真偽

先日、生まれて初めてヨーロッパを訪れた。


景色も食べ物も、日頃摂取しないものが

 

身体に入ってくる刺激は、


新鮮さと適度な不快感があり、


幾ばくか寿命が延びたような心地がした。




食の違いというものが


やはり実感した中で一番大きな異文化だった。


口に合う合わないはもとより、


「ちゃんとしたものを食べてないな」という思いが


常に胸もとい腹を支配する。


日本人にとっては、主菜を米でいただくのが


「ちゃんとした食事」なのだと痛感した。


無論、それでも美味しいものは美味しい。



フランスのビストロで食べたグラタンが


多分いちばん美味しかった。


本場ものはやはり違う。




グラタンといえばフランス発祥ではあるが、


ドリアは日本発祥なのはご存知だろうか。〔注1〕


「ドリア」は「混合」という意味で、


昭和の初め、横浜のホテルの料理長が


体調を崩した銀行家に作った、バターライスに


エビのクリーム煮を掛けたものが原型とされる。


それを弟子たちが改良し、チーズを乗せたものを


一般にドリアと呼ぶのだ。〔注2〕




このように、起源を辿ると意外なところに


その端緒が見られるということは間々ある。




例えば、二段ベッドの由来は、意外にも


西洋ではなく新羅時代の朝鮮半島にある。〔注3〕


唐から流入した風水に傾倒した


新羅の王族の2人の兄弟が住まいの建て替えに際し、


同じ部屋の同じ寝床を強く要望したため、


困り果てた従者が、今で言うベッドフレームを


無理やり重ねて作らせた寝具が


二段ベッドの始まりだとされている。〔注4〕



そもそも風水も中国ではなく、


古代ギリシアの哲学思想が


その考えの源流にあたる。〔注5〕


エンペドクレスやアリストテレスが


火・「風」・「水」・土の四元素を


唱えたことからも想像できるように、


自然や宇宙の調和を捉まえようとしたのは


ギリシアの哲学者たちである。


物質の根源となる要素と、


人々が体内に取り入れる大いなる存在の息吹


という意味の「プネウマ」という概念を


組み合せて、精気の流れのようなものを


可視化しようとしたのが


そもそもの風水の始まりである。〔注6〕



ギリシア風水の始祖、アナクシメネスは


「閉ざしていては、空気と思想は滞る」


という言葉を残している。〔注7〕


いつでも外に出られると思っていても、


部屋の中にいては新鮮な空気は吸えない。


異文化との摩擦を恐れず、


思い込みを廃して審美眼を鍛え、


真に正しいことを見極める。


それが風水的にも良いらしい。



アナクシメネスは、


そういうことを現代の私たちに





教えてくれていたりいなかったりするんですかね。











・脚注
〔注1〕本当
〔注2〕諸説あるが本当
〔注3〕嘘
〔注4〕かなり嘘
〔注5〕嘘すぎる
〔注6〕総じて嘘
〔注7〕ほんまごめん、嘘


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