ChatGPTの文化的バイアスを軽減するプロンプト手法「セルフアラインメント」とは?
ChatGPTなどのLLM AIは万能ではなく、「文化的バイアス」という問題を抱えていることも指摘されています。この問題を解決するかもしれない興味深い研究が発表されました。
文化的バイアスって一体何?
文化的バイアスとは、特定の文化圏の価値観や考え方、習慣などがAIの判断や出力に影響を与えてしまう現象のことです。例えば、ChatGPTのような大規模言語モデルは、学習データの多くが西洋文化圏のものであるため、西洋文化中心のバイアスを持つ傾向があります。
具体的な例として、ある国の政治体制に関する質問をChatGPTに投げかけてみましょう。西洋文化では民主主義が一般的であるため、ChatGPTは民主主義的な政治体制を高く評価するような回答をするかもしれません。
しかし、世界には様々な政治体制が存在し、それぞれの文化圏において最適な政治体制は異なります。ChatGPTの回答は、西洋文化の価値観を前提としたものであり、他の文化圏の人々にとっては偏った情報となってしまう可能性があります。
セルフアラインメント:文化に合わせたChatGPT
アムステルダム大学の研究チームは、AIの文化的バイアスを軽減する新しい手法として「セルフアラインメント」を提案しました。
セルフアラインメントとは、特定の文化の価値観を反映した例文をChatGPTに質問と一緒にプロンプトに入れて提示することで、ChatGPTの回答をその文化に合わせたものへと調整する技術です。
例えば、日本の文化に合わせた回答を得たい場合は、日本の伝統や習慣、価値観に関する例文をプロンプトに入れ、ChatGPTに学習させることで、より日本人に馴染みやすい回答を生成することが期待できます。
セルフアラインメントの方法と効果
セルフアラインメントは、比較的簡単な手順で実施することができます。
1, 調整したい文化圏の価値観を反映した例文を複数用意
例えば、日本文化に合わせたい場合は、「年上の人には敬語を使う」「和を重んじる」といった価値観を反映した例文を用意します。
2, これらの例文を実際の質問と一緒にChatGPTのプロンプトに含めます。
これにより、ChatGPTは例文から文化的な文脈を理解し、その文化に沿った回答を生成しようとします。
研究チームは、この方法によって、ChatGPTの回答が特定の文化の価値観に沿うように調整され、より適切な回答が得られるようになったという結果を示しました。
具体的な例
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