おい、俺の筋肉
成人しても所謂少年の心が根強い私は、
肉体的な強さへの憧れが未だにある。
もっと簡単に言えば、筋肉をつけたいのである。
持病の問題もあるが、私は昔から痩せ型だった。
同世代に比べればそこまで大食いなわけでもなく、
筋肉が目立つような体型ではなかった。
身長はおよそ175cmあるのだが、
生まれてこの20数年体重が60kgを上回ったのは
2回目の入院前にやけ食いをしていたときだけだ。
程度で言えば「マジでダイエットしなきゃ」
という人並みのコンプレックスだ。
筋肉で体重を増やしたい。
だがこれはボディビル的な「魅せる」ための
筋肉への願望ではなく、
「強くなりてぇ」という「使う」ための筋肉への
願望である。私は強くなりたいのだ。
だが悲しいことに、トレーニングにおいて
鍛錬以上に大事な食事の面で私には
ディスアドバンテージがある。大腸だ。
「暴食で死ぬ」という特性のある私の身体は、
必要以上の食事を受け付けない。
太るために脂質の多い食事を無理やり
続けてしまうと結果として入院して
最低10kgは痩せるという悲しい業を背負っている。
10kg痩せるとパフォーマンスはだいぶ落ちる。
退院後リハビリのために臨んだ剣道の稽古で
女子高校生にフィジカル負けしたときは
本当に泣いちゃうところだった。
勿論、剣道の分野の話においても体重=強さの
方程式が成り立つとは限らない。
身軽だからこそできることもあるし、
技の練度は肉体的な強さとはまた別の話だ。
とはいえ、私は思い込みが激しいうえに
無駄に精神力が強く、どんなに疲れていても
遅く帰ってきても毎日1時間は筋トレをするという
無駄な努力をすることができる。
「炭治郎は1日1000回真剣で素振りをしているし
虎杖悠仁は70kgも体重があるわけだし
歳上で身体的に恵まれていない俺が
休んでいたらだめだ」という馬鹿みたいな
モチベーションの上げ方ができてしまう。
そうやって私は日頃筋トレに励んだり、
日常生活でエスカレータを避けて階段を使ったり、
公園で素振りをしているところを酔っ払った
ギャルのグループに「お、柱じゃん」とか
言われたりしている。
いくら筋トレをしたところで
筋肉に変わりうるエネルギーが摂取できなければ
体重が増えるわけでもない。
ここ数年は1、2kg誤差の範囲で
体重を上下させるに留まっている。
このようにして、着実に蓄積した
ただの疲労が暴食と同じように私の身体を蝕み、
また全然体調を崩すのだ。
助けてくれ。
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