ハンバーガー屋さんの読んでない小説の話Vol.1
おっす、おら何にもしたくないゾ(挨拶)
みなさん元気ですか。僕は暑くて元気じゃないです。
寒いのはいくらでも服を着込めばいいだけだったり、お布団から出なければ万事解決するのに対し、暑いというのはもうどうにもなりません。
生来外出がそんなに好きではない僕としては、外気に触れる事がそのままスリップダメージなんですが、上記の理由の通り事前準備ではどうにもならない暑さというものは、僕の外出嫌いを一層加速させるのです。
大人だから耐えられるけどね。
夏、■すべし。
・読んでない小説の話
さて、みなさんは最近小説を読んでいますか?
弊社代表曰く、
『経験上ほとんどの人が最早小説など読んでない、「学生の頃は読んだんだけどなー」と言ってくる。■ね!』(※僕の意訳を含みます)
とのこと。
経験上、、、大好きな枕詞です。
僕の経験上の話でいうと、読みたいのに読めず積読問題にぶち当たっている印象を抱いています。
昨今、有意義かどうかの問答は置いておくにしても、テクストを読める機会が爆発的に増えていますよね。それが影響しているのかなーと漠然とした思っています。
ほら、ネット上でも沢山の小説やエッセイが転がっていますし、昔は雑誌で読んでいたようなインタビューもレビューも批評も玉石混交とはいえ多数ある。そのおびただしい量のテクストを追いつつ、物理的な出版物を読めるかというと、難しい気がします。
いや、好きなら読めという話なんですが。
ともあれ、本が読めなくなってしまった現代人の僕が、早く読みたい読んでない小説の紹介をしてゆきます。
『バーナード嬢曰く』っぽくないですか?(まあバーナード嬢も数話読んだきりですがね!)
No.1 『三体』 劉 慈欣
きっと凄まじい数の積読を生み出した大作でしょう。
僕が最初の目にしたのは大森望さんのTwitterだったか、、、
そもそも、読んでもいない『三体』の話をするとしたら、僕の場合はそこに到るまでの経緯を書かねばならないので、まずはテッド・チャンとケン・リュウの話をしますね。
テッド・チャンについて知らないひとはWikipediaを参照してください。
ケン・リュウに関してもこちらからドゾ。
まず、僕が中国SF(このくくりは相応しくないのですが)を意識するようになった大きなきっかけはまず間違いなくテッド・チャンです。
はじめに強調したいのですが、テッド・チャンの作品にはその生い立ちが関係しているものは一切ありません。ヒューゴ賞/ネビュラ賞をダブル受賞したチャイニーズアメリカンの作家(この表現も最悪なので本当は嫌です)が当時はおらず、まだ未熟なクソ青年だった僕はそのカテゴリーも込みで「なんてとんでもない作家が同時代に存在するんだ!」と感じてしまったある種の過ちが発端であったというだけの話です。
もっとも有名な彼の作品「あなたの人生の物語」のタイトル自体は「トップをねらえ2!」の最終話になっていたことから知ってはいたんですが、元ネタが読みたいと言う気持ちが購買意欲に繋がったのは2010年頃、それこそ奇しくも「魔法少女まどか☆マギカ」が始まるちょこっと前だったはず(ネタバレにつながるので深くは語りません)。
うえお久光の『紫色のクオリア』やハインラインの『夏への扉』、ヴォネガットの『タイタンの妖女』を並行して読んでいて、時間系SFを読むブームが来ていたのかもしれません。
テッド・チャンの良さといったらハードなSFの世界設定と言うより、言語や認知に対しての洞察です。それらがテクノロジーによって変容している様を精緻な筆致で紡ぎ出すんですよ。ここに深い快感を覚えて楽しんでいたわけです。
特に好きな作品はやはり「あなたの人生の物語」「地獄とは神の不在なり」「息吹」辺りなんですが、『あなたの人生の物語』を誰に貸したか忘れて紛失。「息吹」は『SFマガジン700 海外篇』で読んで数年後に単行本も買うが積読という有様、、、
まして店でこのブログをしたためてるので、記憶のみが頼り。読み返すこともなく無謀にもSFの記事なんぞ書いとるわけです。地獄。
閑話休題。
さて、繰り返しになりますが、テッド・チャンの生い立ちは彼が編み出した作品を享受する上で一切関係ありません。かつての僕が、彼の生い立ちを非常に短絡的かつ無神経に認識していたという話です。
しかし、彼の存在によって僕が中国に対してほのかな興味を抱き始めたのもまた事実。
「中国ってどんな国なんだろう」という漠然とした興味を抱きつつ、さしたる勉強もしないまま時は流れて、、、曖昧かつ歪んだ認識を粉砕してくれたのがケン・リュウでした。
僕が初めて読んだのは2017年か2018年だった気がします。
友人から「ヤベーのが出たぞ」との報を受け、文庫版の『もののあはれ』と『紙の動物園』を購入。その時期は時間があったのか携帯が止まっていたのか、本を消化できていた記憶。
友人のいう「ヤベーのが出た」に間違いはなく、本当の本当にヤベーのが出たと当時は大盛り上がりしておりました。
『もののあはれ』収録作品でいくつか例をあげるなら、表題作「もののあはれ」は『ヨコハマ買い出し紀行』(文庫の解説にもありますがガチガチなオマージュ)やジェイムズ・ティプトリーJrを彷彿とさせる柔らかいSF(結末はビター)で、「選抜宇宙種族の本づくり習性」は藤子F不二雄や安部公房のようなナンセンスというかすっとぼけてるというか真面目すぎて馬鹿馬鹿しい作品で、「良い狩を」(原題の「good hunting」のが好き)はまさかの中華スチームパンクという、全編通してオタク仕様。
テッド・チャンに影響を受けていると自身でも言っているケン・リュウですが、比べると(SFとしては)大幅に口あたりがやわらかいです。
ただ、「結縄」や「円弧」のようなハードでソリッドな作品もあり、作風の幅広さによだれが止まらん、、、
そんなの彼の作品ですが、自身が移民である事を強 く自覚している影響か作中に人種や国、コミュニティといったテーマを散りばめる傾向が強いです。「紙の動物園」や「文字占い師」は特にその色が濃く、テッド・チャンからケン・リュウへと流れ着いたことで、2010年の当時に抱いていた偏見は粉々に破砕。
ボンヤリとした気持ちでは1ミリもテッド・チャンを取り巻いていたであろう環境は想像できないと痛感し猛省しました。
なんというか、それ程までに痛切なんですよね、移民の話も多民族国家の話も。
作文能力の低さ故にうまく書けないので、上の二篇だけでも読んでください。読め。
んでんでんで、そんなケン・リュウは作家であると同時に中→英の翻訳家でもあります。中国ネタSFがアホほど面白いと自作で教えてくれた彼は、興奮冷めやらぬ我々に彼編集&翻訳の中国SF作品集『折りたたみ北京』を発表。
翻訳はよしちくりー!と思ってたのに単行本で購入していなかった僕は、文庫が出たあとに購入!
長くなっちゃいましたけど、ここで劉 慈欣の作品が取り上げられていたことで出会ったわけです。
ケン・リュウは『折りたたみ北京』の解説で、中国のSF作品を「中国SF」というジャンルで語るのではなく、「SF作品」としてとらえてほしいという意思を持って翻訳したというニュアンスの文章を寄せていました。
なるほど、そこまで彼がいう作品群の中でも超大作と言われている『三体』ってどんなもんなのよ、そう思って購入したものの未だ僕の部屋で僕に読まれる事を待っているわけです。
なんだこれ、ほとんどテッド・チャンとケン・リュウのはなしじゃねぇか!
まぁ読んでないんだからしかたないですね。
とにかくこのような気持ちを読む前に抱いているのに、読んでない訳です。
多分ハードカバーがめんどくさいというのが理由としてでかい。
早く読みてー!というところで今回ののハンバーガーに関係ないお話はお開き。
今回から毎週金曜日にnoteを更新するんだってばよ。
じゃあの。
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