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『孟子』49公孫丑下―斉にて、対燕侵攻―大義と天吏

ある人が、孟子に質問して言った。

「あなたが斉に進言して、燕を討伐させたということですが、本当ですか。」

孟子は言った。

「いや。…だが先日、沈同さまが燕を討伐してもよいかと、私に質問してきた。
私は、これに、〈よいでしょう〉とお答えした。

なるほど、彼がこの答えを聞いたので、斉による討伐が行われたのでしょう。
彼が、もし私に質問した時点で、〈誰が燕を討伐すればよいか〉、とたずねてくれれば、その質問には、こう答えようと考えていました。

〈天吏、つまり天の使いであれば、燕を討伐してもよいでしょう。〉

たとえば今、人を殺した者がいたとします。
すると、誰かが質問をして、このように言ったとします。
〈この人殺しを、殺してもよいだろうか。〉

もちろん、この質問にはこう答えるでしょう。
〈よいでしょう。〉

では、彼がこのように質問したらどうするか。
〈この人殺しを、誰が殺せばいいだろうか。〉

もちろん、この質問にはこう答えます。
〈裁判を担当する士師であれば、この殺人犯を殺してもよいでしょう。〉

今、燕と同じような程度の国が、燕を討伐しています。
このようなこと、私が勧めるはずがないではありませんか。」

*以上、『孟子』49公孫丑下―斉にて、対燕侵攻―大義と天吏

*現代語訳に満足できず、『孟子』を漢文訓読で読みたいという人はこちら

【原文】
或問曰、「勸齊伐燕、有諸。」曰、「未也。沈同問〈燕可伐與〉。吾應之曰〈可〉、彼然而伐之也。彼如曰〈孰可以伐之〉。則將應之曰、〈為天吏、則可以伐之。〉今有殺人者、或問之曰〈人可殺與〉。則將應之曰〈可〉。彼如曰〈孰可以殺之〉。則將應之曰、〈為士師、則可以殺之。〉今以燕伐燕、何為勸之哉。」

*この記事の訳は、原則として趙岐注の解釈にしたがっています
*ヘッダー画像:Wikipedia「孟子」
*ヘッダー題辞:©順淵



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