2023年2月サウジカップデー回顧

この記事は、2023年2月26日16時30分〜 Twitterスペース 芯力休憩所 #14「パンサラッサと日本競馬のエンドロール」からの文字起こしです。

蒼山サグ(以下、蒼):先日行われましたサウジカップデーについて、快挙が成し遂げられた部分も含めていろいろお聞きしていきたいと思うんですが、順番としてはせっかくなので日本馬の出走があったレースをひとつひとつ振り返っていきましょうか。まず1351ターフスプリントなんですけど、ゆたさんどんなレースだったか、振り返りをお願いできますでしょうか?

1351ターフスプリント(勝ち馬🇯🇵バスラットレオン)

くらみゆた(以下、ゆ):はい。勝ったのがバスラットレオン、スタートを決めてハナを取り切ったところが一つ大きかったのかなと思いました。坂井瑠星騎手はポジションを取りに行っても変にかかったりしないで、きっちりケレン味のない逃げを見せたところ、ポジションを取りに行っても馬を怒らせたり変なことしないっていうのが、技術かなって思いまして。ここは先週のレモンポップと同じですけど二枚腰を使えたのはこの辺の巧さが出たのかなと思いました。あとは、遠征が相当合うのかなっていうところもあるので、この後またドバイでも楽しみなんだろうなと思ってます。

蒼:非常に楽しみですね。

ゆ:レスシテンシア。最後のレースで力を出し切ったのかなというところで、これは出資者の方も(スペースを)聞かれてますが、多分無事に帰ってこられて良かったいうところなのかなと思います。

蒼:順調にと言ったら言い方も変ですけど、キャロットクラブ公式で特にトラブルもなく引退発表されてたんで、あとは繁殖になる段取りでしょうね。

ゆ:ソングラインがスタートで後手を踏んで、もう最初から最後までほとんど行きっぷりが悪いという状態で。クラブのコメントとか見ると気分屋っぽい感じのコメントが出たので「実力ではないよ」って感じだったんですけど、牝馬(の難しさ)というもあるので、次のレースでちゃんと復活できるかっていうのは気になるところですかね。

蒼:こひさん、いかがですか?

こひ(以下、こ):このレースはゆたさんがお話しされたようなところに尽きるかなと思いますが、こういう海外遠征するときに、多分次のレッドシーターフでもそういうお話になるかと思いますが、馬場が良いコンディションで前に行く力がある馬はチャンスを生かす権利を持ってるな、というのを改めて思わされましたね。

蒼:ありがとうございます。では1351ターフスプリントについてはこれくらいにして次に行きたいと思います。レッドシーターフなんですが、こちらはまた、ゆたさんからどうでしたか?

レッドシーターフハンデ(勝ち馬🇯🇵シルヴァーソニック)

ゆ:そうですね、長距離っていうところもあって、高低差ほとんど1メートル未満のフラットなコース形態と馬場っていうのは、日本馬にバッチリなんだなっていうのも改めて分かったレースだったと思いました。期待されてたサブジェクティビストはさすがに休み明けで息はできてなかったっていうところもあったのかなと思うんですけれども。勝ったシルヴァーソニックはこれも先ほどこひさんから話ありましたけど、とにかく枠を生かして内ラチ取ってから、もうびっちりレーン騎手が内を回って無駄のないレースで、4コーナー手前の進路確保も手応えがあったっていうのもあって見事だったので、本当にしてやったり、バッチリのレースだったのかなと思いますね。あとはオカルトチックですけど、ずっとゴドルフィンの青い勝負服が見えるところでレースしたので、血統的に潜在的な何かが発動したのかなと思ったんですけど。

蒼:はい、青服絶対殺す何かが目覚めてましたね(笑)

ゆ:(レモンポップは)フェブラリーSでギルデットミラーが出てこなくてよかったなって、見ながら思い出したんですけど(笑)。あとエヒトは初の距離にしては良い結果出したので、その辺やっぱり選択肢としては、今後が楽しみになってきたのかなと思いました。

蒼:ありがとうございます、こひさん何か付け足すことございますか?

こ:このレースについては、やっぱり去年もそうでしたが、インでソツなく乗るということが結構好走条件のレースだなと思ってまして、本当ポジションがある程度確定した時点でシルヴァーソニックは勝つだろうなみたいな、そんな安心感を持ってみられるレースだったかなと思います。やはり日本の長距離馬がこういうインにこだわれる外国人ジョッキーを乗せて使ってくるのは、かなり高確率で結果が出るというような気もしますし、賞金的にも天皇賞を目指すよりはかなり分がいいところもあると思いますので、今後もコンスタント日本馬がやってくるんじゃないのか、ハンデの付け方とかが変わらない限りは、常に上位争いできるレースなんじゃないかなと思いました。

蒼:ちょっと先の話になっちゃいますけど、(キングアブドゥルアジーズ競馬場の)ダート質が変わってたという中継がありましたけども、いい方向にこれからも日本馬向きにキープしていただけると助かりますね。ありがとうございました。

ゆ:いやーなんか、この競馬場誰が作ったのかなと思うぐらい日本馬に合いますね。

蒼:そうですね、去年ダンシングプリンスがダートで勝ったのに、さらに日本向きにチューニングしてくれたのかなみたいなところで。これから次の2レースは日本馬の勝利ではなかったので、なんとも言えないところかもしれませんが。というところでサウジダービーの方行きましょうか。ゆたさんコメントお願いできますか?

サウジダービー(勝ち馬🇸🇦コミッショナーキング)

ゆ:サウジの現地馬コミッショナーキングが気を吐いたという形になり、注目してたハヴンアメルトダウンが逃げて、マッチレースを制したという形になったのかなと思います。このレース、そうは言っても最後3着にデルマソトガケが来てるっていうのもあって、相手は強かったんですけど形にはなってるっていうところが、やっぱり凄いなっていうところ。あと、昨日話したマインドユアビスケッツのアメリカのファンはきっと喜んでるんだろうなと(笑)

蒼:ありがとうございます、こひさん何か補足ございますか?

こ:そうですね、今年の3歳ダートでそこまでまだ突き抜けた感がないメンバーで今回の遠征だったなという印象ではあったんですけど、それでも前の二頭がかなり抜けた競馬しながら、最後はこの程度(1馬身と3/4)の差までしっかり詰めれているというのは、このレースも日本馬が狙っていくにはすごく向いてるレースだなという印象がありましたね。

蒼:そのあとのUAEダービーでも結果が出てきてますから、単発で終わらないという意味でも。

こ:そうなんですよね、日本で目標がないところの代わりとして、きっちり成立させれているレースだなというふうに思います。

蒼:ありがとうございます、ではサウジダービーに続いてリヤドダートスプリントの方を、ゆたさんお願いできますでしょうか?

リヤドダートスプリント(勝ち馬🇺🇸エリートパワー)

ゆ:はい、このレースはもうエリートパワーがちょっと格が違ったレースだったのかなと思ったので、それ以上のことはないかなと思います。あとは本当に福永祐一がリメイクをきちんと3着に持ってきて、さっきのサウジダービーと一緒で、なんだかんだ言って日本馬3着まで入り込んでいるところを見ると、本当に層の厚さを感じます。というところで(福永祐一の)ラストライドはいいレースだったんじゃないかなと思いました。

蒼:はい、感動できましたね。こひさんは何かございますか?

こ:そうですね。このレースについても本当にもう勝ったエリートパワーの強さというところにも尽きるかなと思いつつも、ジャスティンが結構前行っても最後まで粘れていたりとかが、ここのダートの質的にもある程度前のポジションがしっかり取れる馬は結果を出しやすいのかなというようなところ。勝ち馬は後ろから来ていたんですけれど、差された組を見ていてもそういう印象は強まったそういったレースでしたね。

蒼:ありがとうございます。ということで、ここまで振り返りまして、そしてついに大本命といいますかサウジカップ。吉田豊が世界のヨシダユタカになりました。前からだったかもしれませんが……。ゆたさんどうでしたか?

サウジカップ(勝ち馬🇯🇵パンサラッサ)

ゆ:勝ったパンサラッサの魅力が存分に詰まったレースだったのかなと思うんですが、とにかくスタートですね。このレースのスタートをきちんと決められるように、ここまで持ってきた陣営と吉田豊がこれが素晴らしかったのかなと思います。内枠でもしちょっとでもスタートで後手を引いたら、その時点で競馬が終わっていたと思うので、スタートをきちんと決められたっていうのが一番大きかったなと。

蒼:ちょっと挟むと、今思い出したんですけどスマートファルコンがスタートヘグったのがドバイでありましたけど、あれもちょっと思い出しました。

ゆ:はい、そういうところで変なミスしなくなってきたっていうのと、今の話もそうですけどドバイとかサウジとか、それこそ去年のケンタッキーダービーのクラウンプライドもそうですけども、普通に先行できるようになってきたっていうのは、本当に隔世の感だなと思っていて。この辺のダートのアメリカンな感じのレース出てくると、昔は後ろからついていくのが精一杯で、とりあえずみんなバテたところを差してきて、掲示板もしくは6着みたいな時代が長かった気がするので、本当にこの辺当たり前のように先行できるっていうのは、ジオグリフもすごい手応えで2番手をずっと取ってたっていうところもあったんで、凄いなと思いましたね。

蒼:ジオグリフも楽しみですよね。

ゆ:そうですね、はい。ジオグリフもこの後楽しみですし、あとレースとしては2着馬にカントリーグラマーがきちんと来たんで、そレーティングがきちんと保証できる結果になったのは良かったのかな思いました。あとはそうですね、歴史が浅いレースではありますし、舞台としては勝って不思議はないレースではあったんですけど、吉田豊が逃げで全世界に名を轟かせるっていうのは、競馬をずっと見てる人間としては沁みるものがあったなというところです。

蒼:しかもフランキーとモレイラ(を従えて)ですからね。

ゆ:そうなんですよね、本当に相手が素晴らしかったのと、吉田豊の大逃げを見ると、いろいろな思いが巡りました。

蒼:確かに、おじさんたちにはいろんな記憶がありますからね。

ゆ:ちょっとね、いろんな記憶を辿りながら結果が出たっていうのは、いろいろな未完成な物語ってのがありますけど沁みるものがあったなっていうところですかね。あとはカフェファラオを結構頑張ったんで、ちょっと距離長いかなと思って舐めててごめんなさいっていうところと。クラウンプライドは実力出しきってるんでしょうけど、なかなか勝ちきれないというか相手が強いというか。難しいところで、相手は相手なんですけど。

蒼:相手の日本馬が強いんですよね。

ゆ:そうなんですよね、ちょっと出るレース出るレースで一つ上に強い馬がいて、可哀想ではあるんですけれども。どこかでハマるといいなと思いました。ジュンライトボルトは芝を走ってる馬なんで、いけるかと思ったんだけど。今回ちょっとイマイチな結果になってしまったところがあって。去年の秋はキンカメらしい器用さというか、ポンポンポンと勝ち上がってきたっていうところで、経験というかタフな流れというか、その辺が足りてなかったのかなと思いましたね。

蒼:はい、ありがとうございました。こひさんもコメントお願いできますでしょうか?

こ:はい、やっぱりこのレース本当サウジカップに合う馬ってどんな馬なんだろうというのを、日本が試行錯誤して。結果的に6頭を送り込むことによって、なんとなく傾向が把握できたというそんな印象のあるレースですね。さきほどジュンライトボルトが芝も走るという話がありましたけれど。やっぱり今回着順上に来ている日本馬ってのは、アメリカンなスピードというほどではないかもしれませんが、みんなある程度は前目のポジションを取って競馬ができる馬っていうのがあります。そういう馬が比較的結果を残しやすいんじゃないのかなというのが、今回の結果を見て思ったところですね。去年まで来ていた、例えばチュウワウイザードですとか、確かクリソベリルもゲートから後ろのほうを走っていた記憶がありますので。(日本の)ダートの一線級が来て、うまくいかなかったというところは、そもそも戦術的なところですとか、そういったところも含めてポジションが取れない馬が行くと、結構サウジは厳しいのかなと思っていたところはあったので。今回やはりパンサラッサがハナに行って、パンサラッサジオグリフという体勢で、パンサラッサが最終的にきっちり最後に勝って、ジオグリフのほうも4着と勝負圏内に、しっかり残したというところで一つ日本馬のどういう馬を連れていけばいいのかなというところの雰囲気がつかめたというところでも、すごく収穫のあるレースだったんじゃないかなと思います。あと面白かったのはカフェファラオですね。モレイラはどうやったら、あんな乗り方ができるんだろうみたいな形で。開いた内のほうに、この乗り難しいカフェファラオを突っ込ませて、ちゃんとそこから結果を出せるというところで、このモレイラの動きっていうのはめちゃくちゃ面白いなと思って見てました。

蒼:もう(モレイラは引退なので)正直もうちょっと見てみたいところはあるんですけども。

こ:本当ですね。それに今回結果的に6頭出走して、うち4頭は多分フェブラリーステークスで勝つよりも多くの賞金を持って帰れそうなんですよね。そこがこのレースのシンプルにして最大の魅力だなと思います。なので、来年からフェブラリーのメンバーは手薄になるかもしれないなということ。また今後川崎記念がゴールデンウィークの方に移るみたいなところもあるので。ちょっと今後のダート路線の路線変更も含めたところのレース選択の分かれ方というところにも、すごく大きな影響が出てきそうだなと思います。

蒼:そうですね、ちょっと話は変わりますけど大井三冠のこともあったり、一口話だったりプレイヤーとしても、ダートの魅力がものすごい勢いで上がってますよね。

こ:そうですね、やっぱり物事を試行錯誤しているフェーズが一番面白いというところがあって、多分このダート路線というのはここから5年ぐらいは、壮大な試行錯誤を皆の陣営が繰り返していくそういうフェーズになると思うので、すごく楽しみですね。

蒼:はい、というわけでぜひ特に牝馬ダートグレード路線の解説に関しては、こひさん、しばらくよろしくお願いいたします。

こ:はい、ぜひ牝馬に(サウジに)また来てほしいですね。こういう舞台にも。

蒼:はい、そうですね。楽しみにしたいと思います。というわけで今回のサウジカップデーも、昨年に引き続き日本馬大活躍だったんですけども。今年の日本馬はまた海外でも国内でもいろんなレースを勝っていくとは思うんですけれども。こうなってくるともうなんか英愛仏のクラシックディスタンス以外、どうとでもなるような気になってしまいますよね。

ゆ:そうですね、一昔前だと海外競馬でG1が時期にかぶると日本競馬空洞化みたいな論調がありましたけど、今どっちかっていうとちょっと1.5流海外行ってこいよ、みたいなそういうノリもありますし。本当にもう香港とかドバイとかサウジとか、トラックレースだったらどこでもほぼ勝てるっていうのが日本馬の今の状況だと思うので、いろんな舞台にチャンスがあっていいなっていうところと。あとはTwitterにも書いたんですけど、それでも日本競馬の最終目標が凱旋門賞に置かれてるっていう、この難易度の高さにビックリするよなと。まだケンタッキーダービーとかブリーダーズカップを最終目標にしているほうがワンチャンあるんじゃないかと思わせる、今日この頃なので。日本競馬がこの方向性で行っても、じゃあ凱旋門賞を勝てるかって言われるとそうじゃないっていうところが、難しさであり面白さであり、いつまで凱旋門賞を目指すんだろうみたいなところもあるっていう、いろんな思いがありました。

蒼:もうなんか個人的にはオルフェーヴルが責任を取れ!とずっと思ってるんですけど(笑)実際どうかは分からないですけどシルヴァーソニックだって、さすがにちょっと格的にどうかとは思いますけれども、多分国内のG1を狙うよりはヨーロッパに遠征したほうが夢はあるのかなっていう気はしますし。

ゆ:そうですね、もうちょっとオルフェーヴル産駒、徹底的にヨーロッパ持っていくみたいな作戦でなんとか責任取ってもらいたいです。池江調教師もちょっと食い気味にオルフェーヴルの素晴らしさをインタビューで語ってましたけど。

蒼:通訳すっ飛ばして(英語で喋る)という結構行儀の悪いことをしてましたね(笑)

ゆ:お前責任持って凱旋門賞を取ってきてくれよっていう感じはありますけどね(笑)

蒼:でも本当に日本馬の活躍っていうのは本当に国内のレースもめちゃくちゃ面白いですし、海外レースもめちゃくちゃ面白いですし。本当に今すごく幸せな時代を生きてるな、というふうに思います。

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