遅れてきた思春期とモリッシー 【イングランド・イズ・マインの感想】

前から見たかった「イングランド・イズ・マイン」を今日見ることか出来た。

 引っ込み思案だけど人一倍プライドが高くて、自己肯定感の低いモリッシーの青年期、そしてジョニー・マーに出会いザ・スミスを結成するまでの物語を描いた自伝的映画である。
 今や最も影響力のあるリリシストもとい詩人である彼だが、学校に行かず仕事も上の空、やる気はあるものの、極度に人が苦手なせいで、バンドを組むのも一苦労、雑誌の寄稿(悪口)で日々を過ごす、マザコンの青年であった。映画としては起伏が大きいものではないものの、自分の世界に閉じこもったり、表現したいけど自信が無くて出来ない、彼の性格を非常に繊細にかつシンプルに表現している映画だと思った。スミス結成前なので彼らの楽曲は全然劇中では流れないが、アーティストの伝記として高校や中学の音楽の授業で流してみたいなと思った(どれくらい思春期の学生たちが共感してくれるかは分からないが)

今年24歳になる私は、未だかつてないくらいスミスの歌詞に共感しているさいちゅうである。初めて彼らを知ったのは高校2年くらいだと思う、知り合いのベースがめちゃくちゃ上手かった奴が母親の影響でスミスやジョイ・ディビジョンが好きだったことがきっかけで代表曲の"This Charming Man"を初めて聞いた、煌びやかな(ジョニー)マーのギターサウンドはキャッチーで、とても心地よかったが、その時はそこまで深く好きになることは無かった。

そして就職をテキトーに行ったことを後悔し、コロナ禍によって今まで感じたことのない鬱屈した気分を(今も)味わっている中で再びスミスを聞き始めた。スミスの歌詞について、聞き始めのころや大学生のころは何となく和訳を見て意味は分かっているけどそこまで記憶に残っていはいなかったが、あまり聞きこんでいなかった2ndアルバム"Meat Is Murder"をふと再生し、3曲目の”I Want the One I Can't Have"のタイトルを見て、ないものねだりな今の自分を表している気がしてたまらなかった。更にYOU TUBEで訳詞付きのスミスの動画を探していた時に"Ask"の動画を見つけた、この時から強烈な歌詞への共感を持つようになった。

 "Ask"の歌詞は端的に言うと、「内気さやシャイな性格は悪いことじゃないけど、自分のやりたいことへの一歩を踏み出しにくくする。何かやりたくても勇気が持てないなら僕に行ってごらん、だって否定しようがないよ」と非常に優しさや肯定にあふれたものとなっている。この歌詞に自分の成人前の性格や行動を重ね合わせて、就活中でも分からなかった自己分析を大いに助けてもらった。更に今度はコンピアルバムのHatful Of Horrowから"Accept Yourself"という曲のシンプルな言葉選びで、かつ自分の性格を表した歌詞やフレーズを見て、夜中の3時ごろながらも目が覚め、思わず声をあげてしまうほど驚愕させられた。

 遅れてきた思春期というどうしようもない症状を拗らせてしまった私に対してスミスの歌詞は共感や肯定、現実をみせてくれる鏡であり、一生このメッセージを糧にして生きていきたいと思える初めてのバンドとなった。まだ余韻にひたっていたいが、しがない会社員の私は脳内BGMを"Heaven Knows I'm Miserable Now"に設定しながら業務に励むしかないのであった。


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