少年野球大会で見た土下座から伝えたいこと
昨今、指導者を巡る問題は活発化している。
わかりやすい事例で言えば、大船渡高校國保監督が、佐々木投手の怪我リスクを鑑み投球させなかったことだ。
投げさせるべき。投げさせるべきでない。
投球制限を儲けるべき。
いやいや、投球制限したらその球数全力で投げるからダメ。それなら回数制限か球速制限しないと。等々。
甲子園予選で議論が湧き上がる中、私の目の前でも同じように考えさせられる出来事が起きた。
弊社はチームスポーツ向けサービスである
というアプリを展開していることもあり、スポーツ大会に協賛させて頂くことがある。今回は少年野球大会(小学4〜6年生出場)の成績上位者に弊社から賞を渡す立場として、大会会場に赴いた。そこで見たのが下記だ。
ピッチャーに、野手2名が「申しわけありませんでしたぁぁぁぁ」と泣きながら・・・土下座をしているのである。。。
少なくとも、少年野球は厳しくも楽しいイメージで終えている私としてはあまりに衝撃的であり、目を背けたくなる場面だった。
いきなり声をかけてもよかったのだが、グっと堪えてまずは事実を確認するために大会控え室へ走る。
どんな理由で、どんなプレーをしたら土下座をすることになるのか。どうして土下座せねばならなかったのか。
スコアブックを凝視する。
一人の子は重要な場面でエラーをしたことがわかる。が、そこまで致命的ではない。そして、もう一人の子(さらにたくさん泣いて土下座をしていた子。Aくんと今後記載)が謝っていた理由がわからない。もう聞くしかない。
私「Aくんが、外で泣きながら謝っていたんですけど、スコアブックを見てもわからなくて。。前の試合何があったんですか?」
スコアラー「ああ、ファールフライを2回落球したんだよ。どちらか取っていればほぼ試合は決まっていたんだけど、2回落とした後にピッチャーが崩れて、みた通り逆転負け。あの子が落とさなければ、勝ってただろうね」
なるほど。スコアブック上ではファールのマークしかついていないから全然わからなかった。
恐らく、本人にとっては地獄である。2回同じエラーをした。というのが自分を攻め続ける。遠くまで見に来た親、他の保護者、チームメイト、エース全てに対して責任を感じていたのだろう。
ただ、私は思う。
この経験が大事なんだと。
この経験こそ、未来でミスをした子に対して笑いながら
「おい、こんなことで下を向くな。俺なんて超重要な試合で2回落としたんだぜ?まだ余裕だろ。」
と言える、頼もしい経験をしたんだと。
自ら土下座をしたのか、チームで土下座をする文化があるのか、はたまた違う理由があるのかは定かでは無い。ただ、本人がすべきは「土下座」じゃないし、この経験を生かせるのかトラウマになるのかこそが、本人に寄り添う監督・コーチ・保護者で決まるのだと思う。
少年野球大会の意義を考えながら、私に出来ることを考えた。
結論、急遽TeamHub賞をA君にも渡すことに決めた。私が上記を伝えたいというエゴもあったが、どうしても本人にこの経験を糧として欲しかった。
どんな顔をするだろう。どんな言葉を発するだろう。
その子の名前がウグイス嬢から呼ばれた。私は楽しみに待っていた。
その子は、来なかった。
代理の子が受け取りにきた。
結果、Aくんは閉会式に出ずに帰ってしまっていたのだ。
疲弊しすぎていたのではないか。野球を止めてしまわないか。そんな心配をしながら、メッセージを送らせて頂いた。(一部ご挨拶等メール文削除)
To A君お母さま
閉会式には参加されていらっしゃらなかったこと残念ではありましたが
お加減はいかがでしょうか。
選手も保護者の方々も暑い時期に連日の試合で
体調だけでなく心身的にもお疲れのことかと存じます。
今日はゆっくり休まれてください。
賞品を後日郵送させていただきますので、ご住所をいただけると幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
また、弊社代表小泉からメッセージを預かっておりますので
追記という形で、お伝えさせていただきます。
追記
今日はもしかしたら自分にとっては辛かったこともあったと思う。
でも、野球はみんなで助け合うスポーツ。私はたまたま球場を通りがかり、
ピッチャーの子に頭を地面につけ謝っている姿をみて、私は心から謝る必要はないよ。と思っていました。
私自身もたくさんエラーをし、たくさん打って、勝ち負け両方を経験してきました。
Aくんが今後もし野球やスポーツを続けることがあった場合、ミスしたり自分を責めている友達に明るく声をかけて、
「こんなこともあるからスポーツは面白いよな」と言ってあげることのできる人間になって欲しいな。と思っています。
そういう優しい人間になれる、とても良い試合だと思っています。
本大会はお疲れ様でした。第○位おめでとう
今後の活躍を期待しています。
今は難しくても、落ち着いた時に少しでも伝わればなと思っていた。
ほどなくして、お母様から返信を頂いた。
池袋駅で共に訪問した社員と涙した。
小泉様、堀様
早速にご連絡をいただきありがとうございます。
また、小泉様からいただいた追記、何度も何度も読み返し涙が止まらず、、
感謝の気持ちでいっぱいです。
息子が活躍して勝利に貢献することもあれば、あまり活躍できず負けてしまうこともエラーをしてしまうことも沢山あります。やってしまったミスは次戦に生かすように話をしていますが、さすがに今日は辛かったようです
実は先程、塾に参りました。
疲労と落胆と後悔…目を腫らしため息をつきながら自宅を出ました。中学受験と野球を両立させると決めて頑張っており、こんな時でも文句も言わず塾にいく息子を誇りに思います。
帰宅後、TeamHub賞をいただいたこと、そして小泉様のお言葉を本人に伝え、喜ばせてあげたいと思います
今日の悔しい経験から、チームのみんなと助け合い、ミスをした選手にも優しく笑って声をかけられる人間になって欲しいと、心から思います。
温かいメッセージ、本当にありがとうございました。
今日新しいバットをいただき、早速バッティングセンターで試打してきました!
ヒット性の当たりの確率がかなり高く、しかもバッチリ飛ばせています。白バットもかっこいいと、本当に喜んでいます。
こんなに打てるなら全国大会で使いたいな、とも言っています。
○○大会での幻の2連発エラーの苦い思い出が、全国大会でのホームランに変わるといいね、とも話していました。
地域他いろんな方々からの応援、サポートを受けて、伸び伸びと好きなスポーツを続けることが出来ています。常にサポートしてくれる人への感謝を忘れず、努力をし、仲間を思いやることができる良き野球人、良き大人になってもらいたいです。
長くなってしまいましたが…
来週からの全国大会、一戦一戦頑張って参ります!
この度は本当にありがとうございました!
このメールには、バットを手に持つ満面の笑みを浮かべたA君の写真を添付に添えてくれていた。
これが、会社を起こしTeamHubから生み出したかった世界。
少なからず、サービスを立ち上げ賞を渡すということで、一人の少年を笑顔にできたことを誇らしいと思うし、引き続き色々な立場・方法でおかしいなと思ったことに異を唱えていければなと思っている。
今回たまたま「土下座」を見たことで始まった話だが、意外と近くにこのような話はまだまだ残っている。
「言いづらい」「やり方には口を挟むことができない」
という意見も多数聞くが、場所を変えたり伝え方を変えたり仲間を探したりすれば、少しずつ古い文化も変わる。
自分たちがつくるプロダクトによって、より多くの人がスポーツに参加し、新しい価値観が根付いていくことに寄与できれば嬉しい。
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