとお父さんを思い出すね」

「そうね」

ラブ式会社のおとは今日も鳴っている。



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(410字)

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

2本目で裏お題になります。

*この記事は、以下の企画に参加しております。



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