見出し画像

宿坊での1日

南 直哉さんの本「恐山」によると

恐山は湯治場として地元に知られていたそうです。
平安時代に、慈覚大師円仁が開いた霊場と由緒にはあります。
唐で修行した円仁が見た夢を頼りに帰国後に東北を巡り下北半島に辿り着いて地蔵堂を置いて草創された。
円仁さんは天台宗の三代目座主です。

その後地元の争いに巻き込まれてお寺は破却となり100年近く荒廃していたそうです。

15世紀に入り、下総にいた曹洞宗の僧侶が現在のむつ市に円通寺を開き、恐山を再興。
菩提寺を建立して以来曹洞宗が管理するようになったそうです。

開山期間は5月1日から10月末日
11月からは閉山となり、恐山に向かう
恐山街道も通行止になるそうです。
写真が展示してありましたが、雪が深くてとても人が入ることができなさそうです。

酸が強くて電気系統などすぐに壊れてしまうとか。
公衆電話がありましたが、故障中の張り紙がありました。

宿坊 吉祥閣の予約は電話かFAXでします。
口コミに「電話応対が云々…」とあったので、私は緊張して電話をかけました。
電話口の方はとても静かにお話される女性でした。
丁寧にご説明いただきましたので、口コミのような思いはしませんでした。
ホッとしました。

ホテルとか営業目的でやっているわけではないから、そんな愛想良く話しないのではないかな?と思います。

一泊15000円、現金払いのみです。
チェックインは14時からですが、バスで来て早く着いた時は荷物を預かってくださるとのことでした。

私は宿坊に泊まるのは今回で2回目
1度目は中学校の修学旅行の一泊目が比叡山延暦寺会館でした。

公立中学校でしたが先生方のこだわりでしょうか…?
思春期の多感な時期にとても貴重な経験をさせてもらったと感謝しています。

延暦寺会館では千日回峰行のビデオを見たり
食事前に食前観を唱えたり
朝、根本中堂で座禅の体験をしたのを覚えています。
座禅中に当時流行っていたデジタル腕時計のアラームが鳴ると叱られた記憶もあります。
もちろん食事は精進料理。
朝ご飯にヤクルトが出て、
「お寺でもヤクルトは飲んでいいんだ〜」
と思春期の私は思ったのでした(笑)

今回もチェックインのときに、説明の紙をいただき説明がありました。
「宿坊ですのでホテルと違っていろいろきまりがあります」と静かにお話いただき、ちょっと背筋がピンとなりました。

お部屋はとても広い和室です
お布団も敷いてありました
テレビや冷蔵庫は無し
ネットはあまり繋がりません

雨風強くて外に出るのも嫌なので
部屋に置いてある本を読んだり
旅の記録をノートにまとめたり
ウトウトお昼寝したり

こんなに静かでのんびりした時間はひさしぶりな気がします。

いつもとりあえずテレビつけて…としていたのが
シーン…としているのですから(笑)

ひどい雨風の中延命地蔵尊の所まで登って行く参拝客が見えました

私達も宿坊に泊まらなかったら、せっかくここまで来たのだから…と雨でも風でも全て巡ったかもしれません。

こうして静かなお部屋で過ごせることに感謝です。

夕方温泉に入りました。

これぞ温泉♨と言うお湯です。
とても広くてキレイな浴室でした。
お湯が目に入ると、とても痛くて危険なので絶対に顔をお湯に漬けたり、頭からお湯をかけたりしないでください。
と注意を受けたので、気をつけて入浴しました。
春に角膜炎になってとても痛い思いしたから、目が痛くなるのは懲り懲りなんです…

身体の芯まで温まる良いお湯でした。

18時になって夕食の時間を知らせる放送があり食堂へ

五観の偈ごかんのげを皆で唱えます

御膳に袋に入ったお箸がありまして
各自部屋に持ち帰り、
翌日朝食の時は食堂に持って行きます
記念に持って帰ることができます。


箸袋に五観の偈が書いてあります

お水やお茶はセルフサービス
ご飯のおかわりもできます。
夕食は写真を撮ることができませんでした。
お野菜の天ぷら、煮染め、おひたし、ふきの煮物、果物など
御膳にたくさんのっていて、どれもおいしかったです。
お腹いっぱいになりました。

こちらは翌日朝ご飯
やっぱりヤクルトがある!!

今回宿泊したのは12名、フェリーが欠航となってキャンセルした方がいらしたそうです。
外国の方やおひとり様、ご家族でいらした方、さまざまですが
とくに交流することは無く
絶妙な間合いを取りながら
お互いの様子を感じながら
共に過ごす不思議な時間です。

本を読んだところ副住職の南院代はあちこちお忙しくまわっていらしゃるそうなのですが、私達が泊まった日は恐山にいらして、夜講話をしてくださるとのことでした。

講話の内容はほぼ本で読んだ事と同じでしたが、読むのと、実際にお話いただくのとではまた違いまして

自分の中にすとんと落とし込む事ができた…と言うか

とても素直にお話を伺う事ができました。

「生きること」「死」「死者」「宗教」…
理解することは難しい
一生理解できないかもしれない
それでも、今までなんとなくしか捉えて来なかったこれらの事と向き合うきっかけになったと思います。

恐山に行ってきた…と話すと
「水子供養?」とか「大丈夫だった…?」とか
みんな一瞬「え?なんで?」と言う反応をしました。

霊的なものとかイタコさんのイメージが強いのでしょう

今回行ってみて、そう言う怖さは全くありませんでした。

宿坊の部屋の窓から
見えていた延命地蔵尊

とにかく包容力がある場所だと感じました。
至る所から大切な人を思う気持ちを感じることができました。

風車の音が時々響きます


宇曽利湖の青と砂浜の白
空の青
昨日の嵐が嘘のように静か


ニュースで見た
東日本大震災供養塔
胸が詰まる思いがする

たくさんの人のたくさんの思いを感じて、自分の事を振り返る
この先のことを考える良い旅となりました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?