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人間を人間にするのも、怪物にするのも愛

自宅にいる時間が長くなり、人と会う機会が減っている。

自粛生活が続くなか、あまり外に出ずに一人でいると、人と接していたときに感じる感情が薄れていくと感じるときがある。

今もパソコンを使って文章を書いているが、パソコンをシャットダウンして暗くなった画面に写る無表情の自分の顔。

思わず変顔して、顔の体操。

いかん、いかん。感情センサーがなまっていると感じる。

そんなときに書店で目についたのがソン・ウォンピォン著の『アーモンド』

本の帯には「感動」や「感情」「愛」など、いま知りたいことが書かれていて気になった。

子どもの「if」を思う母の気持ち

ストーリーをまとめる能力はないので、本の帯から引用。

偏桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。祖母は彼を「かわいい怪物」と呼んだ。十五歳の誕生日に、祖母と母が通り魔に襲われた時も、ただ黙って見つめていただけだった。母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」などの感情を丸暗記させて、”普通の子”に見えるように訓練してきた。だが、母は事件によって植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちに。そんなとき現れた、もう一人の”怪物”ゴニ。激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくーーー。

ストーリーに登場する「ユンジェ」と「ゴニ」は著者であるソン氏の息子さんの名前だ。

もし、自分の息子が”怪物”と呼ばれる存在になっても、変わらずに愛することができるのか、という思いから書かれた物語。

”怪物”と呼ばれたとしても、喜怒哀楽そして「愛」「悪」「欲」も生きる上では必要ことであり、母として子共に送るメッセージ性の強い言葉だと感じる。

引用にもあるように”普通の子に見えるように”育てたいという気持ちは共感性があり、今の時代の学生生活の中で、そう見えるように生活していくことは必須のスキルだ。

良くも悪くも、はみ出し者はつつかれる対象になりやすい。

ストーリーを読み進むにつれて、主人公ユンジェの無感情の変化と、対して真逆で繊細な感情を持つゴニの変化。その両方の面で楽しめた作品。

どの本にも言えることだが、筆者が伝えたいことは全体の5%ぐらいの割合に詰まっている。それをどう読み解くかは読者次第。

末巻にある作者の言葉にとても強いメッセージが込められていて、作者の思いを、はじめに読んだ後でもじゅうぶんにストーリーを楽しめる。

「人間を人間にするのも、怪物にするのも愛だと思う」と語るソン氏。

作者が思う気持ちから、新たな視点から「愛」を考えさせられた。

自粛生活がまだまだ続きそうだが、だからこそ学ぶべきことが沢山ある。疑似体験できる読書は最良の勉強ツールであり、心の旅で感じる”楽しさ”がなによりも魅力的。


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