#トキ体験 を創る 2021.12.29
#トキ体験 とは「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しみたい」という欲求を満たす体験のことを表した言葉です。これまでトキ体験を構成する要素を様々な側面から考察してきました。
・時間
・空間
・一体感
・距離感
・安心感
・平等感
・組織の人格
・個人の人格
・所属欲求
・自己超越欲求
・時間という言葉
・雑踏と潜在意識
・TPO
・感動体験
・体験のCtoC
・コストとトキ体験
・パッシブなトキ体験
・エンゲージメント
・非同期コミュニティ
・心理的機能と体験設計
・プロセスとトキ体験
・オーナーレス社会とトキ体験
・CX(顧客体験/経験価値)とトキ体験
トキ体験の連続考察noteはマガジン化していますので、ご参照ください。
今回は「非金銭的報酬」について考察します。
非金銭的報酬とは
非金銭的報酬とは、金銭的な報酬を上回る労働のモチベーションとして調査・研究されている概念です。人は金銭だけで働いているわけではない、とう考えに基づいています。
金銭的報酬が、労働のモチベーションに与える影響には限界があると言います。
ノーベル賞経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、アメリカで幸福や人生の充実度と所得の関係について統計を取ったところ、所得7万ドル(日本円で約800万円)までは、金銭が幸福や充実度と比例するのに対して、それより上の報酬を貰う人々にとってこの比例関係は無くなっていったそうです。
たとえば、「社内報」を活用した社員のモチベーション向上策について解説した記事では以下のような非金銭的報酬の例が挙げられています。
1)コミュニケーション報酬
上司や仲間からの励まし、承認、信頼など、他者との人間的なつながりの報酬
2)自己実現報酬
「この会社にいるとこのようなビジネススキルが身につく」「これだけの人間力を高められる」といった実感の報酬
3)ベクトル報酬
経営理念やビジョンに対する、共鳴によって生み出される報酬
これらを「社内報」を通じた「非金銭的報酬」として、社員のモチベーション向上を図ろうとしています。
「コミュニティ」の苦悩
本noteに反応を頂いた方々との個別ヒアリングを、継続しています。そのなかで、あるユーザーコミュニティ運営者の方に「最近の課題感」について聞きました。
オンラインが続いたのちにリアル(対面)で会ったときの特別感、仲間感、絆が強くなった。今年はハイブリッド(オンライン+対面)開催にトライした。登壇者と運営のみがリアル(対面)で会った際、会場側は大いに盛り上がったが、オンライン視聴者との熱量には格差があり、リアクションする人が限られた。
見ているだけの人を少しでもリアクションしてもらいやすくするためにリアクションしたら抽選でプレゼントする企画など試みたが、多少増えるものの普段発言しない方々たちの引き上げは難しかった。
その後、オンライン交流会ツールを用いて視聴者側も話す機会を持てる「交流をメインとした会」を行った。普段よりは視聴者側の声もあがり、発言する方も増えた。そもそも交流メインの会では参加しない層もいて、参加者同士が”コミュニティで学び合う体験”を実感できる方は少なかった。
そこで、先述の「非金銭的報酬」と(いわゆる「好き勝手」で行う自主的なものとしての)コミュニティ活動を関連付けて考えてみました。そもそもコミュニティ活動とは、自身の向上や後述する報酬のためのものであり
金銭的な報酬は皆無
です。となると、
コミュニティ活動=非金銭的報酬
と言うことができます。具体的な非金銭的報酬としては、
コミュニティ活動の非金銭的報酬(=期待)
【事象】実績や経験のある登壇者と知り合える
【報酬】登壇者とSNSでつながれる
【事象】同じ目的の参加者や運営者と知り合える
【事象】参加者や運営者とSNSでつながれる
【事象】会場や飲食を提供している会社を知れる
【報酬】提供会社の社内を見れる、将来就職できる
【事象】ノウハウを資料にまとめて登壇できる
【報酬】多くの人に自分を売り込める、SNSでつながれる
【事象】多くの人にノウハウを広めることができる
【報酬】社会貢献ができる、自己実現/超越欲求を満たせる
さらに長期間、オンラインでのみでしか交流ができなかったことから新しい(もっとも、これまでの人類のコミュニケーションにおける「基礎」ですが)「事象」と「報酬」も顕在化しました。
【事象】リアル(対面)で合うことができる
【報酬】非言語コミュニケーション(表情や場の雰囲気など)を楽しめる
先程のヒアリングにおいて、
(「ハイブリッド」形式で)会場側は大いに盛り上がったが、オンライン視聴者との熱量には格差があり、リアクションする人が限られた。
との課題が挙げられていましたが、この根源的な人類にとっての「報酬」をもとに考えてみれば、
会場に居る人の熱気・盛り上がりが実感できる環境と
オンライン視聴者の(自宅等での)実感できない環境
との大きな乖離が(オンライン視聴者側の)「盛り下がり」を助長した可能性が考えられます。平たく言えば、
「会場側だけで盛り上がっている感」
が、画面の向こうから伝わってきたのかもしれません。長引く「オンライン」「自粛」生活で人々の精神状態は決して健康的であるとは言いがたい情勢のなか、ますます(自宅にぽつんといる)自分が無力で惨めに思えるという「錯覚」を起こしてしまう危険性も考えられます。
イベントの改善策
「オンラインの課題」が生まれる現在のような「イベント開催手法における模索期(過渡期)」の改善・対応策としては、
・リアル(対面)とオンラインは別に行う
リアルとオンラインは「別モノ」として考える。「ハイブリッド」という運営側の観点における「手法」ではなく、参加者の「CX=体験/経験価値」創出という「目的」を第一に考える(相手目線)。
・完全にオンラインだけの開催に限定する
登壇、運営、参加者、アーカイブ(後日)視聴者、全ての参加者が「フルフラット化」できる完全オンライン形式で開催する。これにより、生活様式の多様化にも対応できる。
・リアル(会場)の収録録画を全員オンラインで観る
完全オンライン開催の場合、情報量が低下するため臨場感や立体感に限界がある。そこで、リアル(会場)で収録した高画質・高音質の情報リッチなコンテンツを完全オンラインの「同期イベント」として開催する。
(例)YouTubeプレミア公開(事前アップロード動画を、日時設定した「同期イベント」として出演者・視聴者が一緒になって観る方式)
などが考えられます。
繰り返しになりますが、参加者(視聴者)は
・オフライン(リアル、対面)
・オンライン
・ハイブリッド
という運営者側による視点、つまり「手法」よりも「目的=非金銭的報酬」によって動かされるのです。それが遠方で更に駅から遠い会場であろうと、数千円もするオンライン開催であろうと、
自分にとってのメリット(報酬)
のための時間と労力は厭わないものではないでしょうか。人気アイドルのコンサートを見に行くなら自費の「おっかけ」も、会場前の「出待ち」も、数々のグッズや楽曲購入も全ては「非金銭的報酬」です。金銭を払い、労力をかけ、精神的な報酬を得るために支出している、とも言えます。
「人気アイドル」も
「コミュニティ」も
「非金銭的報酬」で動く
と言うことができるでしょう。もっと踏み越んで言えば、
「非金銭的報酬」が得られるコミュニティ運営を行う
ということです。「盛り上がらない」「コミュニケーションが活性化しない」とお悩みの方がいれば、
・参加者の目的(期待)は何か?
・応えるためにはどうすればよいか?
・行った結果がどうだったのか(検証)?
など、コミュニティ活性化のための仮説検証サイクルをまわすことをお勧めします。
もうすぐ、年が変わろうとしています。
年が明ければ、多くの人が神社にお参りにいきますね。
そんなとき、境内でふと立ち止まって考えてみてください。
自分は、何のメリット(報酬)があってここにいるのか?
願いゴトは、神社でもコミュニティでも「ご利益」な筈です。
おわり
(次回 #トキ体験 を創る 2021.12.30)
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