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スタミナと耐暑性能が問われた真夏日の過酷なステイヤー頂上決戦を振り返り(第169回天皇賞春・青葉賞・香港チャンピオンズデー)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.04.27 21:00~からの文字起こしです。


第169回天皇賞春

蒼山サグ(以下、蒼):京都11レース、天皇賞(春)の回顧をやっていきましょう。こちら、ゆたさんの方から、まずはよろしくお願いします。

くらみゆた(以下、ゆ):4歳世代のダービー馬が勝負、それからG1にここまで手の届かなかった古馬との一戦という形になりました。マテンロウレオ横山典弘騎手の刻んだラップがステイヤー戦らしい消耗戦を呼び込みました。そういう中でスタミナに秀でたテーオーロイヤルが師匠とのタッグで菱田騎手のG1初制覇を飾ったという形で、浪花節決着になりましたね。

レースなんですけれども、ディープボンド がスタートから先手を取ろうとするような動きを見せましたが、外から マテンロウレオ横山典弘騎手がハナを主張する形になりました。それから外からドゥレッツァが結構前から、番手につける形、その後ろにテーオーロイヤル、2馬身ほど後ろにサリエラという形になりましたので、有力馬、力のある馬が前々で競馬をするような形になっています。あと目立ったところで言うと、タスティエーラが中段の後ろ、後方にブローザホーンという隊列で最初のホームストレッチに入っています。

最近本当にマテンロウに乗った横山典弘騎手によくある形なんですけれども、刻んだラップというのが、最初の1000mが59秒7という形、1,2コーナーを回るところでグッとペースを落とすというところで、本当にいつもの横山家のラップ。ただちょっと馬の力が足りないというところと、後続もそういう流れを作るというのが分かっていたというところもありました。後は好位に人気馬が揃っていたというところもありましたので、あまり速いところではついていかず、スローのところでは後ろも詰めるというような形になりましたので、比較的後続馬群の目で見ると、淡々と少し速めのラップをずっと刻み続けるという形、そこから4ハロンの末脚勝負という形になっていますので、かなりタフな流れになったのかなというふうに思います。

その中で最初に手応えが悪くなったのがドゥレッツァですね。3,4コーナーでもちょっと内に刺さるような感じの苦しい走りで、すぐに馬群に飲み込まれてしまう形になりました。逆に手応えが抜群だったのがテーオーロイヤルです。先行していたディープボンドもいつも通りというか、本当にこの年でもよく頑張るという形で抵抗したんですけれども、並びかけると後は突き放す一方という競馬でした。最後はブローザホーンが刺して2着に浮上していますが、圧巻の走りでテーオーロイヤルが勝利を収めたという結果になっています。

そんな勝ったテーオーロイヤルですね。菱田騎手のレース後のインタビューをなかなか泣かせる勝利となったわけなんですけれども、内容は馬も人も完勝と言ってよかったと思います。スタートからしっかり出してドゥレッツァの後ろをしっかり取れたというのが良かったですね。レース後のコメントでもあったんですけれども、ここで出していったことで前進気勢も強く、少し力んだな姿を見せていましたけれども、それでも最初の3コーナー手前ぐらいまで落ち着けて、直線入り口ではしっかりと折り合った走りになっていました。この外枠でもしっかり出して折り合えたというところが、コンビとしての成熟さを出せたのかなというふうに思います。

あとは向こう正面もしっかり走ってまして、ドゥレッツァの真後ろに一度入れているんですけれども、3コーナー手前でドゥレッツァの手応えが肩鞭入れても進まない感じで悪くなると、外に進路を確保という形で周りもよく見えていたと思います。最後の直線も余裕ある走りで、非常に強い競馬でした。3000mのレースでやっぱり強さが出る馬ですので、ここから出るレース少ないんですけれども、こういうレースするなら海外でも楽しみなんじゃないかなというふうに思っていました。ニュースでもどうもちょっと馬主さんからメルボルンカップを目指したいというコメントがあったみたいなので、楽しみにしたいなと思います。

あと2着のブローザホーンですね。こちらは逆に脚をしっかり溜めて、末脚直線にかける競馬というところですね。ディープボンドはしっかりかわしてますので、今日は相手が悪かったと言っていいと思います。ディープボンドは本当に衰えがあるかと思ったんですけれども、今日のような消耗戦では逆にちょっとルンルン気分で走っているみたいな感じで、もうさすがのスタミナお化けだなというふうに思いました。今日のような競馬はなかなかないと思うんですけれども、負けるときは負けでもこういうところで走れるというところは、長持ちするタイプの馬なんだなと改めて思ったところです。

あとはドゥレッツァですね。ちょっと道中力んだ走りで先行していたというところもあったんですけれども、想像以上の負け方というところです。レース後に熱中症という話も出ていましたので、今日のレースは参考外として考えてもいいのかなというふうに思います。ちょっとその熱中症の影響はどこまでだったというところは、本当に関係者しかわからないところではあるんですけれども、結果的にはちょっとルメールが乗れなくなるところからの、全体的な流れというのはちょっと向いてなかったというか、回りが悪かったなとイメージあります。ただ凱旋門賞はまたそれは別なレースになると思いますし、やっぱりこういう負け方しちゃうと、今後はやっぱりルメール優先が一番だと思うので、その中でレースを選んでいくのかなというふうに思いました。

蒼:ゆたさん、ありがとうございました。名馬さん何かコメントありましたらお願いいたします。

名馬電機社長:そうですね、石橋守厩舎の追っかけとしましては、4着に入りましたスマートファントムですね。この馬は去年の神戸新聞杯でも6着で権利を取れなかったのですが、その時が上がり3ハロン32秒9で最速を記録しておりました。その後、2勝クラス、3勝クラスと2600m、2400mと中距離というか、長距離ですね。中長距離の長めの方の距離で結果をしっかり残して、そしてここでも4着というところで、まだ4歳ですし、来年以降の活躍が期待できます。牝系が遡りますと、ジャガーメールと同じ牝系になりますし、長距離に非常に向くタイプだと思います。スイートスポットは狭いかもしれないのですが、どこかで長距離の重賞に手が届くチャンスのある馬なのではないかという感じを受けますので、期待しています。

第31回青葉賞

くらみゆた(以下、ゆ):青葉賞の回顧をさせていただきます。王道路線では、ちょっと重賞に足りない賞金が詰めなかった馬と2勝馬の対決となった青葉賞です。武豊騎手でキタサンブラックの下が勝つというインパクトのある結果になりましたので、見た目は良かったんですけれども、ちょっと王道路線とは差を感じさせる結果になったかなと思います。

ゲートを出ると、永野猛蔵のニシノフィアンスがハナを伺うそぶりで、外からパワーホールが先手を主張という形で、2番手にウインマクシマム、内ラチ沿いからシュガークンが4番手に控えました。人気どころではダッシュのつかなかったヘデントールが後方からという競馬になっています。2コーナーを過ぎたあたりで隊列は決まったんですけれども、予想外だったのがペースですね。前半をスローに落とすイメージが強い田辺裕信のパワーホールが逃げたんですけれども、結構力んで走りだしたというところもあったのか、刻んだラップが3ハロン目からは12秒1、12秒1、11秒8と、前半が59秒5で流れ、その後も11秒8、12秒2、12秒2という流れでしたので、ほぼ息を入れるところがないというところになりました。パワーホールの能力的なことを考えると、暴走といってもいいような走りだったのかなと思います。レース後のコメントでも、抑えが効かなかったというようなコメントがありましたので、今回に関して言うと、単純に折り合いがつけられなかったのかなというふうに思います。

離れた2番手にいたウインマクシマムは、先頭から1.5秒、後続馬群は2秒を下手していたので、最悪は3秒くらい離れていた感じで追走になっていました。直線に入ると、パワーホールが懸命に粘るんですけれども、オーバーペースでしたので、あっという間に200mを過ぎるところで沈んでいくという形。後続馬群から殺到する中では、2番手のウインマクシマムが一旦先頭に立ちましたが、こちらも脚を残せなかったという形になりました。直線ではちょっと狭くなったところを弾いて伸びてきたシュガークンが1着と、外から気迫でという感じで伸びてきたショウナンラプンタが2着、デュアルウィルダーが3着という結果になっています。

勝ったシュガークンですね。コース全体を通して、ハイペースに付き合い過ぎずに、しっかり自分のペースで走れました。キレのあるタイプではないので、溜めすぎても良くないと思うのですが、仕掛けのタイミングを含めて、武豊騎手の騎乗がさすがだったと思います。直線ではしっかり加速した後、スペースがなくなったところで、外から押し出すような形でアタックして進路を確保し、最後は直線で伸びてくるという形になりました。そういう走りができたのも、道中しっかり余力を残せたからだと思います。ただ王道路線の馬と比べると、少しインパクトに欠けるというか、力の差を感じる内容でしたので、秋以降に期待という形になるのかなと思います。

2着はショウナンラプンタですね。難しい馬ですが、鮫島克駿騎手が上手くコントロールして、末脚を引き出したのだと思います。ホープフルステークスでは賞金を積めなかった時点で、クラシック戦線が絶望的に見えましたが、しっかりダービーに滑り込ませてきたのは、厩舎の力だと思います。3着はデュアルウィルダーです。外枠で直線だけの競馬という形になりましたが、よく追い込んできました。Yoshida産駒という点で、秋になってからの本格化を楽しみにしたいと思います。

ちょっと可哀そうだったのはサトノシュトラーセですね。デムーロ騎手もレース後に話していましたが、弾かれたトロヴァトーレが結構フラフラだったので、外まで動いてしまったことで、ちょうど伸びてきたところで進路の前に入られてしまいました。さらに、そこを避けたところで、外からショウナンラプンタに挟まれるという形になってしまったので、直線ではなかなかうまく加速できなかったところがあったと思います。こちらは、この後また条件クラスからという形になると思いますが、そこでは巻き返せるのではないかと思います。

5着はウインマクシマム。かなりの素質馬で、デビュー前からいい馬体をしていましたが、ちょっと歯車が噛み合わない感じで、ダービーも絶望的になりました。このレースで、松岡正海騎手は課題の折り合いには向上したというコメントをしているのですが、そもそも折り合いに難が出てしまっているのが、デビュー戦でちゃんと競馬を教えずに雑な競馬をしたのが原因ではないかと見ています。その時乗っていたのも松岡正海騎手なので、ちょっと自分で撒いてしまった種なのかなという気もしますね。今日のペースを考えると、前を追いかけすぎているところもありましたので、いい競馬だったと本人はレース後のコメントでしていますが、ちょっと歯車も噛み合わない、もったいない競馬が続いている印象です。

2024チェアマンズスプリント

名馬電機社長(以下、名):人気はカリフォルニアスパングル、前走ドバイのメイダン競馬場で行われたアルクォーツスプリントを制しての参戦。2番人気は前走日本の高松宮記念で3着だったビクターザウウィナー、その高松宮記念を勝った日本のマッドクールが3番人気という人気順となっていました。

人気のカリフォルニアスパグルはスタート直後先頭に立つと外からマッドクールが意識的にハナを取らんと外から競りかけます。これに対して内のヴィクターザウィナー、カリフォルニアスパングルが譲らず、マッドクールには苦しい展開となりました。4コーナー、外の3番手を進んでいたマッドクールが早々に後退、逃げる内のヴィクターザウィナーに2番手から並びかけるカリフォルニアスパングルカリフォルニアスパングルが先頭に立った直後、インの4番手につけていたインヴィンシブルセージが楽な手ごたえのまま外に出し、鞍上ヒュー・ボウマンのアクションに応えるとあっという間に先頭、そのまま押し切り完勝でした。2着には人気のカリフォルニアスパングル、3着は外から追い込んだムゲンが入りました。

勝ったインビンシブルセージは元々オーストラリアで走っていた馬で昨年5月に香港に移籍。一般戦で非常に安定感のある走りを見せ、前走シャティンのG2スプリントカップ2着からの参戦でした。スニッピーツレスの3×3牝馬クロスを持つという血統、まだ4歳の騙馬でこれから香港スプリント界の中心勢力の一頭となっていくのではないでしょうか。

2024チャンピオンズマイル

名:絶対王者ゴールデンシックスティに注目が集まった一戦。そのゴールデンシックスティは好スタートを決めるとハナを主張したビューティーエターナル、さらにレッドライオン、ヴォイッジバブルを行かせての4番手からの競馬となります。
手ごたえ十分のまま4コーナーをカーブし直線に向き、「さあ、これから!」と思われたんですがここからゴールデンシックスティが伸びません。道中の隊列そのままにビューティーエターナル、レッドライオン、ヴォイッジバブルの順番で入線。ゴールデンシックスティは4着と敗れました。

ゴールデンシックスティの敗因は現段階で断定できるものではありませんが、そのうちの1つと考えられるのがペースですね。オープニングクォーター24.78、半マイル通過48.03というのは馬場状態を考慮しても決して早くないペース。そこから逃げたビューティーエターナルに12.28、11.61、11.06、11.54というラップを刻まれては流石のゴールデンシックスティも厳しかったのではないでしょうか。

勝ったビューティーエターナル、昨年末の香港マイルでは6着と敗れていましたが、ここで嬉しいG1初制覇となりました。常に安定して走れるというタイプではないかもしれませんが、今回のように自分の形に持ち込めれば今後も楽しみな存在となるのではないでしょうか。

2024QE2世C

名:地元の雄ロマンティックウォリアーと日本から香港3度目の挑戦となるプログノーシスが人気の中心でした。スタートは例のごとくプログノーシスが大きな出遅れ、対照的に内枠からスタートを決めた日本のノースブリッジが先手を主張。
ロマンティックウォリアーは外枠発進から、行きたい馬を行かせて4,5番手からの競馬となりました。

向こう正面に入り半マイルを通過したあたりで、川田騎手が勝負に出ます。最後方一気に進出、ロマンティックウォリアーの前に位置取ります。4コーナーの手ごたえではロマンティックウォリアーよりもプログノーシスの方が勝っていたようにも見えましたが、直線に入るとロマンティックウォリアープログノーシスに先んじるとそこからは完全にロマンティックウォリアー優勢。プログノーシスも懸命に抵抗しますがその差はどこまでも縮まらないと感じさせられるものでした。

勝ったロマンティックウォリアーは流石という内容で、安田記念参戦も予定されており東京のマイルでどのような競馬をしてくれるのか非常に楽しみです。プログノーシスも敗れたものの負けて強しという内容。ただ能力がG1級なのは間違いないところですがスタートの不安定さがどうしてもネックになる印象です。香港で結果を出しているのが先代との違いですが、令和のルーラーシップという感じがしてくる戦績、状況にあるのかなと思います(苦笑)

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