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夏の終わりを告げる新潟記念はシンリョクカの見事な復活。秋に繋がる2歳戦と共に振り返り(第59回札幌2歳S・第44回小倉2歳S・第60回新潟記念回顧・ブリーダーズGC)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.09.01 16:30~からの文字起こしです。


第59回札幌2歳S

蒼山サグ:
それでは本日も重賞回顧を行っていきましょう。まずは順番として、昨日の土曜日に行われました2歳重賞札幌2歳ステークスの回顧からしたいと思います。こちらですが、ゆたさんの方からよろしくお願いいたします。

くらみゆた:
承知いたしました。勝ち馬が、その後重賞やG1好走馬も多いというところで注目の札幌2歳ステークス。回避してしまったキングスコールを含めて上位人気のドゥラメンテ産駒が並んだことにも、来年のクラシックにつながるファンへの期待を感じるところでした。そんな中、勝ったのはキズナ産駒というところで、まだまだポストディープインパクトというのは分からないという結果になったのかなと思います。

レースは2番人気のドゥラメンテ産駒のアスクシュタインが1コーナー入り口でハナをとりきる競馬をしています。ただトップオンザヒルが突っつくような形で先行したこともあって、2ハロン目が11.8秒、3ハロン目が12.4秒。逃げ馬にとっては過去2戦の逃げ経験が生かせない形でペースとなったと思います。そういう意味では新馬戦はしょうがないとしても、2戦目のレースのペースの刻み方というのはもったいなかったのかなというのが、このあと失速の意味するところかなと思います。

3コーナーでマジックサンズが向こう正面に出して追走。ファイアンクランツが後方からという競馬になっています。3コーナーで前がグッと落ちたタイミングで押し上げたのがマテンロウサンマジックサンズですね。コーナーでこの2頭と外回って上がってきたんですけれども、こちら内ラチ沿いから一気にワープ気味に進出したのが横山武史騎手のアルマヴェローチェ。外からマジックサンズが一番早めに抜け出そうになるんですが、少しソラを使ったか、ふわっとしたところで内からアルマヴェローチェが出し抜く形で先頭に立ちました。最後は追って追っての我慢比べとなったところで、再度マジックサンズが差し切っての勝利となっています。

勝ったマジックサンズ。父キズナ、母父キングカメハメハの血統で、少し重めの馬場にバッチリハマったところもあるんですけれども、自分から動いてソラを使ったとあとに、最後もう一回しっかりして差しきった内容は、今日のメンバーでは力が上だったと思います。ただ新馬戦とこのレース両方ともちょっと渋った馬場で勝ちタイムは1分50秒台というところ。この札幌2歳ステークス勝った後に即G1通用となると、良馬場で49秒台前半で勝ちきっているようなイメージがあるだけに、真価は次走次第かなと思いました。鞍上の佐々木騎手は函館2歳ステークスから続いての重賞勝利で2歳重賞2勝目という形になります。函館2歳ステークスは堀厩舎のサトノカルナバルで勝って、今回はその堀厩舎のファイアンクランツを袖にして、サンデーレーシングのマジックサンズを選択。その上で勝ち切ったというところは自分にとっても自信になったと思いますし、周りからの目としてもしっかり馬が選べる、勝ち切れるという印象をつけられたので大きな勝利だったのかなと思いました。

あとは2着のアルマヴェローチェ、こちら4コーナーで横山武史騎手のコース選択が素晴らしかったと思います。3着のファイアンクランツはこちらの新馬戦は少し緩いペースだったので、前半少し進んでいけなかった分の3着というところだったと思いました。このレース単体で見ると上位3頭はちょっと時計面での裏付けはまだ取れていないというところもありますので、東京や京都の野芝での扱いは注意したいなというところではあります。ただマクロで見るとノーザンファームは3頭出しして1-2-3という形。今年はとにかくノーザンの評判馬が新馬、その後2戦目とパフォーマンスをしっかり発揮して勝ち上がっているところがあるので、そういう形がここでも見えたのかなと思います。前評判通りに走る馬が多い年というのは、比較的世代レベルが高い印象がありますので、この辺来年のクラシックに向けて楽しみ自体は大きくなったりするんじゃないのかなと思いました。以上になります。

蒼山サグ:
ありがとうございました。それではこひさんの方から何かございますでしょうか。

こひ:
このレースはペースが緩まなかったというところもありまして、こういう速めのレースの経験が積めたというところが、この上位3頭、今後生きてくるところはあるのかなと思いました。次の中京の小倉2歳ステークスでこの記録は止まりますという話なんですが、ここまでの3つの2歳の世代重賞がオールノーザンファームというところもちょっと話題になっていたところもあります。そういったところの路線的な使い分けですとか、そういったところもより上手くなっているなというような印象を持ちました。札幌2歳ステークスだけではなくて、これまでですとあまりノーザンファームが見向きもしなかったオープン特別ですとか、そういったところまでしっかり抑えてきているようにも見えますので、今年の2歳の世代はノーザンファーム的にはかなり順調そうだなとも見えています。

第44回小倉2歳S

蒼山サグ:
ありがとうございました。それでは札幌2歳ステークスの回顧は以上とさせていただきます。続きまして本日行われました重賞に移っていきましょう。まずは中京で行われました小倉2歳ステークスの回顧をやっていきましょう。こちらこひさんの方からよろしくお願いいたします。

こひ:
はい、中京で行う小倉2歳ステークス、今年は開催順が小倉から中京になって中京の4週目というような形になりました。ただ台風の影響でいつもの小倉開催最終週のような馬場状態での開催になったのがまた不思議なものだなと思いました。言うまでもない外伸びの馬場というような形になりまして、中京開催は次の開催も含めてあと4週続くんですが、芝が大丈夫なのかなというような心配も見ていてよぎったところです。ただ場所が中京というような形になりましたので、どこからでもエントリーがしやすいというところになりまして、北海道からの遠征組に加えて小倉で勝った馬、中京、京都、福島、新潟とほぼほぼそれぞれの舞台で勝ち上がった短距離馬が集結するというような形になりまして、なかなか横の比較というのが難しいレースでもあったかなと思います。

ゲートが開きますとレイピアが先手を取りまして、インにいましたクラスペディアはちょっと競り合いを嫌って引くような形になりました。その後外の3番手ですね、馬場がまだきれいなあたりをエイシンワンドがスムーズに確保していくというような形で、その後ろにアーリントンロウが続いていくというような状況でした。このアーリントンロウが引いてからは割とエイシンワンドはスムーズに走れたかなというような印象です。この間ですが、初めにポジションを下げていたインにいましたクラスペディア、この小崎騎手が道中ずっと外をうかがってまして、3コーナー4コーナーを使ってうまく外に持ち出したという姿も同時に印象的だったところです。

直線は粘っているレイピアに対しまして外からエイシンワンドが一気にかわしていくというような形になりました。ここで馬場が悪い内側によれてしまったというところもありましたが、早めにセーフティリードというところを確保したと思います。外から追い込んできましたアーリントンロウに対しまして、さらに外から先ほども出しましたクラスペディアですね。この馬が最内枠から大外に持ち出して差し込むというような形でエイシンワンドに迫ったというところがゴールでした。

レースが終わってみましたらエイシンワンドの新馬戦と同じワン・ツーが2歳ステークスで繰り返されるというちょっと不思議な形になったレースでした。このエイシンワンドが勝った新馬戦ですね、たまたま出資馬が出ていたのでリアルタイムで真剣に見ていたレースでもあったんですが、この上位2頭で後続を6馬身ちぎるというような形でかなりスピードを発揮した良いパフォーマンスのレースではありました。とはいえ馬場コンディションも激変している4週目で、さらに新馬では逃げていた方のクラスペディアが最内から外出ししてそんな形でのワン・ツー再現というのはちょっと想像ができなかったなというところです。

勝ちましたエイシンワンド。まだ若さは残しているような直線での競馬にもなりましたが、先行するスピードがありまして、そこからもうひと伸びするためも効くというような形で良いスプリンターだなというような印象です。良馬場でのパフォーマンスもすでに競馬2戦では示していましたので、ディスクリートキャット産駒だからと馬場が渋っての結果とは捉えてはいけないかなと思います。

2着のクラスペディア。こちらミスターメロディ産駒でこちらも重馬場の適性がありそうな血統背景でしたが、新馬で逃げてここでは差してとレースの幅が広がったというところは大きな収穫だったと思いますし、小崎騎手もうまく乗ったなと思います。ただこれで収得賞金がここの2着賞金のみの600万円のオープン馬というような形になりましたので、3歳春までレース選択という意味では結構賞金順で不利な金額になってしまったかなと思います。どこかでもう一つ賞金積みたいなというところですね。3、4着にはタワーオブロンドン産駒が並んだというような形になりました。負けたとはいえそれぞれにポジショニングですとか楽ではない競馬をしての結果だったなと思います。2歳戦から短い距離で結果が出せるというところについては父には一定の追い風になる結果だったかなと思いました。

レーストータルとしては人気馬がクラスペディアがちょっと盲点になっていたところはありましたが、きっちり上位にはきていまして、今後のスプリント戦線という意味ではなかなか楽しみはある結果だったなと思います。今回未勝利の状態でここを使うという選択をしてきました2着のクラスペディアの河嶋調教師ですね。今年開業していきなり未勝利馬を重賞に使って賞金を積むという離れ技を決めてきた形になります。プロフィールを調べてみたんですが、もともとノースヒルズのスタッフから中竹厩舎を経て開業という形で、かなり強そうな馬主のラインも持ってそうなプロフィールですし、この馬もブリーズアップセールで買った馬でしたので、多分ご自身で見出された馬かなと思います。そういった馬でいきなり結果を出すのも見事ですし、ちょっと注目したいなと思いました。以上です。

蒼山サグ:
ありがとうございました。では続きましてゆたさんからコメントございますでしょうか。

くらみゆた:
1、2着はストームキャットの血統というところもあるので、やはりこのスプリンター、速いところにストームキャットの位置が重要だなというのを改めて思った次第です。一方でブリックスアンドモルタルが結果を出していないのが、2年目3年目以降どうなってくるかなというところですね。もちろんブリックスアンドモルタルはもうちょっと距離長い方がいいんだとは思うんですけど、気性面で色々難しいところがでているので、存在感が示せないと、ちょうど社台SSの種付け数が発表になっていましたけど、すぐに人気が落ちてしまうだろうなと思ったところです。

第60回新潟記念

蒼山サグ:
続きまして本日新潟で行われました新潟記念の回顧に移っていきましょう。こちらはゆたさんの方からよろしくお願いいたします。

くらみゆた:
はい、お願いします。この新潟記念、最近はノーザンファーム天栄への意向なんですかね、3歳が秋のステップレースに使うパターンが増えてきています。今年も3歳牝馬のライトバックが参戦して一番人気となったんですけども、まさかの故障による除外。少し今後は心配というところがあるんですけども、そんな中で勝ったのは福島牝馬Sではの前の馬に追突して転倒して競走中止となってしまったシンリョクカの復活劇ということになりました。ライトバックも同じように復活できるよう、無事であることを祈りたいと思います。

レースなんですけれども、単騎逃げ見込まれていたアリスヴェリテがちょっと先頭に立つのには少し時間がかかる形になってしまいました。2番手にはシンリョクカ、内からゴールドプリンセスキングズパレスが後方、さらに後方にレッドラディエンスという展開になっています。少し先頭に立つのに時間かかってしまったこともあってか、アリスヴェリテはちょっと力んだ走り、とはいえペース自体は前半が58.9秒で2番手のシンリョクカあたりは60秒くらいだったので、縦長の展開ほどには速いペースではなかったのかなと思います。最後の直線は馬場の真ん中から外にずらっと並んだ追い比べという形になりましたが、残り400から先頭に立ったのが2番手だったシンリョクカ、外からゴールドプリンセスキングズパレスが追い込んだのですが脚色を衰えず、最後は馬群の間を縫うように伸びてきたセレシオンを押さえての復活劇となりました。

勝ったシンリョクカは競争中止からの復活劇というところで、陣営のケアに拍手を送りたい結果だったと思います。新潟記念、最後の直線が長いコースでなんですけれども、メンバー、コースのレベルもあってどちらかというと切れるというよりは持続ラップで最後残り400脚が使えるのが問われるレースという形になります。ここまで大敗するレースも東京、京都ばかりで小回りでは割と上位に来ている馬ですので、今後も牝馬限定重賞では気になる馬になりそうだなというふうに思っております。

2着のセレシオン、こちらもいかにも新潟記念ぽい、非根幹距離で条件が合えば狙いたいかなと思います。3着のキングズパレス、乗り難しい馬なので勝ちきれないのもわかるんですけれども、新潟記念はキングカメハメハ産駒の庭とも言えるレースなので勝ちたかったレースだったと思います。今日のレースもすごく悪いというわけではないんですけれども、やはり4コーナーの進路取りとかを見ていると無駄の多い立ち回り。明確な騎乗ミスとまではいわないものの、同じ鞍上でイマイチな競馬続いており、出資者だったら、やってられないだろうなと思いました。

蒼山サグ:
こひさんコメントございますでしょうか。

こひ:
やはりこのレースは本当によく勝ったシンリョクカを立て直したなというところの陣営並びに騎手の方が素晴らしかったなという印象です。逃げ馬が出た後の離れた番手というところで、一定無理のないポジショニングではありますが、鞍上がそういったところを取っていける競馬ができた上での結果だったかなと思います。この師弟コンビですね、調教師の竹内調教師と、騎手の木幡初也騎手は、両者ともに初重賞というような形になりましたので、前回が非常に残念な競馬だったからこそ、そこから1回で巻き返して、両者で初タイトルを掴んだというのは印象的でした。思い返してみると、初戦の木幡初也騎手で阪神ジュベナイルフィリーズで2着に突っ込むところから、大きな舞台でのキャリアをスタートしました。そういう意味ですと、陣営と師弟関係のタッグというのが報われた良い一つの結果だったなという印象です。

ブリーダーズゴールドカップ2024

蒼山サグ:
8月27日に行われましたブリーダーズゴールドカップの方の回顧もしていきましょう。こちらはこひさんの方からよろしくお願いいたします。

こひ:
ではブリーダーズゴールドカップの回顧をさせていただきます。ダートグレード路線の見直しで、このレースはすごく地味な変更になりました。例年より1週後というような形になりまして、8月最終週での実施になりましたが、これは結構重要なポイントかなと思っています。この後10月の頭にJBCレディースクラシックに向けての最重要ステップレースのレディースプレリュードがありますが、そことの間隔が中4週に詰まってしまいました。場所が北海道での開催というところもありました。北海道から中央場所、関東での開催というところを含めますと、なかなか連戦が難しいなというところと、また今年はブリーダーズカップ遠征を予定していますオーサムリザルトが早々とここをステップにするという形で表明をしましたので、この2つの要素でオーサムリザルト以外のメンバーは小粒なメンバーになりました。結果として、普段のダートグレードレースでは補欠にしか入れないデリカダエナハツホといった辺りまで枠に入れるような形になりました。なので、オッズが1.1倍だったのが示すように、焦点はオーサムリザルトの勝ちっぷりというレースだったかなと思います。

レースの方は北海道シリーズで今年活躍が印象的なシダーがハナに立ちまして、2番手にサーマルソアリングが積極的に行きました。その後にデリカダが一緒に並んだ形で外からオーサムリザルトになりました。オーサムリザルトサーマルソアリングに対してプレッシャーをかけていくように、武豊騎手が運んだことで、逃げているシダーもその後ろのサーマルソアリングも全く息を入れられないようなペースになりまして、結果的には前が崩れる競馬になったかなと思います。

そんな中でもオーサムリザルトは終始余裕の手応えで、3コーナー手前でしっかり前を潰して、あとは直線独走という形で、1着賞金3100万円ただ貰いのような競馬で、本番に向けてはもう何の不安もない、視界良しという内容でした。最後はちょっと離れたポジションに一旦控えた形が良かった形になりまして、追い込んできましたデリカダが2着。3着には順オープン勝ちから南関東に転出したドライゼというような形になりました。

勝ったオーサムリザルトに関しては、ここでのパフォーマンスで何か言うことというのは何もないかなというふうにも思いますし、本番の左回りは間違いなく条件的には更に良くなります。先行することもできる馬ですし、特にこの日の競馬ですね、他の一緒に先行していた2頭が、上がり3ハロンが41秒台近辺という形で失速する中で、自身は持ったままで38秒6というような形ですので、アメリカのスピード競馬にも一定対応できるんじゃないのかなというような可能性を数字面でも見せたかなと思います。国内で牝馬同士であれば、もう正直何もやることはないかなと思います。あとはその後に牡馬相手でどんなパフォーマンスをするかというところがもう率直に楽しみだなというふうに思います。

あとは2着のデリカダですね。もともとは3歳の時にはこの世代トップクラスの実力を示していた牝馬ですが、故障明けから今一つのパフォーマンスが続いていました。ようやく交流のレースと出走となりまして、追走が楽になったところはあったかなと思います。それで久しぶりにいいパフォーマンスが出せたなという印象です。賞金的には2着賞金分しか積めなかったので、次に交流重賞に出られる日は来るのかなと思いますが、まだ牝馬同士であれば戦える可能性というのは十分に示したかなと思います。

あとは6着に沈んだサーマルソアリングですね。この日はもうずっとプレッシャーをかけられてしまうような競馬になりまして、逃げたシダーよりも後ろの着順でゴールというような形になりました。もともと新潟のレースを使おうと思っていて除外されたというところの影響もあったかもしれませんが、途中でちょっと気持ち的な部分も含めて止まってしまったような印象で、ちょっと今後パフォーマンスがスムーズに戻せるのかというのはちょっと心配な内容だったなというふうに思います。以上になります。

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