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10月27日 はれ

 土曜日の昼間。なおちゃんのうちにいく。おじゃましまーすの声に返事などはない。なにせまたゴルフに行ったからだ。『え? またゴルフなの? 毎週、毎週本当になの?』ということは絶対にいわないし訪ねない。その理由は『本当にゴルフ』なのだからだ。不器用なので決して嘘はつけないたちなので浮気などしたら絶対にわかるとゆうか否認はしないしなんならすんなりと認めるだろう。それほどまで天然で嘘をつけないのだ。そんななおちゃんに対してあたしは嘘ばっかりついている。嘘のセメントで固められた人間だ。申し訳ないとは今更思わない。いくら付き合っていてもいわないことがあればいわなくてもいいし全部が全部を知ろうとするなんて不毛なのだ。知らない方がいい時もある。いや世の中知らない方がいいことの方が多いのかもしれない。好きならそれでいいじゃん。抱きしめたいから会うってそれでいいじゃん。あたしはしかしそう思っている。会いたい。この気持ちだけで十分で会いたくなる人なんてなかなか巡り会えないのだし。
 なおちゃんのうちは一軒家なのでだいたい行くと掃除をしている。たまった洗濯をし階段を吹き洗い上げをし足りなくなった日用品などを揃えておく。男やもめが長いといってもマメに掃除など出来ずに週末に綺麗にしておくのもあたしはまるで嫌じゃないしむしろ好き好んでしている。しておいてよ。そんなことは一回もいわれたことなどはない。ただ好きでしている。見返りなど求めてはいない。
 夕方きちんと帰ってくるけれど帰ってきた途端ビールを飲むので呆気なく泥酔状態になり呂律が怪しくなりいつの間にか舟を漕いでいる。んー。その横顔を見るたびにはぁとため息をつく。たったの1週間でも会わなければ話すことも多少なりあるけれど話などあまりしなくなった。なおちゃんの週末はいろいろと忙しいのだ。これがもし結婚をしていて子供もいたりしたら奥さんは文句の一つでもいうのだろうか。「もう! あたしばっかり」とか「たまには子供と遊んでよ」だとか。
 そういえば結婚をしているときはゴルフはやめていたといっていた。きっと奥さんにお小言の一つでも嫌味の二つでもいわれたのだろう。離婚をしてしばらくは寂しかったけれど今となっては一人は本当に楽だし好き放題し放題できるし今の生活の方がいいなと認めた。へー。そうなんだ。あたしは別に奥さんでもないからどこか他人事のようにぼんやりと聞いていたけれど実際あたしも今の関係が非常に楽なのでこのまま継続でいいと思っている。深入りをしない。干渉をしない。男と女は大抵これだけ守っていたら決して別れなど来ないはずだけれど別れる理由は他に好きな人が出来たときだと思う。心変わりをしたのならもうどうしょうもない。同じ部屋で息をするのも嫌になるし特に男性の方が顕著に態度に出るのは今まで付き合ってきた男どもから推測したデーターだ。まあ仕方のないことだ。男も女もひどくたくさんいるのだから。出会いなど実際コロコロと転がっている。石のように。皆それに気がつかないだけの話だ。泊まって朝。なおちゃんは市の卓球大会に出かけた。町内の代表で出るらしい。昨夜「練習をしたんだ。けどボールが小さすぎて見えないんだよ。全く」真剣な表情で嘘みたいなことを話すなおちゃんはあははと力なく笑いはずきルーペがいるかもなと続けヤダァそんな大げさなとあたしはいいいやいや本気だものとなおちゃんはあははとまた笑ったのであたしもあははと笑った。近眼でもあるけれど41歳になり老眼が来たと喚いている。仕方ないよだってそれは抗えないものだからそうなだめたけれどああとうとうそんな時期に差し掛かってきたんだなぁと他人事じゃなく肩をすくめた。41歳という年齢は曖昧で大人であり初老でもありけれどいかんせん心だけは若いのであたしたちはお互いに途方に暮れるときがある。お互い歳くったなぁとも思うし情熱的に燃え上がるセックスなどはいつしたかも思い出せずそれでも会えばまだ嬉しいし卓球頑張ってねといえばうんとかわいい返事も返ってくるので時間はゆるゆると流れていくけれどそれで幸せだと思いたい。打ち上げは飲み放題のお店らしくきっとまたべろんべろんで帰ってくるに違いなく明日の朝「オェー、オェー」と何度かやって会社に出かけていく様子がありありと脳内に浮かぶ。

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