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#トキ体験 を創る 2021.12.13

#トキ体験 とは「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しみたい」という欲求を満たす体験のことを表した言葉です。これまでトキ体験の構成要素として挙げられる、

・時間
・空間
・一体感
・距離感
・安心感
・平等感
・組織の人格
・個人の人格

について考察してきました。今回は「所属欲求」について考えてみます。

所属欲求が高まる背景

全てが充足された現代社会では「役に立つ」より「意味がある」ことに価値の重点が置かれるようになりました。最終的な製品やサービスという「アウトプット」から「プロセス」に価値が移行する流れを実践方法や実例集とともにわかりやすく書かれた「プロセスエコノミー」に「所属欲求」についての記載があります。

今の消費者は物質的なモノより内面的なコト。「役に立つ」より意味がある」に価値を感じる、さらに言うと、自分のアイデンティティを支えてくれる、自分の所属欲求まで満たしてくれることを求め始めているのです。
〜中略〜
所属欲求なんてわざわざ抱かなくとも、人々は必要に迫られ自分が暮らしているリアルな場所で地域コミュニティに所属していました。しかしながら、今や隣に住んでいる人の顔と名前を知らなくても困ることはありません。
〜中略〜
今や「社員は家族と一緒だ」という言い方をすると、「それはパワハラだ」と批判されてしまいます。
〜中略〜
もともとアイデンティティを満たしてくれていた(1)家族(2)ご近所(3)会社という三大所属先がすべて希薄化し、「どこかのグループに所属したい」という所属欲求を満たすことを消費行動にも求めるようになってきているのです。

「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しみたい」欲求を満たす体験は、その体験を通じて自分の心が「どこかに所属できた」と感じられる体験とも言えます。

マズローの欲求段階説

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化した「自己実現理論(マズローの欲求段階説、欲求5段階説とも)」における「社会的欲求」と「承認(尊重)の欲求」が、トキ体験を考えるうえで重要な示唆を与えてくれます。

社会的欲求と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)
生理的欲求と安全欲求が十分に満たされると、この欲求が現れる。自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割があるという感覚。情緒的な人間関係についてや、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという感覚。
承認(尊重)の欲求 (Esteem)
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。尊重のレベルには二つある。低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目などを得ることによって満たすことができる。マズローは、この低い尊重のレベルにとどまり続けることは危険だとしている。高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視される。

もしトキ体験が、低いレベルの尊重欲求だけを満たすようなものであったらどうなるのか。それはとても表層的なものとなり、単に「おだて」「お世辞」のレベルになってしまいます。では、本来追求していくべき高いレベルの尊重欲求を満たすようなトキ体験とはどのようなものでしょうか。それは、

個の成長を促し「体得」感のある体験

ではないでしょうか。具体的な場面に置き換えてみます。

個の成長を体得できる体験

自らが努力や自主性で成長した、と感じる体験の例を現実に置き換えて考えてみました。

・オン/オフラインイベント(ワンタイム参加)
途中で各自にて「ワーク」する時間があり、その結果を集計したりピックアプしながら進行し、最後に全員で「表彰」を行う。これにより「観るだけ」「聴くだけ」ではなく「個」の「所属意識」を高める。

・オン/オフラインイベント(継続的な活動)
年末に1回「MVP」など「トップ」を選出する。年始からの活動は、年末を見据えているという「タイムライン」を所属メンバーに「可視化」する効果がある。

・飲食店
何度も通って「常連客」になり、店長が特別な対応をしてくれるようになった。最終的には「客」と「店」を越えた「個」と「個」の人間関係の構築につながった。

トキ体験には、必ずしも被体験者に高額な費用を求める必要はありませんが、顧客のLTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー「顧客生涯価値」)を上げていく施策として最もわかりやすい例のひとつが航空会社の「ステータス」の仕組みです。

航空会社で「ステータス」が上がると、専用のラウンジが使えたり「優先搭乗(降機)」、荷物が早く出てきたりします。しかし実際これを実現するためには、高額な出費と実際の搭乗が必要です。また、年に1度リセットされてしまうので「維持」を図ろうとする心情も働きます。

このため、多くのブログ等でこのステータスを上げるための行為を比喩的に「修行(行程)」「解脱(完了)」と呼んでいます。LCCの搭乗で空路移動は安価になりましたが、従来の大手航空会社(FSC=フルサービスキャリア)にとってこの施策は顧客ロイヤリティを高めLTVを向上させる(=企業の収益を支える常連客向け)ための有効な手法です。

個の成長を「促す」

なぜ前の章でわざわざ「個の成長を促し」と「促す」ことを強調したかと言えば、それはトキ体験の主役が被体験者であることに他なりません。世の中の製品やサービスの多くが、まだまだ製造者・提供者側の論理で作られています。まだまだ、多くが「ハード」思考なのです。

「作」るものではなく
「創」るものではある

という考えを持つ必要があります。例えば、栄養ドリンクという「機能的価値」に即した「ハード」的な製品に対する「情緒的価値」の提供を目指したドリンクがあります。

ストレス社会にチルでクリエイティブなライフスタイルを
あらゆる場で「エナジー」を必要とする昨今。
ただ、それ以上に必要としているのは
「リラクゼーション」ではないのか。
現代人に必要な“安らぎ”と“パフォーマンス” をサポートする
リラクゼーションサポートドリンク CHILL OUT。

”ベストセラー”に並びこの製品が1本だけ入っている自販機を最初に見たとき、いよいよ「ソフト」的思考の製品づくりが日本で本格化したと思いました。

価格は200円。いわゆる「安いと売れない」類の商品です。この200円という「いつもより『少し』多くの出費」が「個」のレベルにおける「頑張ったからご褒美」的な消費を生んでいます。この製品づくり、そして価格設定はプロのマーケターが関わったに違いありません。ウェブサイトにも「日本発」と記載されていることからも、少子高齢化社会における「情緒的」価値の商品・サービス開発の世界での位置づけを見た気がしました。

全てが「成長=高価格の拠出である」とは言えませんが、先述のイベント中における「ワーク」など、個における何らかの「負担」が「成長」につながり、満たされた体験につながるといえるでしょう。逆にあまりに表層的な「おだて」「お世辞」レベルでは真のトキ体験にはならないということです。これからの製品・サービスの提供者、イベントの企画・主催者はより「情緒的価値」に踏み込んだ体験の創出が求められています。

#つながりを創る人 のトークイベント

オンライン/オフラインイベントの
・今年はどうだったのか?
・来年はどうなるのか?
・形態は?
・課題は?
・解決策は?

について、12/28 20:00〜「オンラインイベント」を行います。

【トークイベント】コミュニティ放送部#7 (2021/12/28 20:00〜)

「つながり」の未来を一緒に考えましょう!

おわり

(次回 #トキ体験 を創る 2021.12.14)

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