かお

 最近目覚ましのアラーム(スマホのやつ)よりも必ず(とは限らないけれど)3分前に目が覚める。なのでアラームなのにアラームの役目を果たせないアラーム機能はその後において反撃かといいたくなるほどスヌーズ機能によっていちいち8分おきにカバンの中でなり続ける。あーもうと唸りながら幾度目かのスヌーズをオフにしそのついでにメールやTwitterやネットニュースなどを観るための喜ばしい機械なる。スマホというものはときに憎たらしい存在になったりなくてはならない存在になったりしてなるほど。時代を感じる。今日も3分前に目が開きねっみなぁと思いつつ顔を適当にバシャバシャ洗い適当に化粧水をつけ冷蔵庫からパックのコーヒー牛乳を取り出しご飯茶碗になみなみと注ぐ。
 コップ買えよ、てゆうかさ、なんでコップがねーんだよ。と翔太が来るといつもいわれるけれど、じゃあ翔太が買ってきたらいいじゃんよといいかえすけれど、翔太はなんで俺?と顔をしかめけれどやっぱりコップは買ってはこない。
 お化粧をしようと100キンで買った手のひらサイズの鏡で顔を見てぎょとなる。え? 嘘でしょ? つい声がもれてしまい茶碗の中のコーヒー牛乳をぷーって噴いた。
 顔にパソコンのキーボードのあとがべったりとくっついていたのだ。
 GとかHとかDとかきちんと律儀にシールのように。くぼんではいない。本当にシールみたいにくっついている。そうだ、あれだ。タトゥーシール? ならびにキーボードシール? いやいやそれっておかしいでしょ? あたしは何度でも顔を確認をした。しかし無駄な抵抗であり事実顔はキーボードだった。
 顔を見ながら途方に暮れることしかできない。
 仕事で毎日キーボードを叩いているため顔にシミのようにくっついてしまったのかもしれない。同じ会社のアラキさんは有給を消化したあと会社を辞めた。勤続20年。処女だったとゆう噂が絶えなかった人だったけれどそれは全くの嘘で本当の顔は鶯谷で働いているなんだかよくわからないスープを仕込んでそこらにいる男に飲し眠らせていつの間にか上に乗っているという謎の『スープおばさん』だったのだ。というのはあたしの想像できっと処女だったと思う。そうして最後は顔にキーボードのシールを貼り付けたままで辞めざることになったのだろう。
 あたしも辞めどきなのかな。と思考がよぎる。勤続18年。処女ではないけれどそれに近しいものがある。翔太とはあまりそうゆうことはしない。翔太はバイで出会ったとき、俺バイなんだと真顔でいわれたから、バイってあ、バイ貝が好きって意味ですかなんてこっちも真顔でいいかえしたから翔太はまあ、そんなとこっすなんていって一緒に笑った。わりぃ、バイだけど男の方が好きな割合が多いんだ、俺。それは付き合って1年くらいしてきいた。あまり驚かなかった。1年付き合ってセックスしたのは2回だけだ。翔太は男とはしているみたいで攻めなのか受けなのかなんて妄想を膨らませているうちにさらにセックスの回数は減り2年経った今では友達みたいになってしまっている。たまに祐くんを連れて3人でパチンコ屋をやり軽くひやかしたりしている。

 顔どうしょう。明日になればなおるかしら。パソコンを扱う人に起きる職業病?アラキさんに訊いてみようかとスマホからLINEを開きトーク履歴をしたの方までさかのぼりアラキさんとの(ニックネームはアラレ)トークをみて愕然とする。メンバーがいません いやいやアラキさんはメンバーじゃないしといいながら笑うに笑えずけれど笑う。

翔太? あたし顔がキーボードになったのよ。笑 みにおいでよ

仕方ないから翔太にLINEを打つ。打ってからまた無駄だと思ったけれど鏡をのぞく。ウケる。なんなのかしら? 世の中にはよくわからないことが起きる。

なんかよくわからんけどいくわ! 紙コップ買ってく。あ、祐もおる 

翔太からすぐに返事が来てどうしてだかほんとうによくわからないけれ財布を掴み鍵を握りしめ自転車にまたがり100円ローソンにふつうのマグカップを買ってこなくてはいけないという使命感にさいなまれ今必死で自転車を漕いでいる。汗でキーボードのシールがはがれたらいいのに。どうやら今日は会社休むもようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?