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天気の子 について(ネタバレしかない、危険、危ない、見るな)

まず、ネタバレをするから読まないでもらいたい

また、暴言を多用するから読まないでもらいたい

ただ、この映画が好きな人には間違いなく読んでもらいたい

何より、不快な気持ちで映画館を後にした人がいたなら必ず読んでもらいたい

俺は見たことがない


新海誠という作家のイメージで真っ先に思い浮かぶのは、根はかなり暗い奴だな、ということ。
あと、都留泰作の『ムシヌユン』をツイッターで絶賛していたが、
多くの君の名はファンからすればどうでもいいツイートだったようで、
イイネの数が全く伸びなかったということ。
ムシヌユンを絶賛する時点で相当な変人だ。
あれほど特異で変態的な漫画の最終巻の帯に、すすんで推薦メッセージを寄稿するくらいだから、筋金入りの変態であると思われる。
言の葉の庭の創作目的は女性の足が好きだから、元々の目的はただそれだけだったらしい。
天気の子では小学生男子に女装をさせて、途中から主人公に敬語を使わせる。
潤沢な製作資金を得て、もはや変態としての作家性を抑えなくなった。
君の名は、で隕石を落として田舎町を吹っ飛ばしたり、
処女作では女の子を兵器にして宇宙に放り出す、
しかも文通をさせている。
性癖がマニアックなのは間違いない。
サディスティックなシチュエーションの構想や、オリジナルのプレイ内容を思いつくたび電車でメモってそうである。

天気の子の結末を書くと、東京の大半が水没する。
ウォーターワールドとまではいかないほどに。
天気の子とはいったい何の子なのか、解き明かされるかされないか
ラストまで微妙な線ではあったが、理解した範囲で大雑把に言い表すと
それは単に普通の人間のことを指している。たぶん。
二人の主人公はただの人間である。
それ以外はよくわからないし、作中で一切明言されていない。
共通項は人間というだけ。運が悪い中高生二人が運悪くトラブルに巻き込まれる。中高年だって別にいい。
誰だってなりうる存在 ということを強調するため、変に色をつけるのを避けたのかもしれない。
廃ビル屋上のオンボロ鳥居に願を掛けただけで、
主人公はいつの間にやら神通力を得る。
男の方も、ラスト付近で彼岸の向こう側に干渉できるようになる。
向こう側とはあの世と言っても差し支えない。
これも謎の鳥居の力である。
すごいねパワースポット。それしか言えねえ。
ミスリードを誘う言葉として生贄や人柱といったものが作中で語られるが、
天気の子=生贄、人柱 ではなさそうだ。
生贄として捧げられてから
「あたしもう面倒くさいからやめるわ生贄」
と放棄する人間が天気の子で、
「生贄でもなんでもいいから結婚しよう」
と奪って逃げるのが天気の子、と捉えたほうがしっくりくる。
要は、めげない子 である。
いつだってどんな不運に見舞われても
諦めたり諦めなかったりしろよ、という。
雨風にも負けず、マイナス50度にも慣れて、湿度100パーセントにも
摂氏45度にも退かず、
台風に滅茶苦茶にされ津波に飲み込まれ、火山灰をかぶり
地震警報のブザーが鳴ると玉袋を縮みあがらせる。
ひ弱な人間そのものが天気の子ということなのかもしれない。
人間ってほんと糞厚かましい生き物だよな、ってことを感じ取れれば、
たぶんこの映画の90パーセントは理解したも同然だろう。
空に広がる謎の世界については
抽象的にしか見せてくれないし、そもそも掘り下げるほど重要な
シーンではないため割愛したのだろう。
人間なんて、神さまの掌の上で気まぐれに転がされて
あっさり死にますよと、そんなものでしかなくそれだけわかれば
小難しい設定などはいらないという新海流の粋な計らいだと捉えたい。
空中にドラゴンやクジラを浮かべておけばそれっぽくなるしもう十分。
大事なのは「はい皆さん、チェックポイントを今通過しましたよ」
ということであり、天気の世界ってこんな感じの乗れるワタアメが
モヤモヤっと固まったり連なったり広がったりしてて、
思わず透明になって浮かび上がっても飛び降りれば元に戻れるから、
そういうことを知っておいてくれればそれでいいから
という、通過儀礼の意味しか持ち合わせていない。
ストーリーに関してはとりあえず中島みゆきを聴いておけばいい。

空と君との間には今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる

大体こういう感じ。
脇役がなかなか魅力的で、どこかで見たことがあるような
風貌、属性付けの癖にとっつきやすいなという印象。
なんだそのエラそうなヒゲ、とユニコーンの曲がかかりそうな子持ち別居のおっさんから、
乳がデカイ就活女、占いをするババア(野澤雅子)、依頼者のババア、
チンピラ、ヒカルの碁に出てきそうな小学生の弟、ガキ、
住職のジジイ、リーゼント、女性警察官、かすれた声のジジイ、
過保護なババア、一度死んだ前作の連中
など、短時間でも覚えられるようにキャラ付けが明瞭で、声優の人選もそれを補完できるよう配されている。
新海誠が自分の性を押し出すためにこれらの脇役で
巧妙にモザイクをかけているため、
テクニカルなサービスに気をとられた観客は目の前のAVを
AVだと認識しないでいられる。
もちろん天気の子はAVではない。
が、新海誠はある意味で男優なのである。
天気という暴れん棒を使い、
か弱いながらも意外な強さ生命力を持った
二人の向こう見ずな青少年と、そいつらを取り巻くオッサンオバサン、
ジジイババアガキをさまざまな趣向を凝らして、
新海流モザイクをかけつつ責めあげるのが
この映画のすべてだしそこを思いっきり楽しむべきだ。
いつの日か別名義でひっそりとAVを撮ってもらいたい。


都留泰作先生の新連載の企画が通ったようで、
新海監督もさぞやウキウキしていることだろう。
君の名は。
天気の子
最後にムシヌユン
それぞれの作品の世界をおさらいし距離を繋ぎ合わせたら、
モザイクの向こう側にさえ踏み込めるという確信がある。
変態し続けろ。どうせ異常な世界だから。
変態になった方がいい。

という映画。

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