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【映画】今、生きていることに感謝~「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」

話題作「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」を見てきました。映画館で予告編を見たときから、気になっていた作品でした。と、同時に予告編を見ただけで「これは泣くな」と思っていましたが、案の定、じわじわと目に涙が滲んでいました(苦笑)。若者層をターゲットにしている作品ですので、ぜひとも10代、20代の若い方にも見て欲しいと思いました。では、早速本編の紹介から、感想を書き連ねていきたいと思います。(ちなみに、ネタバレを含みますので、これからご鑑賞される方はご注意ください!)

SNSを中心に話題を集めた汐見夏衛の同名ベストセラー小説を映画化し、戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生と特攻隊員の青年の切ない恋の行方を描いたラブストーリー。親にも学校にも不満を抱える高校生の百合は、進路をめぐって母親とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕跡で一夜を過ごす。翌朝、百合が目を覚ますと、そこは1945年6月の日本だった。通りがかりの青年・彰に助けられ、軍の指定食堂に連れて行かれた百合は、そこで女将のツルや勤労学生の千代、彰と同じ隊の石丸、板倉、寺岡、加藤らと出会う。彰の誠実さや優しさにひかれていく百合だったが、彼は特攻隊員で、間もなく命懸けで出撃する運命にあった。

映画.comより

ベタな展開、ツッコミどころもありますが・・・

主演の百合役の福原遥さんが悪いわけでは全くないのですが、この百合がなかなかの曲者でして、途中まで全く感情移入出来ませんでした。お父さんを亡くし、お母さんがパートを掛け持ちして百合のために懸命にお仕事をしているのに、邪魔者扱い。正直、イラっとしましたね、ちなみにお母さん役の中嶋朋子さんが名演を披露!母の娘への愛情表現で泣きそうになりました。

空気の読めない発言連発の主人公・・・

タイムスリップしてからも、偶然に特攻隊員や食堂の女将に助けられ、そのまま食堂で働くなど、好都合展開も満載。戦時中ということを理解できずに「空気の読めない発言」を連発。この当時、おそらく怖かったのは日本人特有の「村社会」。「村八分」という言葉がありますが、同調圧力が強い民族故に、良くも悪くも強い力をもっており、悪い場合、はみ出た者をつまはじきにしてしまう、恐ろしさを持っていると思います。ですから、百合のような「空気を読まない、戦後の常識」を軽はずみに発言するなど、御法度もしくははじき出されるのでは・・・と見ていてこっちが怖くなりました。

丁寧に描かれていた特攻隊員たちの日常

一方、特攻隊員たち(お腹ペコペコ隊)に関しては、食堂でのシーンが中心ではありましたが、とても丁寧に描かれていました。これから特攻隊として飛び立つ直前期、という設定で、オフの日に野球を楽しんだり、訓練後に食堂に立ち寄るというような「オン」以外の様子が全面に出されている映画も珍しいな、と思いました(ま、戦争や訓練がメインの映画ではないですから、当たり前なんですが)。

途中に挟まれる、「本音」に泣かされた

ということで、設定上仕方ないのですが、ご都合シーンも多いのですが、そんなことは考えず、メインの2人の恋愛を主軸にしながら、途中に挿入される「戦争」の悲劇にまつわるエピソードを見ていくことをオススメします。基本的にこの2つが繰り返し描かれていくので、とてもテンポが良く、さらに空襲シーンなどは非常に本格的で、先日見た「ゴジラ-1.0」かと思うような出来でした。

やっぱり泣けるのはラストでしょう!

ネタバレと書きましたが、ここはぜひ本編をご鑑賞頂きたいと思いますが、私が一番泣かされたのはラストシーンでした。タイムスリップを経験して、大人になった百合の逞しさ(福原遥さんが好演!)と母娘の邂逅。ここを見ると明日への元気が湧いてくるようでした。ぜひ、将来に悩む若い方こそ見て欲しい名シーンです。それ以外にも福山雅治さんの書き下ろしエンディングソングも名曲。最後まで非常に丁寧に仕上がっていました。

いろいろ書いていますが、これはぜひ見て欲しい映画です

冒頭、ちょっと(相当?)、ご都合主義だの、空気が読めないだの、くさしておりますが、結果的には映画館で観て良かったと思う作品でした。戦争モノ、というと、どうしても悲惨なシーンや暴力的なシーン、もしくは人間の「負」の面を強調した、重い映画をイメージしてしまうと思いますが、この作品は基本、戦争時代を舞台にした「恋愛映画」なので、そこまで重たくなりすぎず(もちろん特攻隊員がテーマなので、どうしても一定の重厚さはありますが)、それでも戦時中に関する「学び」を得ることが出来ると思いました。

特攻隊員の佐久間の言葉が心に残る

百合を助ける、特攻隊員の佐久間(水上恒司さんがこれまた好演!彼はこういった生真面目な役が似合いますね)が、百合や仲間の隊員に掛ける言葉、一つ一つがとても「刺さる」と言いますか、「重み」があり、心に残りました。「本当はまだまだやりたいことがたくさんある、しかし、自分は国のためにやらなければならないんだ」という覚悟。もちろん佐久間以外の隊員たちも、妻子持ちや、婚約者を郷里に残した者など様々。食堂では多少、羽目を外して陽気に振る舞う彼らも、いつ出発の命令が出るかは分からない。そんなギリギリの状態であっても、今を精一杯生きる姿が描かれていました。

翻って、今(令和時代)はどうだろうか?

ここでいきなり柄にもなく、真面目な話題に展開します。先日、「ゴジラ-1.0」を見たばかりだからでしょうか。立て続けに大東亜戦争モノとなると、どうしても考えてしまうのが、戦後、日本の復興のために汗水垂らして懸命に働いた先祖の方々がいたからこそ、今の繁栄を享受できるはずなのに、私たちは彼らの苦労に見合う姿なのでしょうか。特に連日スキャンダルで賑わせている国会議員の方たち。お金も大事でしょうけど、国を豊かに発展させる事の方が大事ですよね?ぜひとも議員さんたちこそ、見て欲しいと思います、本当に。

食堂のモデルは知覧の「富屋食堂」?

主人公の百合がタイムスリップ後に身を寄せるのが、軍指定食堂の「鶴屋食道」。そこの女将さんがツル(松坂慶子さんが貫禄の名演!)というのですが、もしかしたら鹿児島の知覧にある「富屋食堂」の女将さんがトメさんと言うそうなのですが、おそらく隊員たちの「お母さん」代わりとして、彼らの面倒を見ていた全国各地の「お母さん」たちがモデルになっているのかもしれません。郷里の母(もちろん父もですが)に代わり、若い彼らを食べ物だけでなく、精神面でも支えになっていたのかもしれません。きっと全国にたくさんいたんでしょうね。


さいごに~今、生きていることに感謝!

この作品は戦争中を舞台にしたラブストーリーですから、戦争に関するエピソードが決してメインではないのですが、結果として心に残っているのは有り体になりますが「戦争の悲劇」です。そして誰も悪役がいないというのも珍しい作品だと思います(あ、途中警官一名、非常に嫌なヤツなんですが、そんな彼ですら、佐久間は慈悲の心で接しています)。それだけ「戦争」という最悪なヒールがいるわけで、そんな運命に翻弄されながらも、毎日を必死に生ききろうとする人たちが描かれていました。

繰り返しますが、ツッコミどころやご都合なシーンも多々ありますが、それを十分補えるほど、考えさせられたり、それこそ泣かされるシーンもあると思います。今こそ、もう一度考えなければ!という気にさせられた一作になりました。絶対に今の時代を生きていることに感謝したくなると思います!



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