リニューアル元年・3歳ダート路線の幕開けを振り返る(羽田盃、ユニコーンS、兵庫CS)
第69回 羽田盃(Jpn1)
ダート三冠路線の一冠目という立ち位置になった羽田盃ですが、地方のサントノーレを筆頭とする有力馬の故障が相次いだこともあり、JRA勢と地方勢それぞれ4頭の8頭立てというやや寂しいメンバーに。中央馬の枠が4枠、かつ京浜盃、雲取賞の上位2頭という制限されたステップと設定したこともあり、一定の地方馬の出走を見込んでいたでしょうが、こればっかりは馬は難しいところです。来年以降、条件設定をいじるのか、このままの設定で推移を見守るのか、どちらになるでしょうか。
人気を二分していたのは、2月の雲取賞をステップにしてきていたアマンテビアンコとブルーサンの二頭。続いて京浜盃組のハビレとアンモシエラという構図となりました。
この日の大井は雨の不良馬場で、ある程度先行した馬が残ることが見えている馬場状態。外からブルーサンが先手を取りに行きますが、内からティントレットも先行していき、最内のアンモシエラもハナを主張。ここで三頭並走の形になり、終始外々を回される展開になってしまったのはブルーサンにとっては一番厳しい展開でした。その後ろにアマンテビアンコ、ハビレという並びに。アンモシエラが刻んだラップもラスト3ハロンまで12秒台半ばが続く淀みのないラップに。最後は我慢比べといった形になりましたが、4コーナーを外を回して安全に乗ってきたアマンテビアンコが、余裕をもって逃げるアンモシエラを捉えて抜け出したところがゴール。3着には追い込んできた船橋のフロインフォッサルが入り、4着に残したハビレは何とか東京ダービーの権利を掴みました。
内容的にはアマンテビアンコが完勝といった形になり、羽田盃組では東京ダービーでも一番期待が持てそうな内容だったと思います。リニューアルダート三冠の初戦を白毛馬が制することになり、これから先のタイトル積み上げ、そしてあるいは種牡馬入りまで夢が広がる結果になりました。あとは目立ったのはラップを刻んで残したアンモシエラですね。3着以下は大きく引き離しており、牡馬相手でも全く問題なく通用するところを示しました。自走は東京ダービーと関東オークスの両にらみのようですが、ブルーサンが不在になることを考えると東京ダービーでもやりたいレースができるのではないでしょうか。そしてもちろん、それ以降の牝馬ダートグレード路線を走る上では、この羽田盃の2着賞金の価値は非常に高く、収穫の大きいレースでした。ハビレはちょっと2頭との差は大きく本番でひっくり返すのは大変そう。そしてブルーサンは権利が取れなかったので、ダート三冠路線脱落となりました。
最後に3着までフロインフォッサルが押し上げた点は、来年以降のこのレースの盛り上がりのためにも、展開一つで地方馬にも出番があることを示せており、良い結果だったのではないでしょうか。JRA勢では東京ダービーへの権利は、アマンテビアンコ、アンモシエラ、ハビレの3頭が掴み取ることとなりました。
第29回 ユニコーンS(G3)
ダート三冠路線の整備に伴い、これまでの東京ダート1600mの設定から、関西、京都の1900mに舞台設定を移したユニコーンS。これにて、JRAでの世代限定ダート重賞が初めて、ダービーよりも前に設定されることになりました。ユニコーンS自体も、設立当初は秋の中山だったものが、ジャパンダートダービーの整備に伴い東京に移り、今回は東京ダービーの開放に伴い京都に移ると、ダート路線整備に合わせて性格を変えていく重賞です。今回は4月の開催となりましたが、出走馬のほとんどが2勝馬と、メンバーが非常に揃いました。いくつかのオープン特別にこれまではばらけていましたが、ここにレース選択が集中することになり、今後もハイレベルなレースになりそうです。(その余波か翌週の青竜S、東京ダート1600mのオープン特別は頭数が8頭と寂しいことに)
今回はそのハイレベルなメンバーの中での人気は、中山で強い勝ち方をしてきたミッキーファイト、阪神で強い勝ち方をしてきたムルソーに、ヒヤシンスS勝ち馬のラムジェットが続く形となりました。
レースはカゼノランナー、クロドラバールが先行し、その外に人気の一角だったムルソー。向こう正面でもずっと12秒台中盤のラップが続いており、あまり緩むところがない展開に。人気のミッキーファイトは1コーナーまでに外に出したい気持ちは伝わりましたが出せるタイミングがない形になり、戸崎騎手としては苦しい形に、二列目でも終始周りを囲まれ、動きようがないポジショニングとなってしまいました。そんな中、外から唸るようにポジションを上げてきていたのがラムジェット。後方から進めながらも向こう正面で進出し、4角では前を射程圏に。東京ダート1600mでのレース振りとは違うレース運びで直線は一気に突き抜けました。2着には終始ミッキーファイトの外の動けるポジションを取っていたサトノエピックがよく伸びて入り、踏み遅れた感のあるミッキーファイトはその後の3着でした。
勝ったラムジェットは東京1600mと京都1900mを連勝という素晴らしい内容で、一気にこの世代のダート路線のトップに躍り出ました。これで東京ダービーの出走権も獲得しましたが、本番も最有力と言って良いと思います。祖母はマル外でダートグレード牝馬路線で重賞を7勝したラヴェリータであり、大井でパフォーマンスを落とすイメージもありません。2着サトノエピックは芝で勝ちきれなかったキタサンブラック産駒が東京ダート2100mからのダート転向成功というパターンでした。東京ダービーには一頭回避馬がいないと入れないので、アンモシエラ次第。日本ダービーを使うかもというコメントも出ていました。3着ミッキーファイトは完全に内枠が響きましたが、ここで賞金を積めなかったのはなかなか痛いところ。慎重派の田中博康厩舎でもあり、この後は一息入れる形でしょうか。積極的に行ったムルソーは、緩まないラップで終始外を回し続けたのが響いたのか、直線余力がありませんでしたね。
ハイレベルなメンバーで、ハイレベルなレース、そして一定実力を反映する結果になったと思います。このレースの上位馬が古馬混合の2勝クラスを使っていっても、積極的に狙いたい印象のレースでした。
第25回 兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)
ダート三冠路線の整備に伴い、中距離戦から短距離戦に舞台が変わった兵庫チャンピオンシップ。3歳スプリントシリーズというサブタイトルもありますが、コーナー4つの一周しての1400m戦、2歳秋の兵庫ジュニアグランプリと同じ舞台設定となっています。その兵庫JG勝ち馬イーグルノワールも参戦し、バイオレットS勝ち馬のエートラックスと並んで人気となりました。他のJRA勢も昇竜S勝ち馬のチカッパ、ブルーバードC2着から距離短縮してきたエコロガイアに、JRA転入初戦となるエーデルワイス賞勝ち馬モズミギカタアガリと、かなりメンバーも揃い3歳春にこの距離の重賞が必要だったのもよくわかります。
地方勢もネクストスターとして短距離路線を整備し、川崎開催だった東日本の1,2着馬ギガースとクルマトラサンの船橋勢、園田開催だった西日本の勝ち馬、高知のリケアサブルが遠征して参戦し、短距離路線整備の目論見通りにメンバーを揃えられたように感じられました。
レースはスタート前からゲート内でチャカチャカしていたイーグルノワールが出遅れ、キックバックを浴びる形になりスタートからスピードの乗りが悪く、ここでやや脱落気味に。スムーズにエートラックス、鞍上モレイラがハナを主張し、二番手にエコロガイア、最内のチカッパはその後ろの内に入り、その外にギガースという隊列に。モズミギカタアガリは後方からの競馬を選択して、その後ろにイーグルノワールという形になりました。レースが動いたのは向こう正面、早めに外から強気にギガース森泰斗が逃げるエートラックスに並びかけていく勝ちに行く競馬を選択し、ここでエコロガイアは脱落。直線では逆にエートラックスが再度後続を引き離して逃げ切りを決め、先行したチカッパが二番手に浮上、最後外からモズミギカタアガリが差を詰めたところがゴールでした。
勝ったエートラックスは父ニューイヤーズデイから初の重賞勝ち馬。勝ち上がり率など地味に見どころの多い新種牡馬ですが、ダート短距離で世代トップクラスの馬を出せるようになると、評価はさらに高まりそうです。エートラックス自身もダートの短距離に矛先を変えてからは安定感のある成績で、今後古馬とどのレースで激突していくかも含めて楽しみです。2着のチカッパはリアルスティール産駒で、最近ダートでの活躍が目立ちます。こちらは鞍上吉村の園田を理解した立ち回りの上手さも光りました。3着モズミギカタアガリは牝馬の転入初戦ながら内容のある競馬。短距離路線に行くのか、関東オークスで距離延長チャレンジするのか、どちらに行くか気になります。イーグルノワールはもう少しスムーズな競馬ができそうな際には見直したいですね。その後ろには勝ちに行ったギガースら、ネクストスター組が名を連ねました。ここの出走馬が今後どうキャリアを積み重ねていくかで、今回の路線整備の成果が分かるかと思いますので、しっかりウォッチしていきたいですね。
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