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【大人のための陰謀論】ミセス・ワタナベ〈1〉レバレッジ

1、ミセス・ワタナベ

外国為替取引、FXなどの世界の金融市場で、大きなうねりを起こす巨額のジャパンマネー。海外の投資家たちは、その巨大な資金の動きを、畏怖の念を込めて、こう呼びます。

“ミセス・ワタナベ”

日本の専業主婦が、昼の隙間時間に利用してFX、株投機などを行い、一人一人は少額にもかかわらず、それらが集合体となって相場全体に大きな影響を及ぼしていく様子を表した標語です。
この言葉は1997年、イギリスの経済誌『エコノミスト』が、初出とされています。

さて、この呼び名が現れてから10年後。
つまり、2007年。
この“ミセス・ワタナベ”の姿を顕現するような、ある裁判の判決が下されました。

2、“ミセス・ワタナベ”池辺雪子氏とレバレッジ

2007年、フラワーアレンジメント教室の先生であった池辺雪子氏が、脱税の容疑をかけられ、有罪の判決が下されました。
この事件の驚愕すべき点は、むしろこの判決の後のことです。

池辺氏は、およそ5億とされる所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金を、全て即金で払ってしまったのです。
日本の個人投資家は、いったい、どれほどのキャッシュを持っているのかと、世界を驚かせることとなりました。
なお、2010年には、執行猶予を終えられているとのことです。

さて、普段、ネットやニュースでこんな噂を目にする方は多いのではないでしょうか。

〈FXに失敗してとてつもない借金を背負った。〉
〈為替相場が大きく動いたので、総○線が止まった。新○岩で人身事故が起きた。〉…などなど

なぜFXで大変なことになる人がいるのかというと、FXには“レバレッジ”という仕組みがあるからです。
レバレッジをかけるということは、テコの原理、すなわち少額のお金を担保にすることで巨額の借金をつくり、そして投資をしていく、ということを意味します。
このレバレッジ、日本でFXをやる場合には、25倍が限度として定められています。
単純にいえば10万円で投資を始めた人が、最大250万円の借金をしてスタートできるということです。
そして、池辺氏が稼ぎ出していた時期は、まだFX市場の規則も整備されておらず、レバレッジは50倍、100倍と今では考えられないような凄まじい倍率をかけることが可能でした。当然ながら、これほどの倍率をかけて損失を出した場合、膨大な借金を背負うことになります。
(*投資で損失を抱えた場合、そのまま値上がりするまで持っておけば良いと思うのですが、FXでレバレッジをかけると、追証と呼ばれる一定の補償金を定期的に支払う必要があります。これが支払えない場合は、どれだけ損している状態でも、強制的に現金化されてしまいます。)

ですが、利益が出た場合には、とんでもない額の利益が入ってくることも意味します。
FXで、膨大な借金に潰される人がいる一方、池辺氏のような大きな成功者も生み出したのが、このレバレッジという概念でした。

3、レバレッジで作られた世界

レバレッジとは、ずばり借金です。

話が少しそれますが…、
FXをやる場合には、必ずこのレバレッジをかけなければいけません。
ですが、この話には裏があって…
一度やっていただければわかるのですが、じつは、レバレッジ倍率1倍という設定もできるうえに、1回の取引の手数料も安いので、下手に銀行の外貨貯金に回すよりも、無難に貯金できるという側面もあるのです。
ちなみに、筆者の友人は3〜4倍という低倍率で、少額のFXを楽しんでいます。
レバレッジと言っても、これくらい低い倍率であれば、理論的にあり得ないような為替変動(たとえば、明日、突然1ドル=50円〜30円になるとか)がない限り、破綻することはほぼありません。
きちんと自分の資金と、買うタイミング(ポジション)、レバレッジの倍率をコントロールできれば、FXは、なかなかわりのいい貯金になるのです。
(*筆者は、貯金があまりにも少なすぎるうえ、高倍率のレバレッジをかける勇気もないので、FXはやってません(泣))

さて、話を戻しましょう。
FXとレバレッジに対して、以下のような考えを持たれる方は多いのではないでしょうか。

〈なぜ借金を背負ってまで投資するのか、こんな危険なことをやるなんて頭がおかしい…〉

筆者自身も、以前はこのような考えでしたが、今は、ほんの少しだけ、考えかたが変わっています。
なぜかと言いますと、基本的に世の中は巨額の借金で回転しているからです。

自動車ローン、クレジットカードの支払い、住宅ローン、…

筆者個人が思いつくのはこれくらいですが…。
ローンとは、すなわちレバレッジをかけている、ということなのです。
たとえば、月9万円ほどしか払えない人が、何千万円もする家を買うことができるのです。冷静に考えてみれば、いかに凄まじいシステムであるかがわかります。

つまり、レバレッジは、少額の現金しか支払えない人でも、大きな金額を支払うことができる画期的な概念なのです。

住宅ローンがなければ、庶民は家を買えず、地主さんは質の高い賃貸アパートを建てることもできず、今ごろ首都圏には、広大なスラム街が形成されていたかもしれません。
自動車ローンがなければ、自動車を買うことができる人は少数の富裕層だけとなり、自動車がまばらで、観光業やインフラも未発達となり、まったく異なる社会となっていたでしょう。

ですから、池辺氏だけではありません。
社会そのものが、レバレッジの恩恵をうけている。

と、いうよりもレバレッジによって、この社会は作られているのです。

*次回予定、【大人のための陰謀論】ミセス・ワタナベ〈2〉


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