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『孟子』53公孫丑下―孟子と客人の対話 間に立つひと

孟子は斉を去ると、昼(ちゅう)の地に宿泊した。

すると、湣王のために、孟子を引き止めようとする客人があらわれ、座り込むと、孟子を説得しはじめた。
孟子は、それに答えることもなく、肘掛けにもたれかかり、眠ってしまった。
客人は不機嫌になって言った。

「私は、弟子のようにあなたを尊敬して斎戒沐浴して一晩置いてから、直言申し上げに来たのですよ。
なのに先生は、寝たふりをして耳を傾けることもなさらない。
ならば、もう二度とお会いすることはありませんね。」

そして、客人は立ち上がった。
すると、孟子は言った。

「まあ、お座りなさい。
私の方からも、あなたに説明しなければなるまい。

むかし、魯の繆公(ぼくこう)が、孔子の孫である子思(しし)の側に、間をとりもってくれる人物を置いていなければ、子思を魯に留めることはできなかったでしょう。

魯の賢者として伝わる泄柳(せつりゅう)と申詳(しんしょう)も、繆公の側に、仲介してくれる人物がいなかったならば、その身を魯に留めることはできなかったでしょう。

あなたは、老人である私を心配してくれているが、繆公と子思を結びつけたような人物にはなれないでしょう。

さて、あなたが私を見放したのか、私があなたを見放したのか。」

*『孟子』53公孫丑下―孟子と客人の対話 仲介人の大切さ

*現代語訳に満足できず、『孟子』を漢文訓読で読みたいという人はこちら

【原文】
孟子去齊、宿於晝。有欲為王留行者、坐而言。不應、隱几而臥。客不悅曰、「弟子齊宿而後敢言、夫子臥而不聽、請勿復敢見矣。」曰、「坐。我明語子。昔者魯繆公無人乎子思之側、則不能安子思。泄柳、申詳、無人乎繆公之側、則不能安其身。子為長者慮、而不及子思、子絕長者乎。長者絕子乎。」

*この記事の訳は、原則として趙岐注の解釈にしたがっています
*ヘッダー画像:Wikipedia「孟子」
*ヘッダー題辞:©順淵

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