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投手運用の考え方

昨今よく議論の対象となる「投手運用」。ネット上では様々な意見が見られますが、今回はこの件について、自分の意見を書いていこうと思います。

投手運用は魔法ではない

自分が一番言いたいことを今回は先に述べます。投手運用は魔法ではない、です。よく投手が故障した際に運用面を指摘する意見が見られます。確かに、そういう側面がないとは言いません。投げなくていい場面で投げたり、あまりに使いすぎたり、そういうパターンは往々にしてあります。しかし、投手運用が良ければ故障を避けられるとは思いません。なぜなら、そもそも球を投げるという行為が人間にとって負担が大きいから。その負担を少しでも軽減・分散するために投手運用という考え方が生まれたわけですが、1年の試合数も多く、それを何年も続けるプロ野球という世界においては、全く故障せずに投げられる投手というのはほぼいないのです。投手運用を適切に行うことによって叶えられることは、故障を避けることではなく、故障のリスクをなるべく低減することと故障した際の重症度を下げることだと思っています。

投手運用が重要な場面とそうでない場面

次に、投手運用を重視するべき場面とそうでない場面について、考えたいと思います。そもそも運用なんて常に大切に考えるべきではないのか?と思う方もいるかもしれませんが、そうではないと自分は思います。例えば、CSや優勝を争うシーズン最終盤。この場面で大事なのはとにかく勝利です。そのために必要な投手は惜しまず使うべきでしょう。例え連投をしていたとしても。こういう状況で運用を重視し少し信頼度の下がる投手を投入して打たれた場合、誰の心にも後悔だけが残ります。逆に言うと、こういった緊迫した状況を迎えた時に信頼できる投手をちゃんと惜しみなく注ぎ込めるよう、シーズン前半はなるべく運用をきちんと行うべきでしょう。例えば、2連投をしている守護神は3戦目は完全休養を与えるとか、4点リードのときは勝ちパターンをなるべく使わないとか。勝利と適切な運用は対極にあるとまでは言いませんが、適切な運用を行う上では一時的に勝利の確率が下がる行動を取る必要があることも珍しくありません。その行動を取るべき状況かどうかを考えながら見るのも、投手運用についてより深く考えることに繋がるのではないかなと思っています。

投手運用は簡単ではない

最後に、プロ野球における投手運用の難しさについて考えたいと思います。投手運用とはなにも「中継ぎを適切に休ませること」だけではありません。先発投手の登板間隔や球数管理や中継ぎを休ませすぎないこと、こういったものも投手運用に含まれます。その上で、なぜプロ野球において投手運用が簡単ではないのか。それは、プロ野球のイニング数はほぼ一定であるからです。

これだけでは意味がわからないかもしれません。そこで、具体的に考えてみましょう。プロ野球は年間143試合行われ、野球は9イニングです(先攻で敗戦時やコールド時はそれより短く、延長時はそれより長くなりますが、基本的な9と仮定)。つまり、143試合×9イニングで年間1287イニングあるわけです。これは、どんなに素晴らしい投手運用を行ったとしても、変わりません。なので、この1287イニングをなんとかみんなで消化しきる必要があります。ここで問題となるのが、投手運用とは先発も中継ぎも含めた全ての管理であることです。例えば、もし中継ぎを休ませようとした場合、先発がより長く投げなければいけなくなります。逆に先発の負担を減らそうとすれば、中継ぎに負担がかかります。そう、どちらかを取ればどちらかにしわ寄せが行くのです。このバランスをチームの順位、ゲーム差、シーズンの時期、選手の実力や調子、試合の中での流れ、点差、その他あらゆることを考えて行わなければならないと思うと、簡単なわけがありません。もし運用のために格落ちする投手を出して打たれた場合、批判は避けられませんし、そもそも出した投手が実力不足で延々と打たれ続けて代えないと試合が進まないことだってあります。投手というものは、使う側も、実際に投げる側も、絶対なんて存在しないリスクの伴うものなのです。余談ですが、だからこそ大差のついた状況で野手が投げるという行為には僕は賛成です(興行的にも面白いし)。

まとめ

今回は投手運用について考えてきました。プロ野球の投手運用はとても難しく、どれだけ適切に行ったとしても、故障を必ず避けられるわけではありませんし、勝利に繋がるわけでもありません。しかし、選手を適切に使うことこそが長い目で見た時に勝利に一番繋がることでもありますし、何より選手の故障はチームにとってマイナスでしかないため、投手運用をより適切に行うこと…いや、行おうとすることは、現代野球では必須と言えましょう。
決められたイニングをどう配分しどう消化していくのか。そう思えば、必ずしも3連投を避ければ良いというわけではなく、必ずしも先発を引っ張ることが悪とも言いきれない。そんな難しくて奥深い投手運用の観点からプロ野球を見てみれば、より楽しくなるかもしれません。

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