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不用意なストレート

ポイント練習中、誰かがエースを取られて落ち込んでいると、
市コーチはよく
「今のは不用意なストレートだったから決められたんだよ」

というようなことを言います。

この言葉だけを聞くとみんなは
............❓❓
『不用意なストレート』❓❓❓
なんだそれ‼️⁉️              と言いたくなると思います。

この『不用意なストレート』とは一体なんなのでしょう。
今日はそれについて解説していきます。

まず、この言葉の意味がわかるためには「ストレートとクロスの違い」について理解している必要があります。

「ストレートとクロスの違い」はいくつかありますが、最も重要な要素は
「リスクの大きさ」だといえます。

下の図は、同じ位置からクロスを打った場合とストレートを打った場合の、相手が次に打てる範囲の比較です。(黒線が自分のショット、黄線が相手の打てる範囲、青のもじゃもじゃはプレーヤー)

少し戻れば守るべき範囲の中心に立つことができ、
ディフェンスしやすい
守るべき範囲の真ん中まで距離があるため、守りづらい

このように見ても分かるとおり、相手の次のショットを守りづらくなるという意味で、ストレートは諸刃の剣(もろはのつるぎ)的なリスクの高い選択肢であるといえます。

さらに、ここでもう一つポイントとなるのは「相手に到達するまでの早さ」です。
ストレートはクロスに比べて距離が短く、相手のいる位置まですぐに到達してしまうので、戻る時間の確保が難しいです。

まとめると、
「守るべき三角の中心まで遠くなる」
「戻る時間が確保できない」
という二つの理由から、ストレートはクロスよりもリスクの高いショットであるといえるのです。

ストレートの使い方

では、そんなリスクの高いストレートは、試合中なるべく打たない方が良いのでしょうか?

この問いに対し、市コーチはこう答えます。
-「そんなことはない。むしろストレートは強力な武器になる。」

市コーチいわく、ストレートを打っていい場面は二つあると言います。

一つは
「確実に決め切れる時」
二つ目は
「時間を失わないボールが打てる時」

一つ目の「確実に決め切れる時」というのは簡単で、いくらその後に隙ができようが、そのショットで決め切ることができる場面なら関係はありません。
決め切るというのは必ずしもエースを取るということではなく、次で決められるくらい追い込む、ネットに出られるアプローチということまで含まれています。(ネットに出るアプローチはクロスよりもストレートが有効ですが、それがなぜなのかはまた別の機会に説明します。)

二つ目の「時間を失わないボール」は、

下に貼った動画の1:51部分、1stセット4−4の40ー40でアルカラスが打ったリターンの次のショット(いわゆる4球目)がそれに分類されると思います。

このショットはストレートであるものの、次の守備を疎か(おろそか)にしない「時間を失わないボール」であるといえるので、カウンターのリスクが抑えられています。
フォアのクロスラリーを続けるのが危険な場合や、この動画のように相手にバックハンドクロスを打たせて回り込みの展開に持ち込みたい場合などは、あえて速度を落とした滞空時間のあるストレートを使うと効果的です。
もしもこのストレートに高さがなく、まっすくな棒球になっていた場合、アルカラスは時間を失ううえ、相手にとって打ちやすい高さになるためジョコビッチの強烈な反撃を受けてしまいます。

ちなみに、、、!!
動画の6:44部分、3rdセット1−0の30−40は、
一つ目のストレート二つ目のストレートのどちらもが活かされているポイントです。

リターンの次のショットでアルカラスは高く時間を失わないストレートでバックハンドクロスラリーへ引きずり込みます。
そしてその後もう一本高く跳ねるショットをクロスへ運んだ後、「ここだ!」と一歩前へ入りストレートへとエースを決めます。確実に決められる場面であれば自分の時間の確保は必要ないという、先ほど書いた一つ目のストレートの使い方ですね。
アルカラス、ジョコビッチの二人はどちらもストレートの使い方が絶妙なので、ぜひこの試合の他のポイントもチェックしてみてください。


うまく使えば強力だけどなんとなく“不用意”に打ってしまうと危険なストレート。
リスクを理解し、ボールの質に注意して使いこなしていきましょう!!!
              
しんのすけ

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